参加者は1年で4倍に:データドリブンを“自分ごと”にする
「自分が暮らす街、働く街をもっと良くするために、はたして何ができるのか?」──富士通は今回、この問いかけにデータで応える挑戦を行った。まずは街の実態をしっかりと把握したうえで、課題やインサイトを抽出する必要がある。データはその手がかりだ。様々な手法や視点から得られたデータを分析することで新たなインサイトを得て、次の打ち手を見出すことができる。こうしたデータドリブンな手法こそ、これからの時代に求められるアプローチとなるだろう。
このような考えのもと、富士通ではデータ分析コンペ「DDM Award 2024」において、市制100周年を迎える川崎市のイメージアップ施策を考えるオープンデータ分析コースを企画した。市が公開するデータに加えて、都市イメージの調査や市民アンケートの結果、その他自治体のデータ、国勢調査、国土数値情報など多彩なデータを活用し、「市の魅力アップ」につながる因子やインサイトを提言するものだ。参加者にはBIツールとして「Qlik Sense」が提供されるが、基本的に分析環境や手法は自由。データ分析・解析のノウハウはもとより、仮説を立てるセンス、課題やインサイトを見出す洞察力などの“人間力”も試される。
2024年度に開催したデータ分析コンペの参加者は168名だったが、2025年度は川崎市オープンデータを扱うコースと社内データを扱うコースの2コースで開催し、合計600名を超える社員が参加。そのうちの川崎市オープンデータコースには、社内外から300名を超えるエントリーがあったという。一次審査で8チームが通過し、そこからさらに最終プレゼンテーションに参加する4チームが選出された。今回のコンペでは、この4チームが最優秀賞を競うこととなる。
イベント冒頭に登壇した時田隆仁社長は「富士通は、データドリブンな取り組みを通じて社会に貢献していきたいと考えています。そのために、仮説を立て、様々なデータを組み合わせ、多様な知恵を持つ人々と協力しながら、テクノロジーの面から社会をサポートしていきます」と語り、「社会に思いや仮説を伝えられる、力強いプレゼンテーションを期待しています」と各チームにエールを送った。

富士通株式会社 代表取締役社長 CEO 時田隆仁氏
今回は、川崎市とのコラボレーション企画として富士通以外からも参加者を募っているものの、DDM Awardは当初、富士通内部における課題解決をテーマに据えた社内イベントとして始まっている。その背景には、富士通がDX企業への変革を目指す上で経営指針の重要な柱の1つである「データドリブン経営」の意識を社内向けに啓蒙・啓発する意図がある。
実際に同社でデータドリブン推進の指揮を執っている組織が「Data Analytics Center(以下、DAC)」だ。センター長を務める池田栄次氏は、「データドリブン経営を実践するためには、社員一人ひとりが職種や組織、自身がもつ知識や技能などの枠を超えて、自分ごととして捉えることが大切です。DACは、パイロット組織と連携したプロジェクトや部門のデータ利活用への伴走支援などを通じて、マインドやカルチャー、リテラシーの醸成、新技術の習得・組織展開、全社標準のレポーティングなどを実施してきました。その取り組みの中でDDM Awardは、データドリブン的な行動を起こした個人や組織、活動などを全社で表出・共有し、称賛し合う全社表彰としてスタートしています」と語る。

次ページからは、ベスト4に選出された4チームによるプレゼンテーション内容について、審査員の講評と共に紹介する。