齊藤愼仁氏が斬る“大手情シス”の実態──必要なのは情シスの「成功体験」が生み出す企業変革の好循環
IT技術を振りかざすのではなく、人間味のある仕事の仕方を

クラウド、DX、生成AI……新たな潮流が生まれるたびに飲み込まれる情報システム部門。企業にとって「求められる情シス」になるために今必要なことは何か。「真の企業価値は情報システムで決まる」と説き、情報システム部門へのコンサルティングを行うクラウドネイティブのCEOを務め、文部科学省の最高情報セキュリティアドバイザーとしても活動している齊藤愼仁氏に“情シスの極意”を訊いた。
「トイレ掃除でも何でもする」と、クラウドの世界へ
──はじめに、これまでの経歴を教えてください。
元々はハードウェアの領域に従事していました。ファームウェアをいじったり、BIOSを書き換えたり、マザーボードを作ったり、データセンターの構築もしたりしていましたね。
その後、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)の業界で仕事をしていた中で、AWSが開催したイベントに足を運んだのがクラウドの世界に入るきっかけとなりました。そこで展示ブースを出していた企業に「何も分からないですが面接させてください」といったメールを出して、「トイレ掃除でも何でもするので、働かせてもらえませんか」と入社したのがクラウドインテグレーターのアイレットでした。当時はまだ十数人の小さな企業でしたね。
アイレットに入社した当初は、AWSの再販を担当していました。ちょうど日本でもAWSの導入数が急激に伸びていて、アイレットも一気に社員を300人近く持つ企業へと成長しました。すぐに社員が入りきらなくなるので何度もオフィスを移転しており、社内インフラの整備もまったくと言っていいほど間に合っていませんでした。そこで、私が情シスを担当することになったのです。情シスは未経験でしたが、「トイレ掃除でも何でもする」と言って入社していますからね。そこから、情シスとしてのキャリアがスタートしました。

「情シスブログ」が反響を呼び、起業
──そこから何がきっかけでクラウドネイティブを創業し、情シスに向けたコンサルティングサービスを展開するに至ったのでしょうか。
情シスとしてセキュリティ対策や社内教育などを日々積み重ねているとノウハウが溜まってくるので、それを自らブログで発信していました。そのブログがきっかけで、「うちのネットワーク改善も手伝ってほしい」「こういうときの対策ってどうしたらいい?」など、様々な企業から声が掛かるようになったのです。
当時のアイレットはAWSの再販が主業だったこともあり、AWSに限らず自分のノウハウを提供できる場を作りたいという想いからクラウドネイティブを立ち上げました。その頃は有休を2週間ほど消化している期間だったので、起業するには良いタイミングでした。
──文部科学省の最高情報セキュリティアドバイザーも務められています。就任したきっかけは?
元々は、当時の文部科学省の担当者が私のブログを見て「文科省のインフラをどうにかしてほしい」と相談してくれたことがきっかけでした。その仕事はクラウドネイティブとして手掛けたのですが、文科省のインフラはデジタル大臣を務める河野太郎氏から表彰されるほど先進的なものに生まれ変わったのです。
その後、文科省の担当者が「齊藤さんと一緒に文科省を変えたい」と言ってくれました。それがきっかけで今も最高情報セキュリティアドバイザーを務めています。
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
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