AIエージェントの現況・課題はSaaSブームの頃に似ている──企業が構築すべき次世代のIT環境とは?
Mulesoftの幹部が予測する、AIエージェント運用で顕在化するニーズ
あるアプリケーションのデータを、別のアプリケーションでも使いたい。アプリケーション統合やデータ統合のニーズは、オンプレミス時代から続く普遍的なものだ。しかし、テクノロジーの進化にともないその実現手段も変化している。そして、AIエージェントがソフトウェアのアーキテクチャを大きく変えようとする今、企業はどんな環境を整えるべきか。API連携のリーダーであるMuleSoftの幹部に尋ねた。
Agentforceを構成する2つのMulesoft、その違いは?
今年のDreamforce(米サンフランシスコ開催)で発表されたAgentforce 360の構成要素を見ると、MuleSoftは中心の「MuleSoft Anypoint」と、紫の「MuleSoft Agent Fabric」の2ヵ所に位置づけられている(図1)。
MuleSoft Anypointは従来から提供されてきたものだが、MuleSoft Agent FabricはこれからAIエージェントを導入しようとする顧客向けに提供する新しいプロダクトとなる。API連携のための強固な基盤を構築し、その上でアプリケーションやAIエージェントを動かす。基本的な戦略の方向性は変わらない。とはいえ、次世代のテクノロジーについて考える中で、ソフトウェアアーキテクチャが大きく変わる可能性が見えてきた。
新しくMuleSoft Agent Fabricを提供するのは、顧客が次世代のテクノロジーに対応するための、いわばモダナイゼーションだという。アンドリュー・コムストック氏(Salesforce MuleSoft担当SVP兼GM)は、「これまでも、そしてこれからも、MuleSoftは『何かと何かをつなぐこと』に注力していく。現在プラットフォームのモダナイゼーションを進めているのは、お客様の将来への準備を支援するためだ」と語った。AIエージェントの活用に向けて、企業はこれから誰も行ったことのない場所へと到達することになるだろうと同氏。そこで、顧客のニーズを先回りして、顧客がゴールを達成できるようにサポートしたいとの考えを示した。
2つのMuleSoftのうち、Agent Fabricは企業が変革を進める過程でぶつかりそうな問題に焦点を当て、解決のための機能セットを提供するものだ。「意図的に既存製品を新しい領域に拡張してきた。そのため、MuleSoftの既存のお客様は、すべての機能を無料で利用できる」とコムストック氏は語る。そのAgent Fabricには、4つの主要な機能がある(図2)。
まず「Agent Registry」は、企業全体のすべてのエージェントを一元管理することで、ユーザーのエージェント検索を可能にするほか、エージェントの挙動を監視するものだ。次の「Agent Governance」は、エージェント同士のコミュニケーションを制御する。まだ提供前の機能だが、エージェントによるLLM利用のコスト管理機能の提供も計画しているという。そして「Agent Broker」は、エージェント間の通信のオーケストレーションを行うものだ。最後の「Agent Visualizer」は、すべてのエージェントの実行状況をモニタリングする機能である。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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