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みんなの銀行CIO、「システム障害」と向き合う者の姿勢──“節約”は言語道断、開業時より備わる文化とは

株式会社みんなの銀行 常務執行役員CIO 宮本 昌明氏

内製化にも本腰、理想は“自走型”のエンジニアリング組織

 みんなの銀行、およびゼロバンク・デザインファクトリーには、宮本氏が参画した当初はエンジニアのメンバーがいなかったため、開発のほとんどを外部のパートナーへ依存していた。しかし、今では135名のエンジニアを含むシステム人財が在籍しており、内製の割合を増やしている。エンジニアの採用プロセスは厳格で、書類選考から入社までの採用率は約5%程度だ。新しいことへの学習意欲や、問題を見つけて自ら開発・改善できる自走力を重視しているという。結果として優秀なエンジニアが集まり、「未経験の分野でも自主的に学び、迅速に成果を出す文化が醸成されている」と宮本氏は話す。

 同行は、指示型の管理ではなく、エンジニア主導でプロダクトやSRE、DevOpsを進化させていく“自走型組織”を理想としている。エンジニアのエンゲージメントを高め、組織の成長を加速させることが狙いだ。そのため、「0を1にするフェーズでは、設計レビュー・統制/カルチャー作りの意味で細かく口を出したが、1を1.1や2.0にする現フェーズでは、極力存在感を出さないように努めている」と宮本氏。エンジニアの自主性を尊重する立場を取っているという。

 「とは言っても、それは『放置する』ということではありません。私は毎日すべての社内動向を細かくチェックしており、誰が何を発言し、調査し、提案しているかを把握しています。待つのではなく、日頃から密にコミュニケーションを取り、皆の意見を理解しながら私の考えも伝え、望ましい方向性を示せるように心がけています」(宮本氏)

 開発については、開業当初は大手パートナー企業のエンジニアが開発に多数参加していたため、パートナーが提供するDevOps環境を利用していた。ところが、内製開発を進める上で、「自前の環境を持たなければ、必要な部分を迅速に修正できない」という問題があった。そこで、現在ではソースコードの管理ツールやCI/CD環境の整備を行い、それが完了したらデータベース周りの設計ツールなども順次整備していく。

 内製化を進める中で組成されたのが、開発したサービスの高可用性化を担うSREチームだ。開発部隊とは分離・独立して存在するこのチームは、インフラエンジニアとアプリエンジニアによる3名で構成されている。メンバーは、みんなの銀行全体のミッション・ビジョン・バリュー(MVV)をもとに、「SREが果たすべき役割は何か」を独自に定義し、チームとしてのMVVも策定。それを全社のMVVと連携させている。現在は、サービスやシステムの運用における様々な摩擦点を特定し、自動化開発の推進やメトリクス監視の強化、ダッシュボードの改善に取り組んでいるとのことだ。

 エンジニアリング組織の長期的なビジョンについては、「AIなどの新しい技術と、自分たちの開発力の融合を目指している」と宮本氏は話す。

 「新しい技術やツールを取り込みながら、DevOpsやSRE、そしてテストや運用の自動化を積極的に進めています。これにより、サービス開発により多くのリソースを集中できる、組織とプロセスの構築を目指しているのです。メンバー自らが考え、追求し、実践することを重視しています。自主的な改善と進化を続ける組織こそが、私が想い描く理想の姿です」(宮本氏)

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リスク管理の向上とコスト削減を両立、さらなる理想の追求へ

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森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

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