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2026年冬号(EnterpriseZine Press 2026 Winter)特集「AI時代こそ『攻めの経理・攻めのCFO』に転じる」

理想論で終わらせない「AIのためのデータ整備メソッド」

“場当たり的ETL連携”で絡まったデータ基盤を阻止せよ──「疎結合なAPI戦略」に導く実践3ステップ

第2回:IT部門が果たすべきは「安全な交通網」の提供? 理想と現実の比較で見つける“データの分断点”

3. データガバナンス構築:“攻めの活用”を支えるガードレールの実装

 計画的な都市開発のようにデータ統合基盤(幹線道路)を整備し、データが集まり始めました。しかし、道路ができただけでは誰もが安心して車(データ)を走らせることはできません。ルールなき道路は、たちまち大渋滞や事故(情報漏洩)を引き起こすからです。

 従来のガバナンスは、“データ活用を阻害するブレーキ”として捉えられがちでした。我々が目指すのは、安心してアクセルを踏むための「交通ルール」と「ガードレール」としてのガバナンスです。これは以下の3ステップで実現します。

ステップ1:主要な幹線道路に「交通ルール」を定める

 まず、すべての道路に同じルールを適用するのではなく、最初のAIプロジェクトで使う主要な幹線道路にスコープを絞り、最低限の交通ルールだけを定義します。

  • データセキュリティルール(守りのルール):事故を未然に防ぐための絶対的な防衛線。さながら「スクールゾーンでは徐行」や「歩行者天国への車両進入禁止」といったルールであり、「個人情報を含むデータはマスキングする」「機密情報は特定部門以外閲覧不可」などのルールを定める
  • データ共有ルール(攻めのルール):交通を円滑にし、活用を促進するためのルール。「バス専用レーン」や「緊急車両の通行許可」のように、「どの部署・役職が、どのデータに、どこまでアクセスできるか」というポリシーを明確にし、データ利用者が安心してデータを活用できる範囲を示す

ステップ2:交差点に「交通整理員」を配置する

 ルールブック(規程集)だけでは、刻々と変わる現場の交通状況には対応できません。現場をよく知る人物に、責任と権限を与えることが不可欠です。

 具体的には、データの発生源や利用の交差点となる業務部門から、そのデータの品質や意味に責任を持つ「交通整理員(データスチュワード)」を正式に任命します。IT部門は彼らと連携し、交通計画を練る「都市計画課」としての役割を担います。

ステップ3:「監視システムと標識」でルールを自動化する

 定めたルールを人の努力や性善説に頼るのではなく、テクノロジーで自動的に守られる仕組みを構築します。具体的には以下の手順で進めます。

  • データカタログで可視化:整備した交通ルールや交通整理員の連絡先を、誰もが見られる「道路標識」や「地図アプリの情報」としてデータカタログに明記する。これにより、ルールは形骸化せず、誰もがその意味を理解できる
  • APIゲートウェイで制御:「守りのルール」と「攻めのルール」を、「ETCゲート(APIゲートウェイ)」のシステムに登録する。これにより、権限のない車(不正アクセス)の進入はシステムが自動的にブロックできる
  • データ品質を自動監視:「荷崩れなどを起こしている危険なトラック(品質の低いデータ)」を自動検知する「監視カメラ」を設置し、問題があれば即座に交通整理員(データスチュワード)へ通知する仕組みを導入する

 データガバナンスとは、交通違反を取り締まる「警察活動」ではありません。交通ルールを定め、ガードレールや監視カメラを設置することで、すべてのドライバー(データ利用者)が「この道路は安全だ」と信頼し、安心して目的地へ向かえるようにするための、戦略的な「インフラ投資」なのです。IT部門は、この安全な交通網を提供する「道路公団」のような役割を担うことで、社内のデータ活用を加速させることができます。 

クリックすると拡大します

まとめ

 本稿では、業務・データ統合の実現アプローチを解説しました。まずは、CIOや責任者のリーダーシップのもとで部門最適の壁を越え、AI活用を見据えた「理想のデータフロー(設計図)」を描きます。その設計図に基づき、場当たり的な連携を止め、APIという「幹線道路」を軸としたデータ統合基盤を構築します。最後に、「交通ルールとガードレール」としてのデータガバナンスを整備し、誰もが安心してアクセルを踏める「信頼」という資産を築きます。

 次回(連載第3回)は、部門横断データの統合に続いて、価値が不明確な非構造・ビッグデータ(SNS、IoT、画像など)を「宝の山」に変えるアプローチを解説予定です。具体的には、生データの柔軟性と高信頼・高速分析を両立する「データレイクハウス」の構築、目的先行でAI/機械学習により知見を抽出する分析プロセス、そして生データを分析しやすい形式に変換するデータ加工の自動化といったテーマを取り上げます。部門横断データの“整備”から、非構造データの“活用価値創出”へと、データ利活用を次のステージへ押し上げるためのヒントを示します。

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理想論で終わらせない「AIのためのデータ整備メソッド」連載記事一覧
この記事の著者

前田 佑一郎(マエダ ユウイチロウ)

 合同会社デロイト トーマツのマネジャー。 データ連携基盤のアーキテクチャ設計、構築(開発リード)を専門とし、官民のデータ連携基盤導入に向けたコンサルティング経験を多数有する。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/article/detail/23942 2026/03/27 08:00

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