シーシーエスは植物工場で、高価値作物のイチゴの生産を実現すべく取り組んでいる。技術力を背景に栽培データの蓄積と活用で、効率的な生産と品質管理を実現しつつ、ソリューションとして支援を提供し、新たなビジネスモデルを構築する。自然受粉が可能で人工授粉やハチの使用が不要な「恋苺」品種の利用、水と肥料の循環を最適化する肥料循環システム、光・環境条件の制御とデータ蓄積などの技術がその原動力となる。
植物工場でイチゴの生産性向上をめざす

1985年に開催された「つくば科学万博」、注目された展示の1つに「植物工場」があった。政府テーマ館の一角に設けられた人工光型モデルプラントでは光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、養分、水分などを最適に制御し、露地栽培の5から6倍の速度で野菜が育てられることを実証して見せた。その後、政府補助金なども投入され植物工場の実用化が進められ、レタスなどの葉もの野菜が栽培されてきた。しかし葉もの野菜の単価は安価で、利益を出すには大量生産が必要だ。結果、工場設備も巨大化し建設コストも増大、さらに光源や空調など運用にエネルギーコストもかかり、なかなか植物工場で競争力のある作物は生産できなかった。
ここ最近は技術進歩もあり、IoTやAIなど最新技術も取り入れて植物工場のビジネスも、ようやく黒字化が見込めるようになった。さらにビジネスを伸ばすには、より価値の高いくだものなどの栽培に挑戦する必要がある。そこに挑戦しているのが、検査用LED照明ではトップシェアを誇り、光を活用するための専門技術を持つシーシーエス株式会社だ。
シーシーエスは、1993年に京都で創業。超高輝度LEDフラット照明機器の開発、販売からビジネスを開始し、現在は画像処理用LED照明では国内、海外ともにトップシェアを獲得している。シーシーエスのビジネスはLEDで光を制御し、さまざまな領域で価値を生み出すもの。その1つの領域として取り組んでいるのが、植物工場だ。
これまで日本では、政府の補助金などを得てレタスなどの葉もの野菜を植物工場で生産してきた。それらは光源が蛍光灯からLEDに進化することで「ようやく黒字化できるようになってきています」と言うのは、シーシーエス株式会社 光技術研究所 技術・研究開発 研究開発部 施設園芸技術開発課 博士(農学) 課長の秋間和広氏だ。秋間氏はLED開発の技術者ではなく、植物工場などで価値のある作物を育て販売するビジネスのための技術者として、シーシーエスに入社した専門職の人材だ。
先に触れたように、葉もの野菜を工場で生産しても、単価が安いので大きな利益を生み出すのは難しい。そのため植物工場を活用したいと考える顧客からは、より価値ある作物として実のなる作物、たとえばトマトやくだものなどを生産したいとの要望があった。それに応えるため、シーシーエスでもさまざまな研究、試行や検証を実施してきた。そして2018年から本格的に取り組んだのが、イチゴの栽培だった。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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