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『EnterpriseZine Press』

2025年夏号(EnterpriseZine Press 2025 Summer)特集「“老舗”の中小企業がDX推進できたワケ──有識者・実践者から学ぶトップリーダーの覚悟」

特集:年末特別インタビュー

【特集】財務・会計のキーパーソン5人に聞く──経済・テック・監査・実務のプロが2026年を見通す

2025年末特別インタビュー:「財務・会計Online」編

 「開示の質」が問われたサステナビリティ報告、「実務への実装」が試された生成AI、そして、「不確実性」を前提とした経営戦略の策定・実行……2025年は、待ったなしの課題に財務・会計部門が真正面から向き合った一年でした。従来の価値基準や業務プロセスが根底から見直される中、多くのリーダーが変革のプレッシャーと手応えを同時に感じたことでしょう。また、EnterpriseZine編集部では『財務・会計Online』を立ち上げました。そこで今年は、各社の第一線で奮闘する有識者やCFOなどのリーダーたちにメールインタビューを実施。激動の2025年をいかに乗り越え、2026年をどのような戦略で迎えるのか。その総括と展望をお届けします。

以下、5名の方にコメントをいただきました(氏名・五十音順)。
木内登英(野村総合研究所)氏、鈴木洋史(SAPジャパン)氏、中村崇則(ラクス)氏、萩本仁(テルモ)氏、松村洋季(EY新日本)氏

2026年は国内財政政策と米中の政策に大きく左右される(野村総合研究所 木内登英氏)

 2025年の日本経済は、物価高騰による家計への圧迫が続く中、トランプ関税の影響、高市政権による積極財政政策が注目点だった。トランプ関税の悪影響は当初懸念されたほどには深刻ではないものの、輸出の悪化は既に目立っている。それは日本の実質GDPを1年間で0.55%押し下げると推計される。2025年に発足した高市政権は「責任ある積極財政」を掲げ、物価高対策を中心とする大規模な経済対策を打ち出した。しかし、積極財政は財政の信頼性低下を通じて円安を助長し、物価高をさらに後押ししている。それが、物価高対策の効果を相殺し、やや長い目で見れば全体でマイナスとなる可能性もあるだろう。

株式会社野村総合研究所
エグゼクティブ・エコノミスト
木内登英氏

1987年に野村総合研究所に入社。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

 高市政権発足から続く円安、債券安(金利上昇)は、財政環境の悪化に対する市場の警鐘と言える。高市政権がこの市場の警鐘を受け止めない場合には、長期国債利回りの大幅上昇を通じて、金融市場の大きな混乱を引き起こすきっかけになってしまう。また、さらなる円安によって国民生活が圧迫される可能性がある。金融市場は、株安も加わり、「トリプル安」、資金が海外に流出する「日本売り」などが引き起こされる可能性もあるだろう。2026年の日本経済は、高市政権の財政政策と金融市場の反応に加えて、日中関係の影響を大きく受けるだろう。2025年11月に、中国政府は日本への渡航自粛要請を出した。2012年の尖閣問題時と同様に、渡航自粛が1年続く場合、日本の名目GDPは1.79兆円失われ、名目および実質GDPは0.29%押し下げられる計算だ。また、日中関係の悪化がさらに続けば、中国がレアアースの輸出規制(3ヵ月)にまで踏み切る場合には、日本の名目GDPは6,600億円押し下げられ、名目および実質GDPは0.11%押し下げられる。渡航自粛要請の影響と合計すると、日本の名目GDPは2.45兆円押し下げられ、名目および実質GDPは0.40%押し下げられる計算となる。2026年の日本経済は国内財政政策と米中の政策に大きく左右される1年となるだろう。

2026年はAIを企業変革の中核に組み込んでいく(SAPジャパン 鈴木洋史氏)

 2025年は、世界経済の不確実性が続く中でも、日本では将来の成長を見据えた前向きな投資が着実に進んだ一年でした。日々皆さまとお話しする中で、コスト削減や効率化にとどまらず、次の成長に向けて、「ビジネスのあり方そのものを再定義しよう」という動きが強まっていることを実感しています。こうした変革の中心にあるのが、AIの活用です。現在、日本でもクラウドを基盤としたDXが進み、SAPのクラウドビジネスも着実に成長しています。特に、AIを業務や経営判断に本格的に活かすためには、標準化された業務プロセスと、信頼できるデータ基盤が不可欠であるという認識が広がっています。

SAPジャパン株式会社
代表取締役社長
鈴木洋史氏

1990年4月に日本アイ・ビー・エム株式会社に入社。2000年8月にi2テクノロジーズ・ジャパン株式会社へ入社、2006年7月にJDAソフトウェア・ジャパン株式会社へ入社し、営業本部長を経て2010年2月より同社代表取締役社長に就任。2012年5月からはJDA Software Inc.のアジアパシフィック地域副社長を務め、日本を含むアジアパシフィック地域を統括。2013年4月に日本アイ・ビー・エム株式会社へ入社、理事・スマーター・コマース事業担当。2015年1月にSAPジャパン株式会社へバイスプレジデント・コンシューマー産業統括本部長として入社、2018年1月より常務執行役員インダストリー事業担当。2020年4月1日から現職。

 SAPはこれまで、多くのお客様とともに、AIの実証やデータ基盤づくりを進めてきました。2026年は、これらの取り組みを土台に、AIを単なるツールとしてではなく、経営や現場の意思決定を支える「企業変革の中核」として組み込んでいく、本格活用の年になると確信しています。SAPは今後も、パートナーの皆さまと力を合わせ、導入にとどまらず、その後の活用や継続的な改善まで、お客様の変革に伴走してまいります。これまでの経験と学びを活かし、日本企業の皆さまにとって信頼できる変革のパートナーであり続けていきます。

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2026年は成長に向けた打ち手を明確化する(ラクス 中村崇則氏)

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