ヤンマーがグローバル統一の人事システム刷新に挑戦──オープンなシステムで実現する組織の未来とは?
CHRO 浜口憲路氏が目指すグローバルスタンダードへの転換、人事部門は“管理者”から「支援者」へ

1912年創業の老舗メーカーであるヤンマーホールディングスは、2025年4月に国内の人事システムを全面刷新した。そして来年には、海外拠点も含む全社への新システム展開を目指すという。その背景には、事業環境の変化にともなう組織変革がある。新たなシステムに何を求めたのか、刷新によってどのような制度改革や人事施策が可能となるのか。2025年5月29日に開催された「Workday Elevate 2025」にて、同社でCHROを務める浜口憲路氏に話を伺う機会があった。
人事部は“管理者”から「支援者」へ、閉鎖的な人事システムを刷新せよ
ヤンマーホールディングスは2024年7月、従来の人事部を「エンプロイーサクセス本部」へと改組した。その背景にあるのが、同社が掲げる企業理念「HANASAKA(ハナサカ)」だ。
この言葉は、創業者・山岡孫吉の「美しき世界は感謝の心から」という信念に由来する。人生は運や不運に左右されることもあるが、誠実さと感謝の心を持ち努力を重ねれば、協力者に恵まれ、道は拓ける──この思想は、今も「人の可能性を信じ、挑戦を支える」という企業文化として同社に息づいているという。
エンプロイーサクセス本部は、従来の人事部のように社員を“管理”するのではなく、「サポートし、成功へと導く存在である」という姿勢を体現するために設置されたのだと、CHROの浜口憲路氏は語る。かつては人事というと管理者のイメージが強く、社内でもどこか怖がられる存在だったそうだ。
「ヤンマーに入社してキャリアを積み、成長し、成功を収める……そんな社員の歩みを後押しする存在になりたかったのです。そこで『エンプロイーサクセス本部』という傘を立て、その下に人事部を位置づけました。もちろん、部のメンバーも従来型の人事部から変わるための意識改革に励みました」(浜口氏)
浜口憲路氏
この改革は、同社が掲げる「社員が主人公の人事戦略」の一環である。改革の核となるのは「Yanmar 3 Circle(3C)」だ。下記3つの視点から、社員の成長と組織の活性化を目指す。
- Challenge:挑戦
- Character:個性
- Contribution:貢献
たとえばChallenge(挑戦)では、社内で人材募集のかかった事業に応募できる完全異動型の制度「Yan-cha 100」や、週に1日だけ他部署での越境勤務を認める制度「Yan-cha 20」などを用意。そしてCharacter(個性)では、多様な働き方が可能な環境の整備を進め、Contribution(貢献)ではグローバル基準の報酬と選べる福利厚生制度を整備している。
こうした改革を推し進める中で必要となったのが、人事システムの刷新だ。「旧来のシステムは、人事部が中央ですべてを管理するという設計思想だったため、人事部にしか見えないデータや実態も多く、閉鎖的なものだった」と浜口氏。しかし、これからはオープンで透明性のあるシステムを、人事だけでなく社員一人ひとりの成長やキャリアにも活用してもらえるような環境を構築することが、ヤンマーの理念実現には必要だと判断したのだという。
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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
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