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“ベテランの勘”をAIで再現──2024年問題の先を見越したアスクルの長期的な物流プロセス変革

「AI需要予測モデル」でトラックの車両台数を削減、CO2排出量は5トン超削減に成功

 「アスクル:明日(あす)来る」という社名の通り、商品の翌日配送をうたうアスクル。これを実現するには物流プロセスの効率化が欠かせない。実際アスクルの物流プロセスではロボットやAIを活用して自動化や省力化を進めている。「物流2024年問題」と言われるトラック事業者の労働時間規制が2024年4月から開始されている中、どのような領域でどのようにAIなどのテクノロジーを活用し、物流の効率化を進めているのか。アスクルで物流を統括する成松岳志氏に訊いた。

「明日(あす)来る」を実現するための“組み合わせ最適化”

──まずはこれまでのご経歴を教えてください。

 2007年にアスクルに入社し、最初の5年は中小事業所向けサイトのCRMやデジタルマーケティングを中心に担当していました。2012年から個人向けのECサイト「LOHACO」の事業立ち上げに参画し、ここでもマーケティングやデータ解析を行いました。2023年3月からはロジスティクス本部の本部長として、物流の設計、配送、品質管理など物流全般の責任者を務めています。

──貴社を取り巻く物流の現況について教えていただけますか。

 アスクルではBtoB事業(事業所向け)の売上が約3700億円、BtoC事業(個人向け)の売上が約630億円、取り扱い商品は約1260万アイテムあります(2023年5月期の実績)。全国には主要な物流センターが10ヵ所あり、全体で約21万アイテムの在庫を保持しています。アスクルの「明日(あす)来る」を体現できる商品は、この約21万アイテムの「組み合わせ」によって実現しているのです。

 BtoB、BtoC事業のいずれにおいても、お客様が1回の注文で1つの商品だけを購入するといった購買行動はあまり見られません。その時点で足りないものを1回の注文でまとめて買い足すといった傾向が強いです。そのため、私たちは複数の商品を1箱でお届けすることにこだわっています。注文した商品がバラバラに梱包され、お客様の手元に届くとなると、トラックをそれだけ無駄に走らせることになる。段ボールを開封する際にも、複数の段ボールや緩衝材を捨てる手間が増えます。受け取りのストレスをなくすためにも、1回で注文した商品を1箱で届けることができればお客様の満足度が高まると考えています。昨今の物流2024年問題や物流の配給力不足という観点でも、運送コストの効率化というビジネス的な観点でも、「1箱で届ける」ことは物流に求められているコンセプトなのです。

 これを実現するためには、物流においてオペレーションやテクノロジーを組み合わせて最適化することが非常に重要です。アスクルの場合、各地の物流センターにどういったアイテムをどれだけの在庫で保管しておけば「1箱で当日・翌日配送」が実現できるか。あるいはドライバーの方がどのように配送ルートを回れば最も効率的か。こうした課題の解決にあたっては「組み合わせの最適化」という考え方が不可欠です。

アスクル 執行役員 ロジスティクス本部長 成松岳志氏

──物流業界では「物流2024年問題」が叫ばれています。この問題についてアスクルで取り組んでいることはありますか。

 物流2024年問題は、物流関係のドライバーにも他職種の方々と同じように労働基準法が適用されることに端を発しています。この問題に関しては、既に対応を終えています。たとえば、今まで10時間かかっていたものを8時間半で終わらせるためにはどうしたらよいか。こうした課題に対応するために、テクノロジーの力やオペレーションルールの変更、あるいはサービスレベルの変更などを行ってきました。

 当社で取り組んでいる基本的なアプローチは大きく2つあります。1つは内部の自動化・省人化・最適化を進める内部のDX、もう1つは外部やお客様との共創です。2つ目は当社独自の取り組みで、物流2024年問題は当社だけで簡単に解決できるものではなく、商品を受け取る側のお客様や連携企業の協力によって、より前進するものだと感じています。

次のページ
自動化が進む物流プロセスも、あえて手作業を残す部分とは

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この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

竹村 美沙希(編集部)(タケムラ ミサキ)

株式会社翔泳社 EnterpriseZine編集部

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