ヴイエムウェア(VMware)は2026年10月20日、年次イベント「VMware Explore Tokyo」の開催にともない、報道関係者向けの記者会見を開催した。会見前半ではユーザー企業3社を招いたパネルディスカッションが行われ、後半では同社幹部より最新技術アップデートおよび事業戦略が語られた。
会見冒頭、日本法人カントリーマネージャーの山内光氏は、最新のプライベートクラウド基盤である「VMware Cloud Foundation(VCF) 9.1」のアップデート状況を説明。グローバルならびに国内においてVCF 9.1の採用が順調に進んでいることを明かし、製造、金融、サービス、公共などミッションクリティカルなインフラ領域での導入が加速している点を強調した。
続いて実施されたカスタマーパネルディスカッションでは、山内氏のファシリテーションのもと、ユーザー企業3社が登壇しそれぞれの取り組みを語った。
まず、福岡ひびき信用金庫 システム部 調査役の宮地真之氏が登壇。同金庫では、SIerを挟まずに内製でシステムの構築・運用を行っており、vSphere 8 Update 3からの移行でVCF 9.1を採用した。宮地氏は、「少数精鋭の管理体制において、ライフサイクル管理やパッチ適用作業が一元管理・ローリングアップデート機能により効率化された」と語る。さらに、金融庁や日本銀行からのセキュリティ要請への対応として、パッチ適用までの空白期間を埋めるべく「vDefend」の分散IDS/IPSによる仮想パッチ機能を導入したり、ゼロトラスト実装などに向けた取り組みを進めたりしていると説明した。
次に、ラクス 開発本部 インフラ開発部 部長の永易健史氏が登壇。永易氏は、長年蓄積してきたVMwareの運用ナレッジを維持したまま、デプロイ速度向上などの課題を解決するためにコンテナ基盤「VMware Tanzu Kubernetes Grid(VKS)」を選定したと述べる。また、KubernetesのEOL周期の短さへ対応するためのVCFによる自動アップデート機能や、GrafanaやPrometheusといったOSSツールとの連携・標準化に今後の期待を寄せた。
最後に、TKC TKCクラウド運用センター クラウド共通基盤運用部の高田裕一氏が登壇した。同社は、数万を超える士業や1,150を超える地方自治体が利用するミッションクリティカルなシステムを支えるため、3,000〜4,000の仮想マシンを9名のメンバーで管理している。その中で、VMwareソリューションの拡充により、大規模環境の効率的な運用体制を構築しているという。また、長年の経験や勘に頼った運用から脱却し、ダッシュボードによるワークロードやトラフィックの可視化を進め、データに基づく運用へシフトしていると語った。
また、イベントの基調講演にはゲストとしてNTTドコモも登壇。1億人以上の会員を抱える「dポイントクラブ」や、主要事業を支える大規模基盤システム「サーカス(CIRCUS)」において、VMware Cloud Foundation(VCF)を中心とした仮想化基盤を運用していると語った。
現在、携帯通信事業に加え、映像ストリーミングなどのライフスタイル事業、決済や銀行などの金融事業を軸とした経済圏構想を推進している同社。これらの事業基盤を裏で支えているのが、24時間365日稼働を続ける基盤システム「サーカス」だ。
サーカスは、メッセージ処理(1日4億件超)、ユーザー認証(600万件)、ユーザープロファイル管理(1億件超)という主要な3機能を担っている。国内最大級の規模を誇り、決して止めることが許されない社会インフラとして位置付けられている。
同社は過去10年間にわたりVMwareと議論を重ねながらアーキテクチャの変革を進めてきた。最新アーキテクチャの中核にVCFを採用した結果、仮想化率は90%を超え、物理設備数は以前の半分以下へと削減されたという。
特に運用現場で評価されている機能は、障害時に1秒以内で切り替わる「VMotion」、物理ストレージの故障リスクを大幅に低減する「vSAN」、システムを停止させることなくセキュリティパッチを適用できる「ライブパッチ」だ。
また、インフラ全体の設計思想について、同社はパブリッククラウドとプライベートクラウドの双方にメリットがあるとし、ワークロードの特性や経済性に応じて使い分けるハイブリッドクラウド方針を掲げている。
同社はこれからの10年を「AIネイティブな時代」と位置付け、人とAI、あるいはAI同士が通信することでトランザクション数が従来と比べて急増すると予測する。6GやIOWN(アイオン)などの先進的なネットワーク技術、ならびにAIを活用したサーバー防御策を組み合わせ、次世代の社会課題解決に対応するシステム基盤を整備していく方針だ。
会見後半では、Broadcom VCF部門 最高製品責任者(CPO)のポール・ターナー(Paul Turner)氏が登壇し、今回の発表における主要な柱とセキュリティ戦略を詳細に解説した。ターナー氏はまず、56%のユーザーがAIオペレーションにおいてプライベートクラウドを好む傾向にあることを示し、ベアメタルからモデル構築までを担う「VMware AI Factory」の重要性を説いた。
その一環として、NVIDIA NeMo Tron、NECの「Cotomi」、中国ベンダーのモデル、Llama、Hugging Faceの小規模言語モデル(SLM)などへのサポートを拡張。また、AIによる攻撃の高度化に対応する、ゼロトラストを備えたAIエージェントや、エージェントレベルで権限を制御・保護する「Agent Minder」を紹介した。さらに、S3やNFSなどのデータソースをMCPサーバー経由で安全にエージェントへ供給する「Tanzu for Data」、PostgreSQLやValkeyなどのオープンソースパッケージに対し信頼性とセキュリティ保証を提供する「TruSource」なども紹介した。
セキュリティ面では、ESXi内で仮想パッチや多要素認証(MFA)を可能にする「HyperArmor」、ならびに「vDefend」や「VMware Live Recovery」を組み合わせた本質的なセキュリティ基盤の優位性を強調した。
次に、Broadcom インフラストラクチャソフトウェアグループ 社長であるラム・ヴェラガ(Ram Velaga)氏がブロードコムの事業戦略と投資方針について言及。ヴェラガ氏は、同社がソフトウェア事業の研究開発やサポートなどに年間50億ドル以上を投資していると説明した。また、同社のソフトウェアビジネスは「顧客のITインフラ支出を削減することで価値を提供し、対価を得る『ゼロ予算ビジネス』」に基づいているという。
コンピュート、ストレージ、ネットワークの仮想化を通じて顧客の費用削減に貢献してきた歴史を踏まえ、現在はハードウェア価格の高騰や調達リードタイムの長期化が深刻化していると指摘する。AIワークロードの増加で需要が高まる中、仮想化によって集約率を高めコストを制御できる同社ソリューションの優位性を訴え、市場で優れたプライベートクラウドソリューションを提供しつづける決意を示した。
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