アストラゼネカが目指す医療・創薬の新たなステージ──実現に不可欠なデータサイエンス部の役割とは?
米フロリダで最優秀賞を受賞!SAS Innovate 2025 in Orlandoでインタビュー
厳正なルールと倫理の下で、「不規則なデータ」をどう扱うかが腕の見せ所
患者のデータを扱う責任は非常に重く、厳しい法規制の遵守はもちろんのこと、倫理的な配慮を欠かすことは許されない。データの“活用”と“保護”をどう両立していくかが問われる。
堀江氏は「患者さまのデータを使うことは個人情報に深く関わる問題だ。当然、情報の漏洩などには細心の注意を払わなければならない」と強調。前提として、必ず患者からインフォームド・コンセントを得る必要があるとした。
「病院で取得したデータが、患者さま本人の知らないうちに勝手に使われていた……となっては大きな問題です。必ず『こういう目的でデータを使います』と説明し、同意を得なければいけません」(堀江氏)
テクノロジーばかり先行するのではなく、こうしたフィジカルコミュニケーションも通じた理解促進を図っていくことが重要ということだ。
データサイエンス部のメンバーである古藤氏は、「業界全体として、医療の発展のため、病気やケガで苦しむ方々が一人でも多く救われるため、という姿勢で取り組んでいる」と前置きし、制度面での進展について以下のように言及した。
「アストラゼネカだけでなく、各社が業界団体を通じた働きかけも行っています。一定の要件を満たした事業者に対してのみ認定を与える国の制度(改正次世代医療基盤法)も整いつつあります。アストラゼネカもこの認定を取得済みです。『この会社ならデータを使っても大丈夫』という信頼が、皆さんにとって前向きな判断材料にもなるでしょう」(古藤氏)
加えて、医療データの特性である「必ずしも規則的に収集されない」という点も考慮すべき課題だ。医療の現場では、毎週決まったタイミングでデータが取得できるわけではない。患者の体調や生活の事情、さらには医師や病院のスケジュールなどによって、バラつきや欠損が発生するものだ。こうした不規則なデータや欠損値をどう扱うかが、データサイエンティストの腕の見せ所なのだという。
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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティ、AI、データ関連技術やルールメイキング動向のほか、それらを活用した業務・ビジネスモデル変革に携わる方に向けた情報を発信します。
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