富士通と和歌山県立医科大学は、富士通独自のAI技術「行動分析技術 Actlyzer(アクトライザー)」を活用した見守り技術を用いて、転倒などの状況を早期に発見し骨折などの重症化リスクの低減を目指す共同実証実験を開始したと発表した。
全日本病院協会によれば、国内18病院において、2021年度は1ヵ月あたり290件の入院患者の転倒が発生したとのこと。高齢者の転倒は重大な障がいにつながるリスクが高く、見守りが必要な一方で、病室などにカメラを設置する見守り技術は患者のプライバシーを損なう観点から導入が難しい側面があるという。
そこで両者は、上記の課題解決に向けて、カメラを使わないプライバシーを配慮した見守り技術を用いて、病院などにおける高齢者の転倒などの状態を早期に発見し、適切な対応を迅速に行うことで骨折などの重症化リスクを低減させる実証実験を共同で実施する。
両者は実際の病院などの施設において、被験者として高齢な患者や要介護者に協力者を募り、実証実験を実施。室内に設置したミリ波センサーから患者の姿勢を点群データとして収集し、富士通の見守り技術により転倒や転倒につながる動作を検知した結果について、ベッド周りに設置されている離床センサーのログや実証実験用に設置したカメラ映像などと比較する。これにより、適切に検知できているかどうかなどの有効性評価と改善を行うとのことだ。
富士通側は、ミリ波センサーから収集した点群データをもとに転倒や転倒につながる動作特有の身体の動きを分析。点群データは電波の照射と対象人物からの反射で取得されるため、カメラ映像と異なり個人を特定する情報を含まず、プライバシーに配慮した見守りが可能となっている。
和歌山県立医科大学は、富士通の分析結果を医療現場の知見を用いて技術評価し、富士通はその評価結果に基づき見守り技術のさらなる改善を行い、2023年度末までに病院などの施設向けにプライバシーに配慮した見守り技術のサービス化を目指すとしている。
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