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AIエージェントの現況・課題はSaaSブームの頃に似ている──企業が構築すべき次世代のIT環境とは?

Mulesoftの幹部が予測する、AIエージェント運用で顕在化するニーズ

「統合」の専門家から見た、AIエージェント活用の課題

 統合に関連して企業が注目すべきテクノロジーは、MCP(Model Context Protcol)やA2A(Agent to Agent)に代表される標準プロトコルだという。この2つはどちらも、AIエージェントがデータを取り込み、共有する仕組みを提供するものである。他にも、コンセプトが共通する新しい標準が出てきた。コムストック氏は、「MuleSoftはこれまでもオープンスタンダードを取り入れてきた。だからこそ特定のテクノロジー環境に縛られることなく、多様な機能を活用できる。お客様の環境をモダナイズできる」と語った。

アンドリュー・コムストック氏(Salesforce MuleSoft担当SVP兼GM)
アンドリュー・コムストック氏(Salesforce MuleSoft担当SVP兼GM)

 とはいえ、企業におけるAIエージェント導入プロジェクトは、まだ取り組みを拡張する段階には至っていない。同氏も、ほとんどの企業が大きな変革に向けてのジャーニーを歩き始めたばかりで、ごく初期の段階にあることを認めた。また、「多くの点で始まったばかりだ。AIエージェントが企業内のデータを使い、自律的に意思決定できるか。この問いへの答えは『はい』でもあり、『いいえ』でもある。現時点では、人間と同レベルのデータ体験をAIエージェントは得られない」とも指摘した。まずは、AIエージェントが適切なタイミングで適切なデータを入手できる仕組みの整備が必要ということだ。

 一方で同氏は、クラウドが登場した頃を振り返り、「最初に皆が行ったのはクラウド上にデータベースを構築することだったが、それが実際にはビジネス全体を変革することにつながった。いくつかの先行プロジェクトを見てきた限りでは、将来は明るい」とも語った。ビジネス成果を得られる可能性については楽観的な見方もできるようだ。

 当然、変革へのジャーニーには多くのチャレンジが待っている。まず、AIエージェントの仕組みを単純化して表現すると、「推論」と「実行」のループを実行するものだと考えられるが、推論と実行の両方で重要な役割を果たすのが「統合」だ。

 推論では、AIエージェントにデータ解釈の材料「コンテキスト」を提供する環境を整備しなくてはならない。つまり、生のデータを適切なコンテキストに適切なタイミングで変換すれば、AIエージェントは意思決定に必要なインサイトを得て、複雑なタスクの計画を策定できるようになる。

 そして実行とは、計画を実行することだ。複雑なタスクの処理では、特定のアプリケーション内で処理が完結することはなく、APIで別のアプリケーションを呼び出さなくてはならない。結局、推論でも実行でもタスクが複雑になるほど、統合の重要性が増すことになる。

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今のAIエージェントの状況は「SaaSブームの頃に似ている」

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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

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