今検討すべき「データアーキテクチャ」の条件、システムを構築してもデータ活用が進まない企業・担当者へ
【第4回】次世代データアーキテクチャ実現のために実施すべき事項

AIなど意思決定を支えるテクノロジーの急速な発展にともない、ビジネス環境の変化もますます早くなっている。この追従のためには、多種多様なデータが利活用できる状態に整備され、速やかに意思決定・対応できる状態(=アジリティ)が重要だ。そして、今後のデータアーキテクチャ像は、この条件を満たすことが必須となってきている。本稿では、現在の施策や組織の状態など加味し、どのような検討が必要なのか考察していきたい。
多種多様なデータによる意思決定が求められる時代に
前回の記事は以下からお読みいただけます。
総務省『情報通信白書令和5年版』によると「世界的にもデータトラヒック量は大幅に増加してきており、今後もさらに伸びていくことが予測されている。たとえば、エリクソン(スウェーデン)が2022年11月に公表した『Ericsson Mobility Report』では、世界全体におけるモバイル端末経由でのデータトラヒックは大幅に増加してきており、2022年末で約90エクサバイト/月に達し、2028年には約325エクサバイト/月に達すると予測されている」とされている。
また、電子情報技術産業協会(JEITA)2022年1月の発表によると、2030年の世界のデータ通信量は20年比15倍に増える見通しとされている[1]。このように通信インフラの高度化やデジタルサービスの普及・多様化とともにテキスト情報だけでなく、動画や画像、音声といった容量の大きなデータの取り扱いが増え、データ流通量は飛躍的に増大することが予測されている。
さらに昨今では、「マルチモーダルAI」といったテクノロジーの発展により、動画や画像、音声、テキストなど異なる情報を組み合わせて処理できるなど、意思決定を支援するテクノロジーも高度化しつつある。OpenAIの「GPT-4」では、文章に加えて複雑な数式や図などが含まれる大学レベルの物理学のテストを解けるようになってきており、他のAIサービスでも同様の機能を提供し始めるなど注目の高い分野だ。
このようにデータ量の増大と比例し、意思決定を支援するテクノロジーも向上する中、多種多様なデータからの“意思決定の精度”を高めなければならない時代にきている。競合他社に取り残されないためには、動画や画像、音声といった多種多様なデータを迅速に利活用できる状態にしておくことが必須であり、業務システムで生成されていた構造化データだけを想定しているならば、ビジネス環境の変化へ対応することは厳しいだろう。
[1] 「通信量、10年で15倍に」(2022年1月28日、日本経済新聞)
この記事は参考になりましたか?
- 「次世代データマネジメント」推進に向けたデータアーキテクチャを探る連載記事一覧
-
- 今検討すべき「データアーキテクチャ」の条件、システムを構築してもデータ活用が進まない企業・...
- 中央集権型データマネジメント VS 非中央集権型データマネジメント──自社に有効なのはどち...
- 「分散型のデータアーキテクチャ」がトレンドに──「EDW」の限界を前にデータアーキテクチャ...
- この記事の著者
-
小林 靖典(コバヤシ ヤスノリ)
株式会社クニエ シニアマネージャー
ITコンサルタントとして、システム企画、提案依頼書策定、要件定義分野から、データマネジメント/データガバナンス(データアーキテクチャ、MDM、データHUB、DL/DWH/BI、メタデータ管理、データ品質管理、データガバナンス組織構築、制度策定など)の分野で多数の実績を有...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア