リスク管理の向上とコスト削減を両立、さらなる理想の追求へ
理想を追求しながらも、コスト管理を疎かにするわけにはいかない。内製開発は外部に委託するよりもコスト効率が高いうえ、クラウドの従量課金制も効果的な費用管理を可能にする。みんなの銀行では、リスク管理や顧客体験の向上、システムの自動化・高度化を進めながらも、コスト削減を実現している。
クラウドはオンプレミスに比べて柔軟性があるため、ハードウェアのスペックが向上すれば一時的にコストが上がることもあるが、最終的には低下していく。性能向上によって必要なインスタンス数が減る場合もあり、こうした変化をこまめに見ながら、テスト環境や本番環境を含め、削減できるものを減らしているという。
「みんなの銀行では、クラウドのコスト情報を全エンジニアに公開しています。これにより、各エンジニアが自分たちのリソース使用量とそれに伴う費用を正確に把握できるようになりました。この透明性の実現によって、ストレージサービスに予想外の高コストがかかっていることが明らかとなり、すぐに使用方法を見直してコストを大幅に削減できました」(宮本氏)
宮本氏の理想は、メンバーが100%プロパーのエンジニア組織を構築すること。そうしてノウハウと技術力を社内に蓄積し、資金も自社のために使う。プロダクト改善、API開発、DevOps、SREなど、やるべきことは尽きない。セキュリティ強化のため、自社サービスに対しサイバー攻撃を仕掛けて脆弱性を診断する、レッドチームの内製化も目指したいと語る。
こうした理想を実現するため、FFGではエンジニア向けの新しい人事制度を導入した。今後も社内の声を集めながら、制度のブラッシュアップとバランスのとれた組織づくりに取り組んでいくという。
経営陣から現場の社員一人ひとりまで、セキュリティ、品質、そして保守運用への理解を浸透させているみんなの銀行。宮本氏は、様々な課題解決のため、業界を超えた幅広いネットワーキングへの参加と情報収集を行っている。特に、技術的に先進的な企業や個人の取り組みには細かく注目し、常に革新的なアプローチを模索していると話す。多様な情報源から学び、自社に適したアイデアを見出すことで、継続的な改善と革新を推進しているのである。システム障害についても同様だ。最後に宮本氏は、改めてリスクと向き合う者の心構えを述べた。
「必要な対策をしなかった場合、具体的にどんな結末を迎えることになるのか。これを社内に向け説明することが重要です。BCPやセキュリティの製品は、単なるコストではなく、業務継続やリスク回避に不可欠だと全員に理解してもらわなければなりません。他社で起こっている事例を挙げ、対策の重要性を示すのも効果的でしょう。経営層に対しては、リスクのリアリティを具体的に説明しつつ、前向きな提案として伝えることで、必要な投資への理解を得やすくなるはずです」(宮本氏)