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2025年夏号(EnterpriseZine Press 2025 Summer)特集「“老舗”の中小企業がDX推進できたワケ──有識者・実践者から学ぶトップリーダーの覚悟」

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SaaSの価値は「記録」から「アクション」へ:ServiceNowが誇る“ワークフロー提供者”の勝算

CTOが指南する、エージェンティックAIの適切な統制アプローチ

 2025年5月の年次カンファレンス「Knowledge 2025」では次世代プラットフォーム「ServiceNow AI Platform」、9月にはエンタープライズAI向けUI「AI Experience」を発表するなど、AIプラットフォーム戦略に基づく新しい取り組みを次々に打ち出しているServiceNow。日本でもエージェンティックAIのビジネス活用に期待が高まる中、真の活用を実現するために企業はどのような課題を乗り越えなければならないのか。そしてServiceNowは、その課題にどうアプローチしていくのか。来日したCTOのパット・ケイシー氏に顧客を取り巻く現況と同社の戦略を聞いた。

フロントエンドとバックエンドの両方にアプローチする「Zurich」

──2025年9月に、AIエージェントの機能やその活用促進のための機能を追加した「Zurich」がリリースされました。ServiceNowが考えるエージェンティックAIへのアプローチについて聞かせてください。

 私たちはエンタープライズワークフローの会社です。大企業が組織内の業務をより効率的に運営できるよう支援する。この文脈で、ServiceNow製品とAIが連携する領域は大きく2つあります。

 1つはフロントエンドで、顧客対応を支援する領域。AIはナレッジの中に答えが含まれるような質問に答えるのが得意なため、知識豊富な人間が質問に回答するのと同じ方法で情報を提供できます。また、荷物の返品、注文状況の確認、プリンター用紙の注文や交換のような複雑なやり取りを人間の代わりに処理することも得意です。AIはフロントエンドの作業から人間を解放してくれる存在といえるでしょう。

 もう1つはバックエンドで、リクエストを人間に代わって支援する部分です。たとえば、顧客に届けた荷物が破損していて、返金リクエストが来たとします。商品担当者(人間)がこの対応を行う場合、調査や確認の時間を必要としますが、AIエージェントであれば、払い戻しの対象かを調査し、ポリシーを適用し、処理を自律的に実行するだけで済みます。すべてをAIが実行するので、チケット処理の必要はありません。人間を面倒なことから遠ざけてくれ、より生産的な仕事の時間を捻出できる。要するに、あらゆるサービス組織の生産性向上に貢献できます。

ServiceNow 最高技術責任者(CTO)兼 Dev Ops担当EVP パット・ケーシー(Pat Casey)氏

──AIエージェントが行ったタスクの最終的なチェックは、やはりまだ人間が行う必要がありますか。

 現時点では、「Human in the Loop」が最も一般的です。一方で、AIにプロセス全体を任せたいと思っている人たちがいることも確かです。人手を介さない“純粋なAIソリューション”に慣れつつあるからです。とはいえ、大多数は依然として人間が最終チェックを担うことを望んでいます。

 ここで言っておきたいのは、今のテクノロジーは、組織が望むすべてのタスクに対応できるわけではないことです。実際に対応できるのは恐らく15%〜20%程度でしょう。組織が可能な限り多くのタスクを自動化したいと考えても、現状のほとんどは人間が行わざるを得ないのです。

──それは日本特有の傾向ですか。それともグローバルの傾向でしょうか。

 世界的に共通している傾向です。おそらく、非常に反復的なタスクであれば、多くのことをこなせても、そのタスクが複雑になるほどできることが少なくなるからです。もっとも、日本のように労働力不足が深刻化する国では、自動化への期待が大きい。国ごとに優先順位に地域差はあるものの、AIにタスクの大部分を任せたいという意思は基本的に世界共通です。

次のページ
エージェンティックAI活用に向け乗り越えるべき3大課題

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

竹村 美沙希(編集部)(タケムラ ミサキ)

株式会社翔泳社 EnterpriseZine編集部

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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