アドビが年次イベントで明言した“コンテキスト重視”──AI完全自律に向けた「人との協働」4ステップ
「Adobe Summit 2026」Strategy Keynoteレポート
Adobe(以下、アドビ)は、米現地時間2026年4月20日から22日にかけて年次カンファレンス「Adobe Summit 2026」を開催した。AIをテーマに取り上げた初日のStrategy Keynoteでは、企業がAIエージェントを大規模展開するにあたって不可欠な要件に対し、アドビがどう応えようとしているか、テクノロジートレンドと共に説明された。
無駄なタスクをAIにやらせている? 企業におけるエージェンティックAIの現状
2024年から盛り上がった生成AIブームを皮切りに、ビジネスアプリケーションの中に組み込まれはじめたAIアシスタントは、質問への回答、メール作成、システムトラブルシューティング、画像生成など多くのユースケースにおいて活用が進んでいる。2025年に台頭したエージェンティックAIも日々存在感を高めつつある。
消費者(カスタマー)向けの領域に目を向けると、既に25%以上の消費者がAIエージェントを通して商品探索や情報収集を行っているというデータもある。AIは個人とブランドの接点としても無視できない存在になってきたといえるだろう。
一方、生産性向上にとどまらない高い投資対効果が求められるビジネス領域では、厳しい現状がある。費用対効果が見込まれるレベルで使い込むためには、組織全体で活用できる環境を整え、それを展開することが必須だが、多くの企業がここでつまずいているのだ。試験運用や局所的な成功事例は生まれているものの、タスクレベルでの利用にとどまっているのが実情である。
「AIをツールではなく、同僚として扱う」といったビジョンはよく聞かれるようになったが、その実現には多くの課題が残されている。Adobeでデジタルエクスペリエンス事業を担うスニル・メノン(Sunil Menon)氏は、AIエージェントが全社的展開に至らない背景の一つとして、「多くの企業が既存のビジネスプロセスを維持することを前提に、AIで自動化しようとしている」ことを指摘した。
多くの企業では、BPR(Business Process Re-engineering)プロジェクトなどを通して現状のビジネスプロセスを見直すなかで、現状維持では大きなビジネス成果が得られないことを認識しているはずだ。しかし、その手段としてAIを活用する場合、既存プロセスにある非効率な部分も含めて高速に処理されてしまう「非効率の増幅」という新たな問題が浮上してきた。これにより、既存業務プロセスの非効率性という根本にある問題の本質が見えにくくなっている。
また、業務に対する自動化の適性を見極めることも重要だ。組織のプロセスすべてが自動化に適したものとは限らない。自動化するとしても、例外的な処理や高度な判断が求められるケースを考慮する必要がある。このような点を考慮せずに現場主導で自動化を進めてしまった場合、システムにおける組織全体のメンテナンスコストは最適化されないだろう。
アドビに限らず、すべてのテクノロジーベンダーに今問われているのは、「AIを使ってより速く、より大きなビジネス成果を創出する具体的な方法は何か」ということだ。だからこそメノン氏が訴えるように、ベンダーはビジネスプロセスの再設計を支援すると同時に、データ品質の担保、コンテンツの一貫性、他者の権利保護、エージェントの稼働環境整備などといった問題解決の手段も同時に提供しなくてはならない。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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