“触れない”基幹系データをAIへ レガシーを残しながらも「次世代データ連携基盤」を構築する術とは
複雑化する金融システムの課題と対策──4社の視点から “最適解”を探る:セゾンテクノロジーの視点
膨大な量のデータを日々処理する金融システムは、社会インフラとして高い堅牢性や安全性が求められる。それと同時に「生成AI」の台頭を背景として、ミッションクリティカルなシステムから発生するデータを活用した業務効率化、新サービスの開発などにも期待が寄せられている状況だ。そうした中、データの安全性を担保しつつ活用を促進するためには、どのような要件が必要とされるのか。これまで「HULFT」をはじめ、数多くの金融機関にデータ連携ソリューションを提供してきたセゾンテクノロジーの福泊晶氏と、EnterpriseZine編集長 岡本が語り合った。
「生成AI」の台頭 データ活用も次のフェーズに
岡本(EnterpriseZine編集長):かつての金融機関、特に特定社会基盤事業者に位置づけられるような企業は、先進技術の導入にかなり慎重でした。しかし、近年では「金融DX」という言葉がもてはやされている通り、クラウドやAI技術などの導入にも積極的に取り組んでいます。生成AIが台頭して以降、そうした傾向はより強まっているように見えます。
福泊晶氏(以下、福泊):たしかに金融業界は規制産業であり、他の業界と比べても、システムには高い安全性や安定性が求められています。その一方、おっしゃる通り生成AIが出てきてからは、「より積極的にデータを活用していこう」という機運がかなり高まっていると思います。システムに求められる要件も、決して“重厚長大”の一辺倒ではなくなってきていますね。
岡本:これまでも機械学習を用いたデータ活用などは、比較的盛んに行われてきた印象を抱いています。生成AIの登場で、金融機関のAI活用にはどのような変化が見られますか。
福泊:機械学習をベースとしたAIと生成AIでは、同じAI技術でありながらも、活用方法に大きく違いがあると感じています。機械学習による独自の予測モデルを構築するためには、どうしても専門的な知見が必要となるため、一部の技術者しか扱うことができませんでした。
一方、生成AIは自然言語で利用できるため、非技術者とAIの距離が一気に縮まりました。技術者だけでなく、いろいろな立場の人たちが「AIありき」で物事を考えるようになったと思います。
岡本:そうした新たな潮流が生まれている一方、多くの金融機関は長らく重厚長大なレガシーシステムを運用しつづけており、生成AIのような新しい技術を十分に活用するためには、システムのモダナイゼーションは避けて通れないようにも思います。しかし実際にはメガバンクをはじめ、多くの企業が“脱レガシー”にかなり苦労しているようです。
福泊:モダナイゼーションや脱レガシーといった課題は、多くの金融機関にとって今も昔も大きな課題であることには変わらないでしょう。ただし、基幹系や勘定系などのシステムによるデータをAIで活用するには、必ずしもシステムを抜本的に刷新する必要はありません。これまで長年にわたり安定稼働してきたシステムに手を入れることには、一定のリスクがともないますから、できるだけ手を入れずに“データだけ”を安全に利用できれば問題ないわけです。
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吉村 哲樹(ヨシムラ テツキ)
早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。その後、外資系ソフトウェアベンダーでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
提供:サイオステクノロジー株式会社
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