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マイクロソフト北川さんとお話

ユーザー事例から遠く離れて

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データベース業界に、IT業界にいる皆さんなら、一度は読むか書くか出るか出てもらうかしたことがあるであろう、「ユーザー事例」。みんな大好きユーザー事例。しかし、このユーザー事例というのは、いったい、誰のために、何のためにあるのでしょうか。

 ―今日のテーマは「ユーザー事例」です。我々メディアもよく制作したりしますね。みなさん、好きですよね、ユーザー事例。みなさんというのは、メディアの人間の私はユーザーというより、ベンダーのみなさん、という意味ですが。

ユーザー事例につっかかる、今月の北川さん
ユーザー事例につっかかる、今月の北川さん

 北川:まず、ユーザーさんとしては投資をするので、よりよいものを買いたいという気持ちがあるわけですね。なんですけど、データベースにいいとかわるいとか、どちらが「優れているか」っていう優劣をつけるのは、むずかしいですよね。

 ―悪いデータベースなんてない!みたいな感じでしょうか。

 北川:たとえば、ある一社のデータベースが優れているといった場合、それは、ある基準を前提にした場合にのみ有効なんですよね。そして、その判断基準って、よく話をきいてみないとわからないもの。というか、ユーザー自身がよくわかっていないことがある。そうなると営業力なんですよ。x社も使っている。y社も使っている・・・

 ―そこで出てくるのが事例である、と。

 北川:事例。事例。事例。事例。なんでこんなにみんな事例が好きなんだ?と思いますね。ユーザー事例って、お客さんが選択した結果に過ぎない。どういう基準で、何で決断したかは個別具体じゃないですか。よく話になるのが、とても根源的な問題。つまり、「安心したい」という気持ちです。AかBの選択を迫られる。アカウンタビリティが発生する。Aを選んでトラブルが起きたとしましょう。そのとき、あそこもつかってる、ここも使ってる、とくれば、「うちは運が悪かった」で済む。どこもつかってなかったら、「なんでどこもつかってなかったのを使うんだよ!」となる。

 ―そういうものを担保するための事例なんですか?

 北川:もちろん、それだけじゃないですよ。事例として出せるいうことは、ユーザーと密なコミュニケーションが取れていることの表れ。良好な関係が持てるベンダー。それを見せたいという気持ちがある。それはわかるんです。でも、すべてシナリオ通りでしょう。

 ―まあ、そうですよね。作りこんでいく感じですよね。

 北川:話すことも決まっている。安心したい。安心させたい。口コミ文化ですよ。自社のシステムはこんなよかったってほめてる。いいエクスペリエンスがあったと思わせる。

 ―まあ、CMですよね。いいか悪いかさておき。

 北川:事例にいいことが書いてあるのは当然です。好き勝手な事例がないんですよね。シナリオに基づいたものに直される。事例のページの中だけだと、枚数が限られていることもあって、いいことだけになりがちで、技術的な肝ところはあまり実は入っていないんです。事例とは少々違う観点で、リファレンスというのがあって、これは、公には名前を公開しないけど、xxをやった顧客と話がしたいという別の顧客がいるときに、ミーティングとかアレンジして会ってもらうというようなことがありますね。アメリカ人なんかはこちらの方が好きだったりするみたいですよ。

―事例がCMのようになってしまうというのは、事例という存在の特性上、仕方がないことなのではないでしょうか。

 北川:そうですね。事例って悲しい星の下に生まれていますね。こうして、優劣の参考にされるわけですが、でも誰が参考にするんでしょうか?必要なのは判断基準なのに。

 ―その投資が効果的だったのかどうかは、個別具体の判断基準がないと測れない、ということでしょうか。

 北川:そうですよ、そうじゃないと、なにもアカウンタビリティを果たせない。たとえば、ノートPCを変えるとしましょう。個人の買い物であれば、そこにはいろいろな思いがあるでしょう?システムだってそうなんです。いろいろな思い、要望があるはずで、それを明らかにするためにはユーザー部門に話を聞くしかないんです。

 ―なるほど。他社の事例を読んでないで、自社のユーザー部門に話を聞けと。

 北川:高い買い物なんだから、そこは聞きましょう、聞いていきましょうよ!とりあえず、なにも聞かずにスタートするのはやめましょうと。いいものにしましょうよ。システムも成長しないといけない。あるシステムを7年間つかったことによって、ユーザーにも学んだこと、気づいたことがある。次も同じでいいのか。こうしたことを、ちゃんとユーザーに聞いているところがどれくらいあるでしょうか?

 ―確かに、私じしん、ユーザーとして聞かれたことないですね・・・うちの会社の話をしても仕方ないですけど。

 北川:新システム移行にあたって、認識って2つあるんです。まずは「システムの移行です」っていう場合と、「新しいプロジェクト」っていう場合。

 ―新しいプロジェクトであれば、ヒアリングもしますよね。

 北川:「これまでデータは夜中に処理して、朝になって見ればよかったけど、これからはそれじゃ対応できない」「地域のイベントと連動してみたい」「分析したい」―こうした声を元に考えていくと、次の分析は全社員ができるように、外部連携必要になるだろう。営業は全員できないとだめだろう。ひとりあたり50万円かかる。1000人いる。5億円?それはない・・・ってなった場合に、なかったことにするのか?それとも、プライオリティとして決めたんだから、「1000人に分析できる環境を与える」―まず、ここから考えるのか。だったら、Excelでやるほうがいいよね、となる。その観点でみれば、ExcelとSQL Serverって合うよね、となる。

 ―おお・・・。たしかに、こうなってくると、事例はまったく関係ないですね。

 北川:たとえば、携帯電話を買うときだって、自問自答するじゃないですか。俺は何がしたい?キャリアはどうする、つながるという観点か?ゲームがしたい?ネットがしたい?メールだけできればいい?僕の仕事は、データベースの観点で、だれかが「やりたいこと」「できること」を引き出すことなんです。やりたい処理をデータベースで支援したい。

 ―ところで、たとえば「データを分析したい」っていう要望があったときに、データベースベンダーに相談するか、BIベンダーに相談するかで、薦められるソリューションも違ってくるような気がします。

 北川:それはそうです。誰でもいいので、「何がしたい」と明確に伝えるといいと思うんです。データベースベンダーでもいいし、SIerでもいい。多分、SIerが、いちばんバランスよく答えてくれるんじゃないですかね。とにかく、簡単に実現するにはどうしたらいいかという観点で、運用、機能の特性に基づいて答えてくれるでしょう。そのためにRFPとかがあるんですね。

 ―RFP・・・提案依頼書というやつですね。次回以降のネタにとっておきましょう。今日はこれくらいで。ありがとうございました。

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この記事の著者

小泉 真由子(編集部)(コイズミ マユコ)

情報セキュリティ専門誌編集を経て、2006年翔泳社に入社。エンタープライズITをテーマにイベント・ウェブコンテンツなどの企画制作を担当。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/article/detail/4333 2012/11/12 00:00

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