SAP Aribaを5.5ヵ月で導入したNIPPON EXPRESS 鍵は「現場の声は聞かない」覚悟
国内59社/グローバル約60社への展開支えたDAP「WalkMe」

NIPPON EXPRESSホールディングス(以下、NIPPON EXPRESS)は、「グローバル市場で存在感を持つロジスティクスカンパニー」という長期ビジョンの実現に向け、“経営プラットフォームの高度化”を推進している。その一環として「SAP Ariba」を活用した請求書払いに関するプロセス・ルールの標準化とガバナンス強化を進めた。国内グループ59社へ展開するこの取り組みは、通常なら1年はかかる。それをわずか5.5ヵ月という「常識破り」なスピードで完了させた。成功の鍵は、「Fit to Standard」の方針による業務プロセスの標準化、効果的なチェンジマネジメント、そしてDAPを活用した「使いながら改善する」という独自のアプローチにあった。
経営基盤強化の鍵「Fit to Standard」の徹底
NIPPON EXPRESSは、2022年にホールディングス制へと移行したことで国際会計基準(国際財務報告基準:IFRS)への移行、税務ガバナンスの強化、そしてSAP S/4HANAの導入によるグローバルな財務基盤強化を図ってきた。これら経営基盤の強化は、経理部門主導のプロジェクトとして推進され、企業運営の効率化とグローバル競争力の向上を目標に、経理業務の標準化とERPの活用による“見える化”が進められている。
プロジェクトの主要な狙いは、国内だけでなくグローバル全体での支出管理業務とシステムの標準化だ。同社 日下昌彦氏は、日本国内にとどまらずグローバル企業を目指す上で、IFRSへの対応、今後の買収戦略などを視野に入れると「グローバルで統一された経営基盤が必要だった」と語る。

この目標を達成するためにSAP S/4 HANA、そしてSAP Aribaの導入を決めた。その際、徹底したのが「Fit to Standard」という方針だ。Fit to Standardとは、既存の業務プロセスをシステムにあわせるアプローチを指す。IT部門出身ではない経理部門の日下氏は、この方針を素直に受け入れながら、推進したことがポイントだと語る。
現場の声を聞いてしまえば、個別の要望になるべく応えようとしてしまうだろう。そうなれば調整に時間がかかり、要望を実現するには手間も時間もかかる。今回のプロジェクトでは、Fit to Standardを原則とした上で、あえて現場との詳細なすり合わせは行わずに進められた。そのため当初は、新しいシステムに対して現場から抵抗もあったという。一方、新たに導入したERPパッケージの仕組みは、リモート環境でも柔軟に利用できることから「働き方改革」という副次的な効果をもたらした。これが結果的にユーザーの受容性を高めることにつながったとする。

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また、今回の経営基盤強化の取り組みにおいて、決算時期を3月から12月に変更し、IFRSに移行することも、グローバル展開を見据えた重要な施策だった。国内のグループ会社は数が多いものの、対応すべき法対応は限られるため導入を進めやすいと判断。まずは日本から経理システムの刷新を進めていった。日下氏はこのアプローチを「大坂の陣」に例え、外堀から埋めるように小規模な会社から着手したと説明する。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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