「IoTのソラコム」から「社会のOS」へ 10年で海外売上45%を遂げたCEOの“IoT×AI戦略”
ソラコムが提唱する「リアルワールドAIプラットフォーム」の真価
IoTプラットフォームのパイオニアとして知られるソラコム。同社は2014年の創業以来「テクノロジーの民主化」を掲げ、通信の領域を変革してきた。IoTのソリューションで様々なモノをつないできた同社は現在、「つながる」ことの先にある「現場の課題解決」へとシフトしている。既に売上高の約45%を海外が占めており、日本のITスタートアップとしては異例のグローバル展開も成功させている。ソラコム 代表取締役社長CEOの玉川憲氏は、次なる戦略として「リアルワールドAIプラットフォーム」を掲げる。AIブームにあるIT業界で「IoT×AI」というポジションをとる真意と、リカーリングビジネスに支えられたソラコムの成長戦略について訊いた。
“つなげる”の先へ、創業10年目に企業価値を再定義
2014年に創業し、2015年にサービスを開始してから10年が経過したソラコムは、今や日本のIoT業界で大きな存在感を見せている。社員数は約200名規模に拡大し、契約回線数は800万回線を突破。現状のソラコムは、IoTのための通信インフラ提供者にとどまらない。
創業10年を機に、ソラコムは企業理念(Vision)を「Making things happen for a world at work(世界中のヒトとモノをつなげ、共鳴する社会へ)」へと刷新した。これは、単にIoTでモノをつなぐインフラの提供にとどまらず、ソラコム自身が能動的に物事を動かし、現場(World at Work)をより良くしていくという決意の表れといえる。
玉川氏は、これからの10年の戦略として「リアルワールドAIプラットフォーム」を掲げる。これは、自動車やセンサーといった物理的な「現場」のデータと、クラウド上のデジタルなデータをAIにつなぎ合わせ、新しいインテリジェンスを生み出すものだ。
生成AIの進化は著しいが、AI単体では物理世界へのアクセスは限定的となる。ソラコムは、IoTとAIの相性が極めて良いことに着目し、IoTをAIの「目」や「耳」として機能させ、物理世界の課題解決を図る。
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堅実な成長を支えるリカーリングビジネスの強み
ソラコムの強みは、インフラ事業特有の「ストック型収益」、いわゆるSaaSと同様のリカーリング(継続課金)ビジネスにある。2026年3月期第2四半期において、同社のリカーリング収益は前年同期比34.4%増の41.1億円に達し、ARR(年間経常収益)は100億円を突破した。
IoTビジネスは一度ソリューションが導入されれば、長期間にわたり利用され続ける傾向がある。水道メーターの自動検針や物流トラッキング、見守りサービスなど、社会インフラに組み込まれたIoTデバイスは、景気変動などの影響を受けにくく、解約率は低い。このような積み上げ型の収益モデルが、同社の経営を予測しやすいものにし、継続的な安定性をもたらしているのだ。
しかし、ソラコムは単なる“通信回線屋”ではない。同社は創業当初から通信(IoTコネクティビティ)だけでなく、デバイス(モジュール、カメラ、センサー)や、データを蓄積・分析するクラウドサービスを包括的に提供している。
近年は、センサーデータやカメラ画像を生成AIと組み合わせて自動化を実現するためのローコードIoTアプリケーションビルダー「SORACOM Flux」や、生成AIボットサービスの「Wisora」といった生成AIを活用したサービスも展開。顧客の課題に対し、通信から上位レイヤーのアプリケーションまで一貫して提供できる体制を整えている。「単にデータを通すだけでなく、データを取得するデバイスと、データを活用・制御するクラウドをセットで提供する汎用性の高さが、ソラコムのエンジニアリングの特徴だ」と玉川氏は述べる。
さらに同社では、通信そのものを目的とせず、現実世界(フィジカル)とAI(デジタル)を融合させ、新しいインテリジェンスを生み出すためのアーキテクチャも設計する。この「インフラ+付加価値サービス」の構造があることで、個々のサービスや製品には競合はあるものの、トータルのソリューションでは競合となる企業はいないとの玉川氏の主張につながる。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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