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変革のためには“良い土壌”を整えることから──J.フロント リテイリング野村氏が奮闘した2年の成果

「データマネジメント2024」セッションレポート

 百貨店の大丸や松坂屋、ショッピングセンターのパルコを展開するJ.フロント リテイリング(以下、JFR)。2030年までに「DXコア人財1,000人育成」を掲げ、2022年から独自の「DX人財育成プログラム」でデータ活用が進む土壌づくりに力を入れている。2024年3月8日、日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)主催の「データマネジメント2024」にて、同社デジタル戦略統括部 執行役システム推進部長の野村泰一氏が、“仏を造って魂を入れる”DXの舞台裏を語った。

DX部門と人事部門が手を組み、人材育成を起点に

 DXにはデータ活用が不可欠と捉え、データ基盤やBIツールを整備する企業は多い。しかし、「基盤を作ったはいいが業務の役に立たない」「データ分析が社内に浸透しない」と行き詰まるケースも少なくないだろう。データ活用が進まない原因は一体どこにあるのか。JFRではまず、原動力となる人材育成にメスを入れることにした。

 非IT企業がDX人材を育成する場合、外部の教育機関や既製教材を活用し、統計学やBIツールの使い方といった汎用スキルを習得させるのが一般的。だがこの場合、個社ごとの事情や制約までは拾いきれず、「研修ではできたのに、会社に帰ったら思うようにできない」という事態に陥ることがある。そこでJFRは、野村氏が率いるデジタル戦略統括部と人的資本経営を推進する人事部門とがタッグを組み、教育と実務を融合させた「DX人財育成プログラム」を開始に踏み切った。

 まずは、JFRのDXに必要な人物像として、2つのコア人材を定義した。一つが「データアナリスト」だ。統計解析のナレッジをベースにデータを分析し、ビジネスレポートや施策の立案・評価などを行う。成長すると、AI活用にも踏み込んでいくようになるという。もう一つが「デジタルデザイナー」。こちらはビジネスとテクノロジー双方のナレッジを武器に、課題や戦略に沿ったビジネスデザインを担う。成長すると、横断的デザインや連続的デザインなども行えるようになることを見込む。

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 この2つの人材を育成するためにどのような教育を施すべきか、「マインド」「スキル」「ナレッジ」の面から徹底的に洗い出し、3ヵ月間の研修カリキュラムをほぼ内製で作り上げた。デジタルデザイナーに関しては、その後の2年間で100%内製を果たしているという。

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J.フロント リテイリング デジタル戦略統括部 執行役システム推進部長 野村泰一氏

(提供:JDMC)

“生きた教材”を使うことで成長を加速

 具体的な研修カリキュラムはこうだ。

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 共通して学ぶのは、マインド、ビジネスナレッジ、デザイン思考など。最初に学ぶマインドに関しては、世阿弥が能の奥義を記した『花伝書』(風姿花伝)をアレンジして『JFR花伝書』を作成した。「スピードが価値であることを忘れないようにしよう」「失敗を恐れず、行動したことを誇りに感じよう」といったDXの心得を叩き込む。

 データアナリストは、各店舗のデータを分析し、新たな示唆や課題に対する方向性を明示し、デジタルデザイナーは、現場観察やインタビューを通して解決策を導き出すなど、徹底して実務課題に即す設計にした。最後に成果発表と卒業式を行い、3ヵ月間の研修は終了するという流れだ。

 野村氏は「DX人財育成プログラム」を内製する一番のメリットとして、「店舗が持つ課題やデータなど、“生きた教材”を使って検証・分析ができること」を挙げる。卒業生は学びを各々の部門に持ち帰って実践するが、研修で使った環境は継続利用できるようにしている。実は、業務のためにデータマートを作るとなると、その理由や効果について詳しい説明が求められるのだが、「DX人財育成の教材として作りたい」と伝えると理解が得られやすいのだという。野村氏は、人材育成という大義名分を生かしてデータ基盤を充実させることで、着々とDXの土壌を固めているのだ。

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育成したDX人材が孤立しない環境づくり

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この記事の著者

酒井 真弓(サカイ マユミ)

ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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