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アストラゼネカが目指す医療・創薬の新たなステージ──実現に不可欠なデータサイエンス部の役割とは?

米フロリダで最優秀賞を受賞!SAS Innovate 2025 in Orlandoでインタビュー

医療×データ活用で次のステージへ、日本が「データ立国」になれるかも?

 アストラゼネカのデータサイエンス部は、約十数名(取材時点)というコンパクトな組織ながら、専門性を活かした実践的な取り組みによって、テクノロジーの進化とともに存在感を高めている。古藤氏は、今後に向けた2つの重点領域を挙げた。

 1つ目は、2024年に施行された次世代医療基盤法に基づく認定の活用だ。国から認定を取得したことで医療データの利活用が可能となり、解析の体制やツールも整ってきた今、これまで手をつけてこなかった大規模データや、より詳細な医療情報にアクセスできる環境が整いつつあるからだ。古藤氏は「これらを実務に活かし、より価値のあるエビデンス創出に取り組んでいきたい」と意気込む。

 2つ目は、従来の「市販後領域」を越えたエビデンス創出の実現だ。これまでは、医薬品の販売後に情報を収集し、副作用や有効性を研究するのが一般的だった。しかし、臨床試験における一部の分析は、RWDを使って代替できる可能性があるという。「将来的には、開発段階や臨床試験そのものにもRWDを組み込んでいけたら」と展望を語った。

 ここまでを踏まえたうえで、古藤氏は「クラウド上でデータ管理から解析までを一貫して行える環境を自社で整えていることが強みになる」と話す。一部のフローを外部委託に頼る企業が多い中で、自らデータを確認し判断できる体制を有していることが、こうした挑戦をさらに後押しするというわけだ。

 また、医療分野と他業界による連携にも大きな期待を寄せる。

 「医療データの活用そのものはまだ発展途上だとは思いますが、データの蓄積量は確実に増えています。GoogleやAWSなどのテックカンパニーでも、ライフサイエンス関連の部門が立ち上がっていますよね。こうした技術力を持つ企業と、ドメイン知識を持つ製薬会社が協業すれば、より革新的な取り組みが生まれるはずです。そうしたコラボレーションにも積極的に挑戦していきたいです」(古藤氏)

 堀江氏は、データサイエンスが担う社会的役割の可能性について次のように語った。

 「日本には、多様で有用な医療データが無数に眠っています。個人的な考えですが、たとえばマイナンバーカードの活用によって、小中学校の健診データから終末期までの一貫した個人ごとの情報を結びつければ、日本は『データ立国』として世界に先駆ける存在になれるかもしれません。データサイエンティストたちは、疾患の推移や生活習慣などの因果関係をより明らかにし、世界中の研究に貢献する知見を提供できるようになるでしょう」(堀江氏)

 そうした未来を実現するためには、産・官・学がそれぞれの立場で力を発揮しなければならない。規制を整備する「官」、データ解析と医療的な知見を担う「学」、そして実装と価値化を担う「産」といった具合にだ。それぞれが連携し、世界に先駆けて高齢化社会を迎える日本から新たな医療モデルを発信できれば、社会、ひいては人類にとって大きな成果となるかもしれない。

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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