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5ヵ国比較で見えた日本の“生成AI活用後れ”と3つの対策:効果を期待以上に出すためには──PwC調査

5ヵ国比較で見えてきた日本が遅れをとる要因

 三善氏は、5ヵ国比較の結果をまとめた図として下図を提示。図の左に示された「効果(生成AIの効果が期待をどれほど上回っているか)」「推進度(生成AIの活用をどの程度推進しているのか)」を5ヵ国で比較した結果に加え、生成AI活用に影響を及ぼすものとして「目的意識」「推進体制」「業務プロセス」「活用の土台」の4つの観点から比較した結果となっている。

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 これについて三善氏は「日本は、生成AIの推進度でいえば5ヵ国の中で平均的であるものの、その効果は感じられていない」ことを指摘し、目的意識/推進体制/業務プロセス/活用の土台の4つの観点において、ほぼすべての項目で最下位になっていることに言及した。国別に見た特徴は以下のとおり。

米国/英国

 生成AIを「業界構造を根本から変えるチャンス」と捉え、大きな可能性を抱いている割合が高い。加えて、ユースケースの種類や業務への組み込み、AIエージェントなどの整備、CAIOの配置、ガバナンスの整備など、多くの項目において満遍なく他国に先行している。

 また、両国とも法的拘束力が比較的弱い傾向にあることから、効果の表れ方について大きな差が生まれている。

中国

 推進度合いが5ヵ国で最も高いことから生成AI導入が積極的かつスピーディーに行われていることがうかがえる。効果については「期待を上回る」と感じる割合は米国/英国/ドイツに劣るものの、「期待通り」と答えた割合を含めると最も効果を創出していることが見て取れる。

 三善氏はこの背景について「米国の技術封鎖が中国の独自の技術革新を促進していることが一つの要因に挙げられる。国民の数が多いことや、中国発の高性能LLMが登場したことも影響しているだろう」と分析した。

ドイツ

 推進度が5ヵ国の中で最下位である一方、効果は米国や英国と同程度で表れている。これに対しては「ドイツは先進的な技術を取り入れるにあたって労使との事前協議が必要な場合も多い。結果として効果の高いユースケースが選定され、それだけが導入されるため、打率が高い傾向にあるのではないか」と推察する。

日本

 推進度が米国と同水準であるものの期待効果が最も低いという結果が示されている。特に、「社外向けのサービス」への活用割合が5ヵ国中で最下位(ドイツと同率)であり、生成AIの活用を自社ビジネスの効率化のためのツールとして捉える割合が最も高いことが分かるとした。ユースケースの種類、業務組み込み、AIエージェントなどの整備、CAIOの配置、ガバナンスの整備など、ほとんどの項目で最下位を記録している。

 三善氏は「日本も米国や英国と同じく、法的な規制や制度的支援に強制力がないため、成果が企業のリーダーシップや経営層の実行力に依存するところが大きいのではないか」と分析する。

 さらに、生成AIの導入を推進する部門についても日本と他国との間に差異が見られたとして下図を提示。日本は5つの部門ほぼすべてにおいて最下位となっており、導入体制について見直しが必要だと指摘した。特に「社長直轄」「CoE組織」が関与する割合が各国の半分以下の水準であり、経営のコミットメントや専門組織の活用において課題があることがうかがえるとした。

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5ヵ国に共通する成功要因

 各国で異なる傾向が見られたが、5ヵ国の間で期待以上の効果を出すための成功要因に共通項はあるのか。その答えを調査した結果が下図にまとめられている。三善氏は「これを踏まえると、小さな差異はあれど5ヵ国で生成AIの効果が期待を上回るための成功要因は概ね共通しているのではないか」と推察する。

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 唯一、日本独自の特徴が見られるものとして三善氏が挙げたのが「生成AIを活用する従業員の割合」。日本は、全従業員が生成AIを活用している企業の割合が5ヵ国の中でも突出して高い傾向が見られるとした。

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まとめ/提言

 同氏はここまでの調査結果を踏まえ、「生成AIの効果をより創出している企業は業務に生成AIを組み込んでいるため、効果も指数関数的に拡大する。結果として、期待通りの効果が出せない企業との差が日に日に大きくなってしまうことが懸念される」と警鐘を鳴らした。

 一方で、日本においても期待以上の効果を上げている企業がまったくいないわけではない。成功している企業は、米国で期待以上の効果を上げている企業と同様の目的意識や推進体制をもっていることを指摘する。そして、その取り組み方に共通するものとして三善氏は改めて以下のような要因を一例として挙げた。

  • 高い目標/期待設定
  • 経営直轄での推進
  • CAIOの設置
  • 抜本的な業務プロセスの改革/それを技術的に支援するAIエージェントの整備
  • ガバナンスの確保

 ここまでの結果を踏まえ、今後日本企業が生成AIの効果を上げるためにとりうるべき対応として「トップダウンの意思決定」「リスク回避文化の緩和」「高い目標設定」「変革マインドの醸成」を挙げる。しかし、「これらはどの国でも共通して長らく言われていることだ」とし、日本の特性を生かした対応として以下を提言した。

  • 個々の社員が責任感と自律性をもち、ジェネラリストとしての業務スキルを磨くこと
  • 社員全員が生成AIの活用を積極的に推進する姿勢とアプローチをもつこと
  • 現場の知識をもつミドルマネジメント層が戦略的意図を汲み、個人の成果を組織/企業レベルにまで昇華すること
調査概要
  • 調査実施時期
    • 日本:2025年2月19日~2月25日
    • 米国:2025年3月3日~3月18日
    • 中国:2025年3月3日~3月18日
    • 英国:2025年3月8日~3月18日
    • ドイツ:2025年3月4日~3月18日
  • 回答者数
    • 日本:945名
    • 米国:670名
    • 中国:512名
    • 英国:412名
    • ドイツ:103名
  • 調査方法
    • Web調査
  • 調査対象の条件
    • 各国の企業/組織に所属する従業員
    • 売上高500億円(日本円換算)以上
    • 課長職以上
    • AI導入に対して何らかの関与がある人物(意思決定、企画検討など)

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竹村 美沙希(編集部)(タケムラ ミサキ)

株式会社翔泳社 EnterpriseZine編集部

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