新たに実用化が迫る「量子AI」は何がすごいのか、AIの進化を前に必要な心構えは?
SAS Institute ディーパック・ラマナタン氏が送る、AIの新時代を迎える読者へのメッセージ
2025年7月24日に、「SAS Innovate On Tour Tokyo」が開催された。5月に開催されたSAS Innovate(米オーランド開催)での発表内容やメッセージを、日本市場向けに届ける場だ。ちなみにSAS Institute(以下、SAS)は、2026年に創業50周年を迎える。間違いなく“最古のアナリティクスベンダー”の一社といえるが、今年のInnovateでは「量子AI」など、関心を呼ぶ新たなキーワードも出てきた。東京でのイベント開催に際し、同社で技術責任者を務める一人であるディーパック・ラマナタン(Deepak Ramanathan)氏にインタビューを行う機会があったため、5月のオーランドで見聞きした内容も踏まえ、気になったことを訊いてきた。
SASはこの1年間、どんな世界を創り上げてきた?
──2024年と2025年のSAS Innovateに、現地(米国)でも、そして日本でも参加させていただきましたが、この1年間、つまり2024年から2025年にかけて、SASはどのような進化や成果の進捗を歩んできたとお考えですか。
ラマナタン氏:2024年のSAS Innovate(ラスベガス開催)で行われた最も大きな発表は、やはりプログラミング環境の「SAS Viya Workbench(以下、Workbench)」だったでしょう。そこからは1年かけて、Workbenchの様々な機能強化を行ってきました。
その中で我々が重んじてきたコンセプトがあります。まずは「単一のプラットフォーム」であることです。SAS言語だけでなく、PythonやR言語を使う人たちも同じプラットフォームの中でプログラミングができる環境を作り上げてきました。我々が目指し、期待する世界というのは、オープンソースだろうがSASだろうが、皆さんが同じプラットフォームで共に協働し、実証を行い、成果を出せる世界です。
この世界をさらに確立するためには今以上の機能強化も必要ですし、複数のクラウド環境にも対応させなければなりません。現在はAWS(Amazon Web Services)とMicrosoft Azureに対応しています。
──2024年には生成AI時代の加速に向けた新たな挑戦もたくさんスタートされているかと思いますが、そこから1年で新たに顕在化した課題や発見はありましたか。
ラマナタン氏:生成AIの普及と共に重視すべきは、「意思決定をどのように進めるか」という問題です。そして、SASはこの問題に応えるプラットフォームを提供しています。
Workbenchは、モデルを構築することにおいては非常に優れていますが、それを本番環境へと移行し、運用化まで漕ぎつけるためには、やはりエンタープライズ・プラットフォームが必要となります。そのプラットフォームというのは「SAS Viya(以下、Viya)」のことですね。これは今後も変わりません。構築したモデルをViyaが取得すると、それをいかに意思決定に組み込み、そのモデルをどう「エージェント」としてデプロイするかを検討します。そして、他のアプリケーションがそのエージェントを使えるようにします。
ここでポイントとなる潮流は、組織が「複数のエージェントを持てるようになった」点です。Viyaではエージェントのためのオーケストレーションのレイヤーも提供していますので、たとえばユーザーが「エージェント1」「エージェント2」「エージェント3」をデプロイし、次にそれらのエージェントからフィードバックを得て、それをモデルにフィードバックする、という一連のプロセスがすべて自動で完了できるのです。
ここまでを踏まえて総括すると、Workbenchは優れた開発者プラットフォームで、Viyaはオーケストレーション・プラットフォームだといえます。この2つを合わせることで、ユーザーは思い描くモデルを好きな言語で構築し、それをデプロイし、生成AIのエージェントとして運用化までほぼ自動で実現できるようになります。
こうした世界の実現と強化に、我々はこの1年間注力してきたといえるでしょう。
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
2021年より事業変革に携わる方のためのメディア Biz/Zine(ビズジン)で取材・編集に携わった後、2024年にEnterpriseZine編集部に加入。サイバーセキュリティとAIのテクノロジー分野を中心に、それらに関する国内外の最新技術やルールメイキング動向を担当。そのほか、テクノロジーを活用...
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