米国ラスベガスにて5月31日~6月4日に開催された「Cisco Live! 2026」。Cisco(シスコ)のチャック・ロビンス会長が登壇したキーノートにて、ゲストとしてStarbucks(スターバックス)のブライアン・ニコル会長が駆け付けた。業種は違えど、巨大な組織を束ねる2人。ロビンス氏はニコル氏に対し、スターバックスという組織を率いる経営者として重んじている哲学や、昨今のテクノロジーの進化がビジネスに及ぼす影響について尋ねた。
まずは意思決定とアクション、変化の時代には「後から軌道修正する」素養が必要だ
チャック・ロビンス氏(Cisco会長):来てくれてありがとう、ブライアン。あなたと私はもう随分と長い付き合いになるよね。最初に出会ったのは、あなたがChipotle(チポトレ:Chipotle Mexican Grill ※)のCEOだった時だ。
ブライアン・ニコル氏(Starbucks会長):そうだね。
※Chipotle Mexican Grill(チポトレ・メキシカン・グリル):米国で創業したメキシカン・ファストフードチェーン。タコスやブリトーを顧客好みにカスタマイズできるスタイルで、現在も店舗数を急速に拡大している。日本には未上陸(取材時点)。
ロビンス氏:あなたは今までいくつもの企業で事業や経営の転換期に直面し、そのたびに変化を導いてきた。きっとスターバックスでも同じようなことをしているのだろうけど、これまで新天地、それも巨大な組織に移るたびに、どうやってそこに適応してきたの? 新しい場所で一からすべてを学ぶのは本当に大変なことだと思うんだ。
ニコル氏:たとえばスターバックスやチポトレは、消費者を相手にする「カスタマー・ファースト(顧客第一)」のビジネスだから、まずはどうすれば顧客に対して素晴らしい仕事ができるのかを理解する必要がある。そして、スターバックスのような小売業の場合、顧客と直接接点を持ち、サービスを提供するたくさんの従業員がいる。そこで、彼ら彼女らが良い仕事をするために日頃何をしているのかも学ばなければいけないね。
新しい会社に行くとまずはこの2つから始めるんだけど、いざ組織の中に本格的に入り込んでからも、学ぶことはたくさんある。その時に大切なのは、多くのことに耳を傾け、多くのことを学ぼうとする姿勢だ。常にオープンでいる必要がある。全員に「これをやってくれ」と指示を出す前にね。そうして、顧客にとって最も正しい成果を得るための、最も効率的な方法を見つけ出していくんだ。
ロビンス氏:今日ここにいるみんなも、今まさに複雑な状況に直面していて、新しいことを学んでいる最中なんだ、私も含めてね。そこで尋ねたいんだけど、どの時点で「もう十分な情報を得られたから、そろそろ意思決定を行い、難しい事柄を動かし始めよう」と思えるのかな。場合によっては、一度動かし始めたらもう元には戻せないかもしれないよね。
ニコル氏:その時点でアクセス可能な最善の情報をもとに意思決定を行い、状況に応じて軌道修正していく自分なりの方法を身につけることがポイントだ。いまだかつてないスピードで変化する今の世の中ではね。
実際、スターバックス社内の意思決定の場では、「これは変えられないものだ」という固定観念が過度に充満していることが分かったんだ。だから、まずは行動を起こして、常に新しい情報を取り入れ、それに応じて軌道修正していく文化を浸透させる必要があった。
もちろん、自分たちの行動に対して「確信・信念」は持たなきゃいけないんだけど、同時にフィードバックには真摯に耳を傾ける機敏さを持たなければいけない。そして、自分たちの周りでは何が起こっているのか、何がどう変化しているのかを常に意識するんだ。変化とは速いだけでなく、予測不可能なものだから。
ロビンス氏:たしかに、そのとおりだね。
ニコル氏:ホント、毎朝起きるたびに「何が起こったんだ?」って思うよ(笑)。でも、それを楽しむんだ。「さあ始まるぞ!」って感じに。想定外の事態を受け入れることを恐れない自分になることが重要だ。
これは別に特別な能力ではないよ。僕はいつも「もし、来週何が起こるのかをある程度の確実性を以て知ることができるならば、私たちは皆、今とは違うことをしているはずだ」って言っている。つまり人間は皆、今この時どうするか常に選択を迫られているんだ。だからビジネスにおいても、自分のビジネスに対し確信を持たなければいけないし、新しいことに直面しても恐れずに学び、軌道修正できる好奇心を持たなければいけないと思う。
ロビンス氏:つまり、たとえ今日下した意思決定が、5日後には世の中の常識が変わって「間違いだった」となる可能性があっても、それを承知のうえで決断しなければならないということだね。
ニコル氏:そのとおり。そして、「もう新しい時代になったのだから」と、“自分の考えを改める権利”を主張できるくらい、ある種オープンにならなければいけない。ネガティブに行き詰まる必要はないんだ。
ロビンス氏:つい最近、私はポッドキャストで「間違った決定を下して後で素早く修正するほうが、ただ座って何も決断しないよりはマシだ」って言ったんだけど、その点では我々は意見が一致しているようだね(笑)
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティとAI(人工知能)関連を中心に、国内外の最新技術やルールメイキング動向を取材しているほか、DX推進や、企業財務・IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。武蔵大学 経済学部 経済学科 卒業。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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