店舗とサプライチェーンを知り尽くしたAIモデル/データで、プロセスが根本から変わる?
ロビンス氏:ではここで、デジタルテクノロジーについて話そう。特に、スターバックスのような“店舗”のビジネスにおいて、テクノロジーがどのように力を発揮するのか興味がある。AIやデータによって、何か変わったかな?
ニコル氏:かつては想定していなかった領域、たとえばサプライチェーンに大きな変化があった。スケジュールの作成や在庫・消費予測など、いわゆる店舗の舞台裏にも大きなインパクトがあったよ。そして当然、スターバックスが提供するデジタルアプリやリワードプログラムもね。
でも、ここ半年で最大の変化があったのは、それらのタスクを「実行する能力」だと思う。より正確に、より多くの情報に基づいた方法で実行できるようになった。ただし率直に言うと、スターバックスも道半ばだよ。たとえば今後、店舗のバックヤードをもっと小さくしていけると考えている。「適切なタイミングで、適切な量のシロップを店舗に用意する」といったことが可能になるだろうからね。
フードやドリンクも同じようになるだろう。適切なタイミングですべての商品在庫・提供数を管理し、パートナー(各店舗やコーヒー生産者などのサプライヤー)がリアルタイムで補充・提供できるようになる。これまではケース(箱)単位でモノを発送しなければいけなかったけど、これからは個数単位で発送できるようになっていくだろう。しかも毎日、絶え間なくね。なぜなら、サプライチェーンの連動した情報をリアルタイムで追えるようになるからだ。そうすれば、店舗としてもケース単位で在庫を抱える必要はなくなるね。
ロビンス氏:体験のパーソナライズも進んでいくだろうね。
ニコル氏:既に進んできているよ。ところで、チャックはスターバックスでいつもベンティ(Venti:590mlの大きいサイズ)を飲むよね。コーヒーは「パイクプレイス ロースト(同社が提供するオリジナルブレンドコーヒー)」かな?
ロビンス氏:いや、普通のレギュラーコーヒーだよ。
ニコル氏:“普通のコーヒー”か(笑)。いつかさらにパーソナライズ体験を高度化して、あなたをただのレギュラーコーヒーから卒業させて見せるよ。バニラコールドフォームを載せたアイスアメリカーノにね!
ロビンス氏:それ、次にスターバックスに行った時に注文できるよう、書き留めておいてくれるかい?
ニコル氏:まさに、そんなことができるようになるよ。データが蓄積されていくと、あなたが何を注文するかの「予測可能性」が劇的に向上していくからね。そしてゆくゆくは、精度と信頼性を極限まで磨いたデータが、店舗の人員配置、在庫設定、レイアウトなんかにも反映されていくわけだ。さっき話した「最適な量の供給を最大化する」ことも可能になる。
ロビンス氏:AIについてはどうかな?
ニコル氏:AIを前提に、すべてのプロセスを見直しているところだよ。プロセスの中の「デジタル化されていて、かつ繰り返し行われている部分」を特定していく作業だ。そして、その部分にAIなどを実装できるのではないかと検討する。
そういうプロセスがよく見つかるのは「体験(店舗)の舞台裏」だね。コーポレートオフィスの中の経理、法務、人事、さらにはサプライチェーン。既に、店舗マネージャーが「冷蔵庫に水を10本入れるべきか、それとも15本入れるべきか」なんて悩まなくても大丈夫な世界を実現しつつあるよ。AIモデルが「米国東海岸で火曜日、気温80°F(約26.7°C)ならば、この店舗はこれだけの水を消費する」ということを知っているからね。
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティとAI(人工知能)関連を中心に、国内外の最新技術やルールメイキング動向を取材しているほか、DX推進や、企業財務・IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。武蔵大学 経済学部 経済学科 卒業。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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