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Google Workspace、生成AIで業務効率化を加速 Gemini搭載で文章・画像生成、Google Vidsで動画作成も

「Google Cloud Next '24」レポート #02

 現地時間4月9日〜11日、Google Cloudは米ラスベガスで年次カンファレンス「Google Cloud Next ‘24」を開催した。この記事では、Googleのアパルナ・パプー氏(Google Workspace担当Vice President and General Manager)から発表のあった初日の基調講演のもう1つの目玉「Google Vids」を始めとする「Gemini for Google Workspace」のアップデート内容を紹介する。

生成AI機能がさらに充実するGemini for Google Workspace

提供:Google Cloud
Google Workspace担当Vice President and General Manager アパルナ・パプー氏 提供:Google Cloud

 2023年12月の「Gemini 1.0」の発表以来、Google Cloudが生成AI関連ポートフォリオの拡充を加速させている。Geminiはマルチモーダルネイティブの基盤モデルとしてゼロから開発されたもので、テキスト、画像、音声、動画、コードといった多様な情報をシームレスに扱う。しかし、基盤モデルはどんなに賢くても、単独では力を発揮できない。エンドユーザーの質問に答えてもらう。あるいはメールの文面やドキュメントの原稿を考えてもらうには、アプリケーションから生成AIアシスタントを使えるようにしなくてはならない。

 Googleでは、従前から個人向けとは別に企業向けのグループウェアとしてGmail、カレンダー、Docs、Sheets、Slidesなどのアプリケーション機能を1つにまとめたG Suiteを提供してきた。2020年10月には、G Suiteは「Google Workspace」と名称を改め、組織内のコラボレーションを促し、MeetsやChatに高いセキュリティ対策を施すなど、企業が求める要件を満たした製品に生まれ変わっている。このGoogle Workspaceから基盤モデルにアクセスできるようにしたのがDuet AI for Workspaceである。

 元々、Duet AIは2023年5月に行われた「Google I/O 2023」で初めて発表したAIアシスタントで、2024年2月の「Gemini 1.5」を発表と同時に、Duet AI for Workspaceも「Gemini for Google Workspace」に名称変更となった。現在、全世界で100万人以上のエンタープライズユーザーがGemini for Google Workspaceを利用している。ユーザーからよく使われているのが「Help Me Write」と「Help Me Visualize」の機能になる。前者はGmailやDocsでの文章作成を支援するもので、後者はイメージ画像を生成するものになる。今まではあちこちの情報源から自分で参考になるものを探し、編集しなくてはならなかったが、何かの質問を投げかけるだけで生成結果を短時間で得られるようになった。

 たとえば、カリフォルニア州でスポーツ用品店チェーンを運営するSports Basementでは、顧客からの問い合わせメールへの対応でGemini for Google Workspaceを利用し、メール作成に費やす時間を30%〜35%程度、短縮する効果を得ている。また、オーストラリアとニュージーランドでスーパーマーケットチェーンを展開するWoolworthsでは、1万人を超える管理職がGemini for Google Workspaceを利用し、生産性向上に役立てている。さらに、米大手住宅ローン会社のPennyMacでは、入社後の社員の教育カリキュラムの作成でGemini for Google Workspaceを利用している。企業規模を問わず、多くのGoogle Workspaceユーザーが生成AIアシスタントを利用中だ。

ビジネスユーザー向けの動画生成アプリケーションGoogle Vids

 Gemini for Google Workspaceに関して、パプー氏は大きく3つの発表を行った。その中で最大の発表が2024年6月から提供を予定しているGoogle Vidsである。Vidsは、生成AIテクノロジーで強化された業務用の動画を生成するアプリケーションで、Docs、Sheets、Slidesと同じWorkspaceアプリケーション群の1つに新しく加わることになる。

図1:Google Workspaceに加わるGoogle Vids 出典:Google Cloud [画像クリックで拡大]

 たとえば、Google Cloudのイベントチームが「ラスベガスで行ったNext '24の振り返り動画を作成して下さい」とプロンプトに入力したとする。Geminiは複数のモードを処理できるため、プロンプトにはDocsファイルやスプレッドシートの添付もできる。興味深いのが、通常の動画作成AIとは異なり、プロンプトの指示からいきなり動画作成を開始するのではないことだ。Vidsでは、まずストーリーの大まかな流れを絵コンテの形式で提案してくれる。

図2:Google Vidsが提案してきた絵コンテ 出典:Google Cloud [画像クリックで拡大]

 この結果を見て、ビジネスユーザーが次に行うのはスタイルの選択である。Vidsでは、この例のようなマーケティング施策の振り返りの他、四半期のビジネスアップデート、会社紹介、製品紹介のような様々な用途に対応するスタイルテンプレートを用意している。

図3:様々なユースケースを想定した動画のスタイル 出典:Google Cloud [画像クリックで拡大]

 最初の提案では主要シーンの羅列にとどまっていたが、スタイルを選択すると、VidsはGoogleドライブやGoogleフォトからシーンごとに適切なストックコンテンツを選び、BGM、ナレーションスクリプトを加えて詳細なストーリーを提案してくれる。もちろんこのストーリーの編集も可能だ。さらに、Vidsではナレーションの音声をプリセットのものからだけでなく、事前に録音しておいた自分の声を選択することもできるようにしている。プリセットの音声から選ぶ場合も、英語だけでもアメリカ人、イギリス人、オーストラリア人の男性、女性、口調はエネルギッシュ、親しみやすい、ゆったりしたトーンなどの中から目的に合致したものを選択できるようにしている。

 VidsはWorkspaceアプリケーションの1つとして追加されるので、チームがすでに使い慣れたDocs、Sheets、Slidesのような他のアプリケーションとの連携にも優れている。そのため、専門スキルを持たない一般のビジネスパーソンであっても、Vidsが提供する編集ナビゲーションを通じて、思い描く動画コンテンツの作成ができ、テキストだけでは難しかったストーリー訴求が可能になる。

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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