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「デジタルバンク先駆者」が進める活用のためのデータカタログ整備──“全社データ文化”を醸成する仕掛け

みんなの銀行は、一度失敗したデータマネジメントをどう立て直した?

 2021年に開業したデジタルバンク「みんなの銀行」では、データドリブン経営の実現に向けて全社的なデータマネジメントに取り組んできた。しかし、その道のりは決して平坦ではなかった。2022年に始めた当時は挫折を経験し、翌年に方針を大きく転換。スモールスタートから段階的に拡大していく戦略で、データカタログ整備やガバナンス体制の構築を推進している。2025年9月19日開催の「Informatica Data & AI Summit 2025」に登壇した同行 データ戦略部の本嶋大嗣氏は、金融DXの最前線で直面した課題と解決策を具体的事例とともに紹介した。

「共通言語がない」初回プロジェクトで直面した現実

 2021年に開業したみんなの銀行は、福岡銀行、熊本銀行、十八親和銀行などを擁する北部九州地域基盤の地方銀行グループであるふくおかフィナンシャルグループ傘下にあり、デジタルネイティブ世代をターゲットに全国展開するデジタルバンクだ。従来の銀行とは異なり、システム開発を子会社のゼロバンク・デザインファクトリーで内製化している点が特徴の一つといえる。

 同行のサービスコンセプトは3つの柱から成る。つ目の「みんなの『声』がカタチになる」では、アンケートやSNS投稿、コールセンターへの声をデータとして蓄積し、新サービス開発やサービス改善に活かすことを目指す。2つ目の「みんなの『いちばん』を届ける」では、金融・非金融データを駆使して一人ひとりに最適なサービスを提供することを掲げている。そして3つ目の「みんなの『暮らし』に溶け込む」では、BaaS(Banking as a Service)機能を通じて様々な事業者経由でサービスを展開することを目指している。これらすべてのコンセプトにおいて、データは不可欠な戦略資産として位置づけられる。

講演資料より抜粋
[画像クリックで拡大します]

 サービス開始の翌年度となる2022年度、同行はデータマネジメントの全社的取り組みを開始した。システムの安定運用に目途が立ち、「来たるべき将来に向けて整理を始めよう」というタイミングでのスタートだった。

 しかし、当初の取り組みは期待した成果を生まなかった。データマネジメントの取り組みを率いてきた本嶋氏は当時を振り返り、「データマネジメントに関する社内の共通言語がなく、データを扱わない人に当事者意識をもってもらえないという問題がありました」と振り返る。

 データ領域の専門職と一般社員の間には大きな認識の隔たりがあり、「データ民主化」という言葉一つとっても個々に認識が異なる状況だったという。一般社員からは「何をやろうとしているのかわからない」「データ民主化が実現できたら自分の組織にどんな嬉しいことがあるのかわからない」という声が上がり、自分ごととして捉えてもらえなかったようだ。そもそも、「業務多忙で本業以外に手を割けない」という現実的な制約も重なり、全社的な取り組みとして進められなかったと本嶋氏は話す。

 この失敗の根本には、データマネジメントが全社的な取り組みであるにもかかわらず、「組織横断での合意形成」が不十分だったという課題があった。各部署の理解度や関心度が異なる中で、統一的なビジョンを共有することの難しさが浮き彫りになったのだ。

株式会社みんなの銀行/ゼロバンク・デザインファクトリー株式会社 データ戦略部 データディベロップメントグループ グループマネージャー 本嶋大嗣氏

方針転換で見えた光明──スモールスタートが生んだ成果

 そこで、みんなの銀行は2023年度にデータマネジメントのアプローチを根本的に見直し、3つの重要な変革を行った。

 第一に、注力領域を絞り込んだ。まずは短期間で一定の成果が見込めるデータカタログ整備を初期スコープに選定。第二に、体制変更による労力消費を避けるため、当時の体制のままで実施できる範囲でスタートすることにした。第三に、必要に応じて各部署から招集する形でスモールスタートし、着実に成果を出せるような体制を構築した。

 この戦略転換により、同社のデータマネジメントは大きく前進することとなる。データカタログの整備では、従来の“システム開発向け”の管理に加えて“データ活用のため”のカタログ管理ができる環境を新たに整備。Google Cloud基盤上でデータソースからデータ連携処理、データウェアハウス(DWH)、分析環境までを統合し、「Informatica CDGC(Cloud Data Governance and Catalog)」を採用してデータカタログの一元管理を実現した。

講演資料より抜粋
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“データ活用”のためのカタログ管理に:取り入れたビジネスメタデータとは

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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