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SAPジャパン、2025年度前年比17%増の売上で勢い維持 堀川嘉朗新社長「和魂洋才」掲げる

 SAPジャパンは3月26日、2026年ビジネス戦略に関する記者会見を開催した。2020年から6年間にわたり同社を牽引してきた代表取締役社長の鈴木洋史氏は3月31日に退任し、4月1日付で現常務執行役員 最高事業責任者の堀川嘉朗氏が代表取締役社長に就任することが既に発表されているが、会見には両氏がそろって出席。AIが実務レベルで効果を発揮するAIエージェント時代の到来を見据え、日本企業の強みである現場力と、グローバルの全体最適化手法を融合させるビジョンが提示された。

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(左から)SAPジャパン株式会社 常務執行役員 最高事業責任者  堀川嘉朗氏、

代表取締役社長  鈴木洋史氏

 会見の冒頭、鈴木氏は2025年度の業績を振り返り、グローバルでクラウド事業の勢いが継続していることを強調。現在のクラウドバックログは772億8800万ユーロに達し、前年比30%という高い成長を維持している。日本市場においても、総売上高は約15億6900万ユーロ(前年比17%増)を記録し、注力するクラウド売上高は前年比36%増と、グローバルの成長率を大きく上回る成果を達成したという。鈴木氏は自身の任期を振り返り、「クラウドとAIを軸とした戦略を一貫して推進し、クラウド売上高は就任時と比較して5年で約4倍に拡大した」と述べ、次なる成長段階に向けた強固な基盤が確立されたとの認識を示した。4月以降は、自ら変革を実行する立場へと軸足を移し、新たなキャリアに挑戦するという。

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 バトンを引き継ぐ堀川氏は、2013年にSAPジャパンに入社し、サービスサポート部門やクラウドサクセス部門の責任者を歴任し、顧客のプロジェクト導入に近い立場でビジネスを支えてきた。堀川氏は「AIとデータを活用し、日本企業の変革を成果につなげていく活動を、自身の経験を通して支えていきたい」と抱負を語る。2026年度のグローバル業績見通しについても、クラウド売上高で258億〜262億ユーロ(前年比23〜25%増)を見込んでおり、日本市場でもこの成長に準じる推測であるという。

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 2026年の戦略について堀川氏は、重要なキーワードとして「部門最適から全体最適への転換」を掲げる。日本企業は伝統的に現場のカイゼン活動が盛んに行われており、ボトムアップでの効率化に長けているとした。一方で、この「現場力の強さ」が、デジタル化の過程で各部門が独自のシステムを構築する「部門システム」の乱立を招いたと指摘。その結果、部門間をまたぐデータ連携は人間による手作業、いわゆる“Excelのバケツリレー”に頼らざるを得ない構造的なサイロ化が発生している。

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 この状況は、AIのビジネス活用において致命的な差を生む。堀川氏は「部門ごとに最適化されたデータでは、経営者がAIエージェントに『今月の売上はいくらか』と問いかけても、部門間で定義やタイミングが異なるため、正確な回答が得られず混乱を招く」と説明。対して、欧米企業は現場力が乏しかったからこそ、早期に全社統合システム(ERP)によるデータ一元化を進めてきた背景がある。AIの恩恵を最大限に受けるには、全社で「完全に統合された正確・詳細なデータ」を共有する基盤が必要不可欠であり、これこそがSAPが提唱する「全体最適」の真価であると強調した。

 SAPが展開するソリューション戦略は、アプリケーション、データ、AIの3層が互いに高め合う「フライホイール効果」に基づいている。業務プロセスを担うアプリから生み出されたデータを、AIが解析してインサイトを提供し、それが再び業務の意思決定や自動実行につながるサイクルを示した。

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 特に2026年は、文脈を理解して先回りして支援するAIエンゲージメントレイヤー「Joule」をすべての業務の入り口としていく方針だ。小売業を例にとれば、市場動向、生産、物流の各データをAIエージェントが横断的に分析し、適正在庫の維持を自律的に提案・実行することを目指す。この実現に向けた5つの重点領域として、責任あるAIの開発、25業種にわたる知見を組み込んだ業界特化型AI、非SAPシステムとも連携する「SAP Business Data Cloud」の強化、そしてAIを活用した導入支援ツール「統合型ツールチェーン」の拡充を挙げた。

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 堀川氏は新社長として、ビジョンに「和魂洋才でお客様の変革を支え、日本で最も信頼されるパートナーへ」を掲げる。日本企業が持つ現場の知恵やカイゼンの精神を尊重しつつ、グローバルの最新テクノロジーやプラクティスを融合させる考えだ。変革を成功させるためには、単なるシステムの入れ替えではなく、「人、組織、業務プロセス、データ、システム」という「五位一体」で取り組む必要があると説く。

 具体策の一つとして、次世代リーダーを育成する「COO塾」は開始から5年となり、延べ90社以上が参加。経営層が指名したリーダーが、自社の変革案を社長に直接プレゼンするこのプログラムは、IT部門だけでなく経営全体を巻き込んだ変革の成功モデルとなっているという。また、パートナー戦略においては、パートナー自らが販売から導入、活用までを一気通貫で担う自走モデルを拡大し、コンサルタント向けAI「Joule for Consultant」の提供を通じてプロジェクトの短期化と品質向上を支援する。

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 SAPジャパンは4月からの新体制で、これまでの「アプリケーションの会社」という枠を超え、AIとデータを企業の血流として循環させる「ビジネス変革の伴走者」としての地位をより強固なものにしていく考えだ。

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この記事の著者

小山 奨太(編集部)(コヤマ ショウタ)

EnterpriseZine編集部所属。製造小売業の情報システム部門で運用保守、DX推進などを経験。

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