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「第3のパラダイム」へ移行するセキュリティ業界──チェック・ポイントも自律化・統合で応える

 AIの普及により、誰でも低コストかつ高度な専門知識を必要とせずにサイバー攻撃が可能となった今日……。その規模やスピードも、これまでとは比較にならないレベルに達している。

【左】Check Point Software Technologies Limited CISO(Chief Information Security Officer), APAC ジャヤント・デイブ(Jayant Dave)氏/【右】チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ株式会社 ⽇本法⼈社⻑ 佐賀⽂宣氏

【左】Check Point Software Technologies Limited CISO(Chief Information Security Officer), APAC ジャヤント・デイブ(Jayant Dave)氏

【右】チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ株式会社 ⽇本法⼈社⻑ 佐賀⽂宣氏

 攻撃者は、数千~数万回の攻撃のうち、1回でも成功すれば利益を得られてしまう。よって、特に凝った施策を張り巡らせるのではなく、AIで攻撃を自動化し、労力をかけずに飽和攻撃を仕掛けるだけで十分というのが現状だ。対して防御側は、その数千~数万という攻撃一つひとつに対し、真剣に相手をして守り続けなければならない。この非対称戦を、従来のように人手による人海戦術で乗り越えるのは不可能だ。

 チェック・ポイントがリリースした『AIセキュリティレポート 2026』では、攻撃の巧妙化や自動化、生成AIの普及による脅威トレンドの変化について指摘されている。

  • AIが攻撃の単なる「支援ツール」から自律的な「実行者」へと進化している
  • ディープフェイクの進化や、言語の壁の崩壊により、メールやプロフィール写真、オンライン会議での映像など、本物と偽物の見分けがいよいよ困難になってきている
  • 脆弱性の発見から悪用まで数日を要していたのが、今や数時間へと短縮
  • 情報システム部門が従来から守ってきたIT環境やAIモデルそのものだけでなく、MCPサーバーや開発環境、入力・出力、メモリ、権限、設定ファイル、モバイルサーバー、APIキー、スキルパッケージに至るまで、守るべき範囲が急拡大している
  • 企業におけるデータ漏えいの多くは、外部からの攻撃ではなく日常的なAI利用の中で発生している

など

 また、昨今ではMythosの登場を皮切りに急速な発展を遂げているフロンティアAIモデルによる脅威に対抗する術も模索していかなければならない。これに対しチェック・ポイントは、「Frontier AI Models Readiness Program(フロンティアAIモデル・レディネス・プログラム」という取り組みを展開している。端的に言えば、フロンティアAIを悪用した攻撃者のマシンスピードに対抗すべく、防御側も最先端のAIモデルを用いて「攻撃者よりも先に脆弱性のスキャン・検査、修正、対策を適用し続けよう」という取り組みだ。

 このプログラムの中核を成すのが、「BLAST(Business Logic Application Security Testing)」という独自のテストシステムである。最先端のAIモデルを活用し、同社の製品やコードを常に大規模にテスト・分析するツールだ。ただ脆弱性を発見して報告するのではなく、その脆弱性が「実際に攻撃される可能性はどれほどか」「攻撃された場合に、どのような情報が盗まれるか」などを科学的に見極め、優先順位をつけて効率的に修正するところまでを半自動的に遂行するという。なお、活用するAIモデルは特定のテック企業やベンダーに依存するのではなく、場面やユースケースに応じて最適なAIモデルを取り入れているとのことだ。

 セキュリティは「第3のパラダイム」へと移行している──同社の日本法人で代表を務める佐賀文宣氏は、第1のパラダイムを「境界型防御の時代」、第2のパラダイムを「ゼロトラストの時代」とし、現在我々が迎えている第3のパラダイムを「自律型防衛の時代」と位置づけた。人はポリシーの定義やコマンダー役を担い、セキュリティ専用のAIシステムがそれに基づいてマシンスピードで自律実行する時代である。マシンスピードの攻撃に対抗することはもちろんのこと、社内で高速かつ縦横無尽に動き回るAIをリアルタイムで監視・制御・保護するためにも、「自律型のセキュリティ運用なしでは追いつけない」というのが今日のセキュリティ業界における共通認識だ。

 ただし、AI時代だからといって防御側も最新のAI技術にばかり囚われるのではなく、あくまでも最新の防御手法と、これまでも重要だった基本的な対策を両輪で実践することが重要だと佐賀氏。IT資産の把握や脆弱性の地道な修復、権限付与を必要最小限にとどめることの徹底、多要素認証(MFA)、機能するバックアップと事後対策、社内教育とリテラシー向上……。こういった土台を蔑ろにしたまま最新のAIツールを導入しても、期待通りの効果は得られない。

 とはいえ、地に足の着いた基本対策は欠かせないものの、その運用方法は効率化できる。たとえば、IT資産は四半期や年に1回の定期確認ではなく、今やリアルタイムで継続的な把握と監視が可能だ。また、パッチの適用もより短期間で、優先度の高いものから適用できるようになった。正規パッチの適用に時間がかかる場合には、仮想パッチで対応すればよい。

 佐賀氏は、AI駆動型環境が企業でも実装可能になったことで、新たに実践せねばならなくなったセキュリティの新常識を以下の5つにまとめた。

  1. 自律型セキュリティ運用:防御側にもマシンスピードを実装。ただし、製品を導入して安心するのではなく、最新の攻撃を本当に止められるのか、継続的に検証する
  2. 自ら学び、進化し続ける防御システム:AIによる学習と、それに基づいた自律的なパッチ生成が可能に。月1回などではなく、必要に応じて毎日でもパッチを即時適用する
  3. 監視から「修復ファースト」へのシフト:脆弱性を発見したら、監視するのではなく自動で修復・実対処まで完遂する
  4. 大規模なエクスポージャー(露出)の自動管理:大規模な露出も、自動化によりマシンスピードの脅威に追従できる管理環境を構築可能に
  5. セキュリティ専用のAIモデルを導入:汎用AIではなく、攻撃・防御の手法、脆弱性、ネットワークの仕組みなどを深く理解したセキュリティ専用のAIを活用する

 ここまで述べたようなパラダイムシフトに対し、チェック・ポイントは現在①ハイブリッドメッシュ・ネットワークセキュリティ②ワークスペースセキュリティ③エクスポージャーマネジメント④AIセキュリティの重点4領域でソリューションを提供しているが、製品において自律化を進め、運用の統合に向けた開発を進めているところだという。

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この記事の著者

名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)

サイバーセキュリティとAI(人工知能)関連を中心に、ソフトウェア/ハードウェアを問わず国内・海外の最新技術やルールメイキング動向を取材。そのほか、DX推進、企業財務・IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。武蔵大学 経済学部 経済学科 卒業。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/news/detail/24797 2026/08/03 13:20

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