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SAS Innovate

アストラゼネカが目指す医療・創薬の新たなステージ──実現に不可欠なデータサイエンス部の役割とは?

米フロリダで最優秀賞を受賞!SAS Innovate 2025 in Orlandoでインタビュー

 AIやビッグデータの活用が急速に進み、製薬業界での研究開発が大きく変わりつつある。アストラゼネカもまた、SASなどのテクノロジーを活用した臨床データ解析などを通じて、エビデンスに基づく医薬品開発の加速に取り組んできた。そして今や、医療リアルワールドデータの解析を通じたさらなる研究開発・創薬の加速を実現しつつある。その取り組みが評価され、同社は2025年の「SAS Customer Recognition Awards『革新的問題解決者』部門」で最優秀賞を受賞した。5月に米国フロリダで開催された「SAS Innovate 2025」にて、同社のデータサイエンス部を率いる堀江義治氏と、そのメンバーである古藤諒氏にインタビューする機会があった。

「リアルワールドデータ」分析で医療・製薬の進化が新たな段階に

 アストラゼネカのデータサイエンス部は、研究開発(R&D)と市場(マーケット)の橋渡しを担う「メディカル本部」の中に設置されている。同社が製薬事業において手掛ける呼吸器、循環器、代謝、腎臓、オンコロジー(がん)などといった領域で、患者の実態や薬の使用状況を調査し、論文作成を通じたエビデンスの創出に日々取り組んでいる。

 今日の彼ら彼女らが新たに分析対象とするのは、日々様々な診療の現場で蓄積されるリアルワールドデータ(実データ/以下、RWD)だ。「昔から製薬会社が薬の研究・実用化に向けて行ってきた臨床試験のデータだけでなく、RWDを分析できるようになったことで、従来とは異なる視点や洞察を得られる時代になった」と部長の堀江氏。今では、この環境を活かし日本人患者に特化したエビデンスの構築を目指しているという。

 こうした“実臨床由来の大規模データ”を対象とした分析への取り組みが、SAS Customer Recognition Awardsの最優秀賞を受賞する一因となった。堀江氏は、「従来の製薬会社では一般的に、SASの製品は研究開発部門、特に臨床試験の解析において利用されてきた。しかし、あくまでも解析対象は臨床試験のデータだけであり、データの量に限りがあった」と振り返る。

 これに対し、RWDの分析では診療現場で得られる膨大かつ多様なデータを対象とする。ここにSASのような分析ソリューションを導入することで、解析に要するプロセスを大幅に効率化でき、医師や患者にとって重要な情報をタイムリーに届けられるというわけだ。また、解析結果やエビデンスの精度向上にも大きく貢献できる。

【左】堀江義治氏[アストラゼネカ株式会社 メディカル本部 エビデンス&オブザベーショナル リサーチ統括部 データサイエンス部 部長/博士(臨床統計学)]【右】古藤諒氏[アストラゼネカ株式会社 メディカル本部 エビデンス&オブザベーショナル リサーチ統括部 データサイエンス部 シニアデータサイエンティスト]SAS Innovate 2025の開催地となった米国フロリダ州オーランドにて
【左】堀江義治氏[アストラゼネカ株式会社 メディカル本部 エビデンス&オブザベーショナル リサーチ統括部 データサイエンス部 部長/博士(臨床統計学)]
【右】古藤諒氏[アストラゼネカ株式会社 メディカル本部 エビデンス&オブザベーショナル リサーチ統括部 データサイエンス部 シニアデータサイエンティスト]
SAS Innovate 2025の開催地となった米国フロリダ州オーランドにて

 製薬会社でのデータ分析にSASが採用されているケースは、国内外どちらを見渡してもかなり多い印象だ。その理由を聞いてみると、データの透明性を担保できる点や、ソリューションの信頼性を挙げるユーザーが多い。アストラゼネカでも同様で、堀江氏は「オーソライズされた統計解析ツールであること」を第一の採用理由に挙げた。

 「データ分析や解析のツールは世の中にたくさんありますが、SASはFDA(米国食品医薬品局)にも認可されており、バリデーションの面で非常に信頼できます。人の命に関わる医薬品の世界では、精度と信頼性は何より重要です」(堀江氏)

 また、SASが用意しているトレーニング体制も評価しているようだ。初心者向けから応用レベルまで、段階的に学べる研修プログラムが整備されており、アストラゼネカの社内で受講が推奨されているとのこと。新しいプロダクトが導入される際には必ず説明会が開かれ、体系的なスキル習得が可能だという。

 各種解析用データーベースの生成やモデル構築なども、かつてはPC上で行われ、マシンの性能に大きく依存していた時代があった。そのため、処理速度や解析結果の安定性にも限界があった。統計解析において、データ量が多いと計算結果が出てこないこともあったという。しかし、クラウドをはじめとする技術の進歩によって、その環境も大きく変化した。

 「今はSASがWeb上に設置され、そこからデータにアクセスできる時代。PCの性能による制約を受けずに解析が可能だ」と堀江氏。以前は難しかったフィッシャーの直接確率計算法(統計的仮説検定の一手法)も、一切の障壁なく実行できるようになった。こうした情報処理技術の進歩が、医療の発展をより後押ししていくことになるだろう。

次のページ
厳正なルールと倫理の下で、「不規則なデータ」をどう扱うかが腕の見せ所

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

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