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AI inside 渡久地 択と思索する「AIの在り方」

生成AIで業界構造は変わるのか?内製化は進むのか?IT部門が逃したら“企業衰退”につながる潮目の変化

【第4回】対談:ヘッドウォータース代表取締役 篠田庸介

 連載「AI inside 渡久地 択と思索する『AIの在り方』」、第4回となる本稿では、AIインテグレーションサービスなどを展開するヘッドウォータース代表取締役 篠田庸介氏との対談企画をお届けする。生成AIブームが起きている今、企業の現在地はどこにあるのか。日本企業、特に事業会社における生成AIの活用方法、そしてIT部門のリーダー層に何が求められるか、意見交換を行った。

盛り上がるデータとAIの活用、「内製化」を後押し

渡久地択氏(以下、渡久地):生成AIのブームは落ち着いたという見方も一部でなされていますが、グローバル規模でもそんなことはなく、より拡大しているように思えます。

篠田庸介氏(以下、篠田):多くの企業が生成AIを試用してみて、それだけでは課題が解決できないことが明らかになってきました。しっかりと活用するためには周辺技術も重要で、特にAI向けのチップやデータ基盤を提供する企業が数多く登場しています。AIではデータの重要性が非常に高く、アルゴリズムはもちろん、データの収集や連携の方法に注目すべきだと思います。欧米の市場はその点で進んでいますね。

渡久地:日本とグローバルを比較すると、特にインフラを含めた投資額の差が顕著です。スケールが違いますね。

篠田:日本企業は予算の組み方がダイナミックでなく、素早い対応が難しい状況でした。しかし、2024年度は多くの企業がAIにかかわる予算を計画的に組んでおり、日本市場は大きく成長する見込みです。

ヘッドウォータース代表取締役 篠田庸介氏
ヘッドウォータース代表取締役 篠田庸介氏

渡久地:そうした日本企業の多くが業務改善を目的としてAIの活用を進めていますが、そこを支えるDatabricksやSnowflakeなど、データ基盤となるツールを十分に活用できているケースは少ないでしょう。そもそもAIに学習させるデータが手元にないという企業は多く、今は準備段階という話もよく聞きます。

篠田:データの保持や想定している活用方法によって、データベースの構築方法は異なりますが、多くの企業がまだこれらの対策を行えておらず、良いパフォーマンスを出せていません。そのため、AI活用に向けた準備として、データベースの構築・整備から取り組むケースが多いですね。

渡久地:さきほど少し名前を挙げましたが、他に注目している企業はありますか。

篠田:AI insideですね。

渡久地:絶対に言うと思ってましたよ……(笑)

篠田:実際にAI insideには注目していて、当社は独自の研究開発に特化せず、既存の技術を組み合わせて最高のパフォーマンスを出すことを目的としています。一方、AI insideは独特のアプローチでAIをはじめとしたテクノロジーを深く追求していますよね。先日、渡久地さんがSNSで「ChatGPT(OpenAI)に早々に降参すべきではない」といった意見を述べているのを拝見し、独自LLMを開発されるなど非常に刺激的な取り組みだと感じています。

 「新しい技術が登場した今の時期に少し儲けるだけで終わるのではなく、真に戦うべきだ」という考えに共感し、私もグローバル市場でのチャンスをどう捉えるべきか真剣に考えるようになりました。

渡久地:日本ではまだ生成AI関連のマーケットがなく、企業側もベンダー側もスタートラインに立ったばかりです。自分たちの強みを活かして何をやるべきか、今はまだ手探りの状態ですよね。

AI inside 代表取締役社長 CEO 渡久地択氏
AI inside 代表取締役社長 CEO 渡久地択氏

篠田:たしかに大手のSIerやベンダーは、自分たちの提供価値を確立できていない状況と言えます。たとえば、IoT基盤をMicrosoft Azure上に構築して生成AIを活用したいケースがあったとしても、依然として有効なソリューションを提供できる大手SIerやベンダーは存在しません。そうした特定の要件においては、我々のような先行企業は優位性を築けています。

渡久地:もう少しだけ長期的視点で捉えてみると、2030年頃には多くの業務が自動化されていると考えています。現在の効率化だけを目的とした取り組みは、時代とともに完了するでしょう。そのとき、すべての企業がIT企業となり、インターネットやAIを利用していない企業は存在しなくなるはずです。そうすると今の市場で一般的とされている考え方や概念も大きく変化しています。

篠田:そうですね。今までは、50億円を投じて構築したシステムを5年後にはリプレイスするような非効率的なITライフサイクルが普通でした。これがクラウドや生成AIの活用が進んできたことで変わり、内製化も進んでいくことでしょう。つまり、業務効率化が進むにつれて、自社でデータを活用して新しい価値を生み出せるかどうか、そのためのITシステムなのかが重要視されるようになり、新しいビジネスモデルも生まれていきます。

渡久地:多くの企業が今の業務フローを改善したいと考えていますが、そもそもその発想自体がレガシーだと思っています。より合理的なプロセスや手法に変えていくことで価値は生まれるのですが、まだまだ理解を得られないことも多いです。

篠田:その状況は少しずつ変わっていくでしょうね。長らく日本のIT業界は、多重下請け構造だと指摘されていますが、その構図で収益をあげるだけの企業は淘汰されていくでしょう。依然として、下請けと呼ばれるような現場では、従業員の給料が上がらず疲弊していますが、本来のITエンジニアはクリエイティブな業務を担うべきです。米国では、平均的な年収は日本より高く、身につけた技術を活用してキャリアパスを描けていますよね。だからこそ、日本でもエンジニアが適正な評価を受けることができれば、国家としての生産性向上はもちろん、よりクリエイティビティに溢れた世の中になっていくと考えています。

渡久地:米国は日本と比べると内製化の比率が高いですね。日本での内製化は進んでいると感じますか。

篠田:当社の支援先は年商1000億円以上の企業に限定されますが、こうした企業の多くは内製化を望んでいます。一方、既存SIerの利益が大きく削減されてしまうこともあり、彼らはこの動きに前向きではありません。だからこそ、当社のような企業が支援しています。

 内製化の核心は、まさにデータとAIの活用にあります。多くの製品・ソリューションが存在している中、これらをどう活用できるかが次のステップであり、この流れはもはや止まることはないでしょう。

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挑戦を恐れないマインドセットが重要に

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

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