「システムに会社を合わせる」──1,000人の中堅企業がConcur導入で“ノンカスタマイズ”を貫く
20年来の“負の遺産”から学ぶ、システム刷新を成功に導く流儀
創業67年を超える水処理・環境プラントメーカーの石垣。国内10数拠点に加え、海外4ヵ国に展開しグループ約1,000人が使うITインフラを、わずか6人の情報システム課が支えている。基幹システムや経費精算システムの導入、レガシーアプリの刷新──大型プロジェクトが次々と進む中、なぜこの人数で回せるのか。企画推進部 情報システム課 課長の中村晋氏、同 企画・広報課 課長の杉上貴祥氏、同 情報システム課 課長代理の岡田久憲氏の3人に聞いた。
「運用部隊の情シス」から一変、関心をもち、感謝されるように
製造現場、据付現場、浄水場や下水処理場での維持管理。石垣は多くの現場や技術者を抱えており、以前に比べると随分と変わってはきたが、属人的な業務はまだ現場に残っている状況という。そんな会社で、20年前の情報システム部門は「保守部隊」だった。システムを安定稼働させることが役割であり、それ以上を期待されることはなかった。
変化の兆しは、基幹システム刷新のタイミングで訪れた。ツールが変わるとなれば、自然と情シス部門に関心が向く。しかし、このときは少し存在感を出せた程度だった。決定的な転機は、2020年のコロナ禍。出社ができなくなり、紙で回していた決裁が止まり、業務が進まず、従業員一人ひとりが「自分ごと」として困る状況に陥った。情報システム課は短期間でVPN環境を構築し、電子決裁への移行を実現。「ここで”関心”が”感謝”に変わった」と中村氏は当時の手応えを振り返る。
以降、社員からの期待は高まり続けているという。生成AIが登場すれば「何かやってくれるの?」「旗振りを頼むわ」と声がかかる。保守部隊ではなく、変革の牽引役となっている。
同じ過ちを繰り返さない──目先の利益よりも、長期的な視点を
2021年度、石垣は中期経営計画の重点施策に「DX推進」を追加した。背景にあるのは、属人化への危機感だったという。熟練者のノウハウが可視化されないまま、人が辞めれば知見は失われる。データの力でこれを補い、世代交代に耐えうる組織をつくる。それが石垣のDXの目的だ。
DX推進に着手した矢先、ある部門から「製品専用のクラウドサービスを作ってほしい」という要望が上がってきたのだ。要望通りにつくれば依頼部門に特化した仕組みになってしまう。情報システム課の面々には、20年前の苦い記憶がよぎった。当時使っていたNotesは、データベースを簡単に作れることができ、便利な反面、各部門が思い思いにデータベースを立ち上げ、似たような機能を持つものが乱立。それらを後から統合する羽目になり、かなり骨が折れたという。この経験が「新しく立ち上げる前に、社内で共通基盤化を検討する」という鬼の鉄則を刻んだ。
そこで、中村氏らは特定の部門の閉じたものではなく、全社共通で利用できる基盤の構築を提案。一部門の依頼を全部門に拡大して共通基盤を作るのは大変なことではあるが、中村氏は長期的な視点で決心したと話す。選択肢は2つ。地元企業のクラウドサービスか、Microsoft Azureか。コストは地元企業のほうが安く済むが、Azureを選んだ。目先の費用より、グループ全体で長く使える安定性が理由という。そして同社は共通のデータ基盤「miyoru」を立ち上げ、それをベースにした遠隔監視システムも完成させた。
「無理やりにでも足並みを揃える。そこは踏ん張りどころ」と中村氏。20年来の教訓が、ここで生きた形だ。一大プロジェクトの完遂を思い返し、中村氏は「運用が始まる直前に決定権が強いキーマンを巻き込んだが、もっと早くにしておけばよかった」と反省する。新たな教訓を得た。
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
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