ソフトウェア開発に訪れる“豊穣の時代”、自律型開発「Devin」はClaude Codeと何が違う?
Cognition AI 共同創業者 ラッセル・カプラン氏/日本法人 代表 正井拓己氏
自律型ソフトウェアエンジニア「Devin」で知られるCognition AIが日本法人を設立。それと同時に2026年4月9日に開催されたイベント「Merge: Tokyo」に合わせ、共同創業者のラッセル・カプラン氏が来日した。2024年のリリースと同時に衝撃を以て迎えられたDevinだが、ソフトウェア開発やモダナイゼーションの常識は今後どう変わっていくのか。また、Claude Codeをはじめ様々なAIコーディングツールが台頭する中で、Cognition AIはどのような価値観と独自性を武器に戦っていくのか。カプラン氏と、日本法人の代表に就任した正井拓己氏にインタビューを行った。
ソフトウェアの「豊穣の時代」、エンジニアに役割はあるのか?
初の完全自律型「AIソフトウェアエンジニア」として世界中のエンジニアに衝撃を与えたDevin。かつて、ソフトウェア開発は専門的で習得が難しいスキルだった。プログラミング言語や特定の構文を学んだ者だけが踏み入ることを許された世界だった。Cognition AI(以下、Cognition)の創業メンバーであるラッセル・カプラン氏も、「12歳で初めてJavaScriptを学び始めた時には、そのプログラムがなぜ動くのか、あるいは動かないのか、そもそも理解をすることに多大な時間と苦労を費やしたものだ」とかつてを振り返る。
しかし、コパイロットの登場によるタブ補完、CLIやエージェント型IDE(統合開発環境)の登場、さらにはDevinのような自律型ソフトウェア開発AIエージェントの出現で、世界の常識は大きく変わった。
「今後、ソフトウェアは『水』同然の存在になる」とカプラン氏は予測する。かつての専門的な手段ではなく、同僚と一緒に働くのと同じくらい簡単かつ自然に、ソフトウェアを作れるようになるというのだ。同氏は、これをソフトウェアの「豊穣の時代」と呼ぶ。
ソフトウェアを作成することが容易になれば、エンジニア不足から一転、今度はソフトウェアの量が指数関数的に増えていくというのが順当な流れだ。では、エンジニアはお役御免になってしまうのか……。同氏は、既にエンジニアが「コーディング・エージェントの『マネージャー』」のような存在になりつつあるという現状を指摘した。何を作るのか決めるのはエンジニアだが、実行や実装はAIが自動で行う。Cognitionで働くエンジニアも、もはや自分でコードをタイピングしていないとのことだ。
この現実を踏まえた上で、エンジニアに求められるスキルは何か。まずは、システムの全体像・アーキテクチャを捉え、考え、理解し、細部に踏み込む能力と意欲だ。これは引き続き重要なスキルになるという。
次に重要となるのは、「デリゲーション(委譲)」の能力だとカプラン氏。プロジェクト全体を複数のピースに分解し、それらを適切なAIエージェントたちに並列して割り当てる能力である。
そしてもう一つ、同氏が挙げるのは「コミュニケーションとユーザーへの共感」だ。この能力自体は以前から重要視されてはきたが、一人ひとりがフルスタックの能力を獲得する時代が訪れ、エンジニアやプロダクトマネージャー、デザイナーといった役割ごとの境界線が曖昧になってくると、すべての技術者にとってより必須のスキルとなるだろう。
加えて、そのような世界が訪れた際には、個人の主体性、つまり何を作るか決定し、それを最後までやり遂げる推進力を有しているかが、エンジニアの差別化ポイントになる。
米国の次に「Devin」が普及したのは、意外にも日本だった
エンジニアという職業の将来性については様々な議論や賛否があるものの、日本では驚くべきスピードでDevinによるソフトウェア開発の自動化が浸透している。これまでは最新テクノロジーの実装で遅れがちだった我が国だが、Cognitionが2024年にDevinをリリースした際、本拠地である米国を除いてもっとも同製品が急速に普及していったのは、意外にも日本だった。
こうした背景も後押しし、2026年4月にCognitionは日本法人(Cognition AI Japan)を設立した。日本法人を率いるのは正井拓己氏だ。IBMやMicrosoft、Workdayの日本法人で要職を歴任し、直近ではDatadog日本法人で代表を務めていたほか、西海岸のスタートアップの立ち上げに携わった経験も持つ。
正井氏は、日本で特に深刻となっている内製化のリソース不足やデジタル人材育成の遅れに対し、Devinが有効な解決策になるとの考えを示した。たとえば、レガシーシステムのモダナイゼーションにおいては、既に日本のエンタープライズ企業でもDevinが使われ始めている。システムの中に大量に存在する既存のレガシーコードも、ひとたびAIが理解すれば、そこからどんどん自動でモダナイズが進んでいくのだ。前任者やシステムの構築者が遺した、レガシーコードや技術的負債からも解き放たれる。
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティとAI(人工知能)関連を中心に、国内外の最新技術やルールメイキング動向を取材しているほか、DX推進や、企業財務・IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。武蔵大学 経済学部 経済学科 卒業。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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