メインフレームの重要性は今後も変わらない
メインフレームと聞くとレガシーなイメージを持たれるかもしれないが、その影響力は今も健在だ。キンドリルが2024年にグローバルで実施した「メインフレームモダナイゼーション状況調査」によると、調査対象500社のうち89%が「メインフレームは重要であり、今後も使い続ける」と回答した。また、「重要なミッションクリティカルなアプリケーションの56%がメインフレーム上で実行されている」と述べている。
「メインフレームは現在も重要であり、今後も存続します。特に日本市場では金融や保険などの重要なシステムの多くが現在もメインフレーム上で動いています」とキンドリルホールディングス コア エンタープライズ&zクラウド グローバル・プラクティス・リーダーのペトラ・グーダ氏は強調する。
同調査によると、96%が「一部のワークロードをメインフレームから移行する」と回答し、メインフレームで動いているワークロードの36%を移行しようとしていることもわかった。「企業の中でハイブリッドITが重要な課題になっている」とグーダ氏が指摘するように、メインフレームを中心に据えながらも、クラウドを取り入れた環境を構築する動きが増えているというのだ。
トレンドとなる生成AI活用とオブザーバビリティ
メインフレームを抱える企業において、課題となっているのは「AIの活用」である。
生成AIを含め、ここ数年AIは市場で大きなトレンドであり続けているが、それは決してメインフレームと無関係ではない。なぜならAIにはデータが必要であり、メインフレームは企業における重要なデータを大量に蓄積しているからだ。
実際に、こうしたデータを活用したいというニーズはメインフレームのモダナイゼーションを加速させる要因になっている。同調査では86%が「メインフレーム上で、またはメインフレームと共に生成AIツールやアプリケーションを導入、または計画中」と回答したという。
生成AIと共にもう1つトレンドとして上がったのが「可観測性(オブザーバビリティ)」だ。IT環境のハイブリッド化・複雑化が進むにつれてシステム監視の難易度は上がる。調査では、92%が「ハイブリッド環境の運用監視のために単一のダッシュボードが必要」と回答した。だが、85%はその実現を難しいと感じていることも明らかになっている。
なお、上述した動向や企業のニーズは日本のメインフレームユーザー企業でも大きな相違はない。グローバルと異なるトレンドとして、「日本では国産メインフレームベンダーの撤回発表もあったことから『メインフレームをなんとかしなくては』という大きな波が起きています」とキンドリルジャパン プラクティス事業本部 コアエンタープライズ& zCloud事業部長 理事の中尾友謙氏は説明する。
メインフレームモダナイゼーションの3つのアプローチ
メインフレームは引き続き重要であるという認識を踏まえると、メインフレームのモダナイゼーションはどのようなアプローチで挑むべきなのだろうか。
キンドリルは、ワークロードをメインフレーム上でモダナイゼーションする「Modernize on」、他のプラットフォームとメインフレームを統合可能にする「Integrate with」、メインフレームから一部あるいは完全に移行する「Move off」と3つのアプローチを提唱している。
「日本企業の特徴としては、これまではメインフレーム上にすべてを残すか、完全にメインフレームから移行するかと考えられることが多かった。現在では残すべきものを残すという考えで進める企業も増えています」と中尾氏は話す。メインフレームからの移行に関して製造業が先行し、現在は金融でもモダナイズの動きが活発になっているとのことだ。
これらのアプローチを考えるにあたり、企業が着目するべき観点がセキュリティ、コスト、データ活用の3つである。
1つ目のセキュリティについては、調査対象のうち3分の2(66%)が、メインフレームの提供する最も重要な機能としてセキュリティを挙げており、92%が規制要件への懸念に対する対応をメインフレームモダナイゼーション戦略に入れていることが調査でわかった。
「メインフレームはもともとセキュリティが高いプラットフォームですが、Modernize onでさらにセキュリティ強化対応を進めようというお客様が多いことを示唆しています」と中尾氏は説明する。
2つ目のコストについては、メインフレーム上のアプリケーションの使用量が増加してもソフトウェアコスト面でより最適化される環境へと変更していく動きがある。
3つ目のデータ活用のニーズは、中尾氏も「最近特に増えている」と強調する。単純にメインフレーム上のデータをコピーして分析基盤に載せることもできるが、データの「量」と「鮮度」を考えると、メインフレームとクラウド環境をシームレスに統合して使うことが求められているという。