
三菱UFJ銀行が「生成AI」の活用を進めている。法人顧客を抱える市場部門において、営業担当者向けに導入したところ、見込み顧客の獲得活動を10倍に拡大、コンバージョン率は30%改善するなどの効果が期待できることがわかった。Amazon Web Services(AWS)が2024年12月に米ラスベガスで開催した年次イベント「AWS re:Invent 2024」にて、同行の市場企画部 市場エンジニアリング室 上席調査役 堀金哲雄氏が話した。
膨大な資料、効率よく読み取れないか
三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)は、規制が厳しい金融業界にあって早期といえる2016年より、クラウドファースト戦略を掲げてきた。そこで手を組んだのはAWS、最初に提携したのは2017年のことだ。その後、2023年11月には生成AIと機械学習の活用などにも提携の範囲を広げている。
同グループ傘下の三菱UFJ銀行は、50ヵ国以上で事業を展開しており、個人顧客は3400万人、法人顧客は100万社を抱える日本最大の金融機関だ。その中で堀金氏が所属する市場部門は、法人顧客に金融商品を提供し、約2,000人の社員が従事している。
市場部門の営業担当は、法人顧客に為替や金利リスクヘッジを目的とした“市場性商品”の提案や販売を行っており、その特異性について次のように説明する。
「顧客は、金融リスクをコントロールしつつ本業に集中したいと思っている。それを満たす金融商品を提案することになるが、法人顧客の購入行動は異なる。個人顧客はレビューを見たり、プロモーションがあったりすることが購入の動機となるが、法人顧客はそうではない」(堀金氏)

AWS re:Inventでは、日本の金融機関として初めてセッションに登場した
法人顧客への営業は、顧客企業の経営戦略や市場環境、リスクになりうるものなどを理解し、最適な金融商品を提案するという活動になる。そのため営業担当者は、有価証券報告書などの資料を読み、顧客とさまざまな会話をしながら理解を深め、個々の状況にあわせた提案書を作成しているという。
そのような作業は顧客理解に必須ではあるものの時間がかかり、経験の有無に左右されるという点が課題だった。
そこで堀金氏らのチームは、以前から自動化を考えていたが、これまでのAIは非構造データの解読を得意としていなかった。そんな折に文書の要約や作成に優れた生成AIがブームに。AnthropicのLLMであるClaude「Sonnet 3.5」がAWSで使えるようになったこともあり、この技術を活用し、2024年7月に開発に着手した。
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末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)
フリーランスライター。二児の母。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。
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