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日本IBMがAIコンテキスト基盤「ALSEA(アリーシア)」発表、仕様駆動開発で大規模プロジェクト開発の工数35%削減を目指す

写真 (左より)日本アイ・ビー・エム株式会社 執行役員コンサルティング事業本部 インダストリーサービス&デリバリー統括 高橋 聡氏/同 執行役員技術戦略 テクニカルリーダーシップ担当 副CTO 早川 勝氏

 日本IBMは2026年4月14日、エンタープライズ向け大規模システム開発に特化したAIコンテキスト標準ソリューション「ALSEA(AI Lifecycle Shared Engineering Artifacts:アリーシア)」を発表し、先行プロジェクト向けの提供を同日より開始した。AIエージェント「IBM Bob」とALSEAを組み合わせることで、仕様駆動開発を大規模プロジェクトに本格適用し、2027年以降に工数35%削減・期間30%短縮を目標に掲げる。

図(出典:日本IBM) [画像クリックで拡大]

 日本IBMは2024年から「AI for IT(IT変革のためのAIソリューション)」を体系化し、コード生成、テスト自動化、IT運用高度化、プロジェクト管理の各フェーズをカバーするソリューション群を整備してきた。今年3月には全開発関係者が使えるAIエージェント「IBM Bob」の一般提供を開始し、社内では7万人以上が活用しているという。

 個々の開発者レベルで広まるAI活用は、何百人・何千人規模で数年かけて進むミッションクリティカルなプロジェクトとなると別の壁に直面する。執行役員コンサルティング事業本部インダストリーサービス&デリバリー統括の高橋聡氏は「大規模なエンタープライズ向けプロジェクトに本当に全面的にAIを適用できるのか──この問いに答えるためにALSEAを開発した。業界全体を通じても、エンタープライズ向けに大規模な仕様駆動開発を適用しようとする試みはおそらく初めてではないか」と語った。

図(出典:日本IBM) [画像クリックで拡大]

 エージェント開発における重要ポイントは「コンテキスト」にあるという。人間が主体の開発では、設計書に抜け漏れがあっても技術者が行間を読んで補完し、複数の設計書に矛盾があれば過去の会議録やメール、口頭指示といった暗黙知を動員して解消に動く。しかしAIにそれは通じない。「誤ったコンテキストでAIに指示を与えると、異なる前提に基づく大量の成果物が出力される。それを人間がレビューし修正するだけで膨大なワークロードが生じる」と高橋氏は説明する。

 ALSEAは、日本IBMが長年のエンタープライズ開発で蓄積してきた標準プロセス、成果物テンプレート、ルール、ガイド、カスタムコマンド(プロンプト)を、IBM Bobが参照・活用できる「コンテキスト標準基盤」として体系化したソリューションだ。IBM Bobがコンテキストに基づく指示を受けて設計書・プログラムコード・テスト成果物を生成し、人間はレビューと判断に集中する構造を実現する。

 記者発表では、副CTO兼執行役員技術戦略テクニカルリーダーシップ担当の早川勝氏が、分散システム新規開発を題材に比較デモを実施した。コンテキストなしのIBM Bob単体では、外部設計で巨大な単一ファイルが生成されて分業が困難になること、バックエンドにエンタープライズ標準のJavaが選択されないこと、トランザクション特性が設計段階で考慮されないことが明示された。

図(出典:日本IBM) [画像クリックで拡大]

 ALSEA適用後は状況が一変する。機能要件は機能ごとに適切な粒度でファイル分割され、技術スタックはAngular/TypeScript+Spring Boot/Java+AWSマネージドサービスの組み合わせが自動的に採用された。画面仕様はHTMLベースのレイアウト付きで出力され、トランザクション境界や推奨設定も設計書に盛り込まれた。現時点でALSEAが提供するドキュメントはテンプレート・ガイド・コマンドを合わせてPM向け・開発者向け計170点以上。要件定義からシステムテストまで全工程をカバーし、個社ルールへのカスタマイズにも対応する。

 「ALSEAがなければ、どれほど高性能なLLMを使っても、エンタープライズの大規模システムで35%工数削減・30%期間短縮のような定量効果を得ることはほぼ不可能だ」と高橋氏は述べた。

図(出典:日本IBM) [画像クリックで拡大]

 日本IBMはALSEAを「2025年の崖」対応の文脈でも位置づける。長年の運用でドキュメントとソースコードが乖離し、内容を理解できる技術者が減少し続けるレガシーシステムの問題は、IBM BobとALSEAによって「AIが主体」の開発・保守サイクルが実現することで段階的に解消されると見る。開発者のインターフェースがプログラミング言語からAIツールへ移行すれば、COBOLやRPGといった言語知識がなくてもシステムを保守できる状況が生まれる。

 「レガシーシステムを渋々クラウド移行する経営判断を迫られるのではなく、基幹システムを経営戦略に合わせてアップデートし続ける戦略資産に変えられる」と高橋氏は展望を示した。

 一般提供の開始は2026年下期を予定。先行プロジェクトでの知見を積み上げながら、2027年以降の定量効果目標の実現を目指す。

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この記事の著者

京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...

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