沖縄に5人のITリーダーが降り立った。激動のAI時代にあって走り続けることは大事だが、少し立ち止まって本音で語り合うことも、リーダーにとって必要な時間であろう。テーマは「日本企業の課題とCIOの役割」。2030年までに残したくない技術負債は。6時間に及んだ議論の一部始終を紹介する。
参加者(五十音順)
- 虻川勝彦氏(カシオ計算機株式会社 デジタルイノベーション本部長)
- 喜多羅滋夫氏(喜多羅株式会社 Chief Evangelist)
- 友岡賢二氏(フジテック株式会社 専務執行役員 デジタルイノベーション本部長 CIO/CDO)
- 長谷川秀樹氏(生活協同組合コープさっぽろ CIO)
- 林直孝氏(株式会社大丸松坂屋百貨店 常務執行役員 デジタル戦略推進室長兼 DX推進部長)
固定観念をぶち壊せ!
──CIOの役割は何だと捉えていますか?
友岡賢二:企業の持続可能性を担保することです。ただし、間違ってはいけないのは、システムを止めないことは前提であって、真の役割ではないということ。CIOの役割は、企業が次の世代を生き抜くための変革をリードすること。持続可能性を高めるための戦略的アジェンダを経営視点で設定すること。これができるのが、CIOです。
虻川勝彦:CIOは、経営陣の固定観念をぶち壊すためにいると思っています。日本企業では、経営層がITを十分に理解できていないことで、本来なら実現できるはずの変革を「難しい」「できない」と判断してしまうケースが少なくありません。実際には、少し視点を変えれば解決できること、テクノロジーを活用すれば大きく前進できることが数多く存在します。CIOはその「思い込みの壁」を取り払い、経営と現場の間にあるギャップを埋め、企業の仕事の進め方そのものをアップデートしていく存在です。IT投資の質を根本から変え、企業の競争力を引き上げるための役割を担わなければなりません。
しかし現状、日本企業の多くでは、CIOの役割が十分に認識されているとはいえません。情報システム部門の延長と捉えられ、経営の中心としての期待が明確に置かれていないケースも少なくないので、このような状況こそが「失われた30年」を招いた一因であると考えています。
これからの日本企業に求められるのは、テクノロジーを経営戦略の中核に据え、CIOを変革のリーダーとして活かす組織づくりです。固定観念を打ち破り、新しい働き方と価値創造のスタイルを企業にインストールする。その役割をCIOが果たすことで、企業は次のステージへ進むことができるのだと考えています。
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
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