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週刊DBオンライン 谷川耕一

アドビに訊く3rdパーティークッキー制限対応と「Personalization 2.0」

 ターゲティング広告が広く使われている。商品を検索したり、企業サイトに1度訪れたりするだけで、他サイトに移動しても同じ商品や企業の広告が表示され続けうんざりしている人も多いだろう。このターゲティング広告の多くで利用されているのが、3rdパーティークッキーだ。

高度なプライバシー保護と顧客コミュニケーションの両立

 上手く活用すれば効果的なターゲティング広告が実現できる3rdパーティークッキーだが、現状は利用が制限される方向だ。Appleは、WebブラウザのSafariに3rdパーティークッキーの働きを抑止するITP(Intelligent Tracking Prevention)機能を追加している。Googleも2022年から、3rdパーティークッキーの制限を開始する。「3rdパーティークッキーが制限されることで、サイト間での広告の連携が難しくなっています。結果、1stパーティーデータが重要となっています」と言うのは、アドビ株式会社 ソリューションコンサルティング本部 マネジャー 兼 プロダクト エバンジェリストの安西敬介氏だ。

 またコロナ禍で重要性が増しているのが、オムニチャネルでのコミュニケーションだ。人との接触を避けるためにオンラインで買い物をする機会が増えている。オンラインで商品を予約し、受け取りは店舗など新たな使い方も増えている。提供するどのチャネルでも、企業は消費者と一貫したコミュニケーションをとりたい。そのためには1stパーティーデータを、どう扱うかが改めて問われている。

 さまざまなチャネルでデジタル化が進む中、消費者からの顧客体験向上に対する期待値は高い。それに応えるための取り組みが「Personalization 2.0」だと安西氏は言う。Personalization 2.0は、次世代マーケティングの考え方として英国コンサルタント会社のEconsultancyが提唱したもので、ユーザー個人のプライバシーを犠牲にすることなく提供され、ユーザー自身が利用されるデータをコントロールできること。また個人を特定するデータを必要とせず、データを機械学習により予測しコンテクストに応じたリアルタイム性を持ったサービス提供を行えるようにすることだ。

 Personalization 2.0のアプローチに沿ってマーケティングを設計することで、企業は高度なプライバシー保護と顧客コミュニケーションを両立できる。「ポイントはクロスチャネルからオムニチャネル、それとリアルタイムなプロファイルの統合です。そして属性ではなく消費者の興味の管理が重要です」と安西氏。オムニチャネルでは、ブランドの中に複数のチャネルがあるのではなく、一貫したブランド体験としてさまざまなチャネルを捉える。Personalization 2.0では、クロスチャネルからオムニチャネルに変わる中で、どのようにパーソナル化を実現するかが鍵となる。

個人を特定せずに興味を明らかにして顧客とのコミュニケーションをとる

 これまではCRMのアプローチで、属性情報を集め360度ビューを実現するのが顧客の解像度を上げることだった。対してPersonalization 2.0では「顧客のニーズが分かれば良く、そのために顧客の背景、コンテクストの解像度を上げます」と安西氏は説明する。行動の背景の解像度を上げ、興味のデータを得る。得られたデータに機械学習を適用して予測し、興味を明らかにする。顧客のプロファイル情報は、予測を補完するために使うことになる。

 Personalization 2.0のプラットフォームでは、顧客の興味データをいかに集めるかが重要だ。個人を特定する情報を極力利用せずにコミュニケーションを実現する中で、興味やコンテクストを推測するために行動データ(Intent Data)を活用する。行動やユースケースなどの特定イベントが発生した際のコミュニケーションを設計し、それをリアルタイムに実施できる仕組みも必要だ。

 またチャネルやシステムに応じ、顧客から了承を得た範囲でデータの利用と管理もできなければならない。そしてAIや機械学習の活用で、個人情報を利用せずにコンテクストを類推する精度を向上させ、最適なコミュニケーションを実現する。これらに対応し顧客体験管理(Customer Experience Management:CXM)を実現するのが、Adobe Experience Platformになる。

 AdobeではAdobe Experience CloudとしてMarketing Cloud、Analytics Cloud、Advertising Cloud、Commerce Cloudの4つを提供している。これらを支えるApplication ServicesとIntelligent Servicesのレイヤーがあり、ここにはCustomer Journey Analytics、Real-time CDP(Customer Data Platform)、Journey Orchestration、Offer Decisioningの4つがある。さらに下にはAdobe Experience Platformがある。

[クリックして拡大]

 ServiceレイヤーのCustomer Journey Analyticsは、オムニチャネルの顧客行動を可視化する。Adobe Analyticsではこれまでオンラインのデータのみを対象としていたが、Customer Journey Analyticsでは全てのデータを統合し時系列に並べ、Adobe Analyticsと同じUIでオムニチャネルでの顧客行動の可視化を実現する。

 Real-time CDPはPlatformに蓄積されたデータを使い、さまざまな接続先ツールと連携して顧客データを活用できるようにする。これはCDPにリアルタイム性を持たせたものと言える。Journey Orchestrationは次に何が起きたらどういうコミュニケーションをとるかなどを設計できる。店舗に来たことをきっかけに、インタラクティブにプッシュ通知のコミュニケーションをとるなどのジャーニー設計が可能だ。

 Offer Decisioningは、2020年に発表された機能だ。Personalization 2.0を実現する上でマーケティングオートメーション・ツールやWebサイトのパーソナライズド・ツールなどを個別に設定するのではなく、誰にいつ何をどのような方法で提供するかを一括管理する。「企業内に点在するさまざまなマーケティングテクノロジー・ツールを最適化し、統合できるものとなっています」と安西氏は言う。

次のページ
3rdパーティークッキーが使えない中でどのようなアプローチができるか

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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