ITプロジェクトの成功率は100%ではなく、現にたくさんの失敗やそれを巡る紛争が後を絶えません。プロジェクト失敗の原因がベンダー側にある場合、損害の賠償責任はベンダーが負うのが一般的です。しかし、小規模で資力の乏しいベンダーの場合、賠償金を支払えないというケースが発生します。こうなると、ユーザー側としては泣き寝入りするしかないのでしょうか……。今回は、そんな裁判の事例を取り上げます。これは決して珍しいことではありません。
プロジェクト失敗の損害を賠償できないベンダー
情報システムの開発がベンダー側の責任で失敗した場合、そこで発生した様々な損害の賠償責任はベンダーが負うのが一般的です。しかし、ベンダーに十分な資力がなく、賠償金を支払いたくても支払えないケースがあります。私も裁判所の調停委員・専門委員を務めていた頃に遭遇したことがあります。これは決して稀有な例ではなく、小さなベンダーが大きなシステムの開発を請け負えば、当然そうしたリスクはあるわけです。
そして、巨額の賠償が発生してベンダー側が支払えないといった場合、もちろん裁判所からは分割払いなどの提案は行われますが、会社の資産を売り払っても支払いは足りないし、金融機関からお金を借りようにも信用枠が足りず無理という事態になります。システム開発を発注したユーザー側からすれば、「自分たちは何一つ悪くないのに巨額の出費を回収できずに終わってしまう」という、到底納得しかねる結果を受け入れざるを得ない可能性もあるのです。
こうした事態は、プロジェクトが始まってから防げるものではありません。開発が始まった後にどれだけ丁寧に進捗管理をしても、そもそも受注時点で無理な話であったなら、遅かれ早かれ破綻するからです。むしろ、安全にプロジェクトを進められるかどうかは、契約書に押印するその前の段階、つまり受注する側が「この契約は本当に履行できるのか」をどこまで見極めていたかにかかっています。
今回紹介するのは、その受注可否の判断そのものが問われた裁判の事例です。もちろん、この解説は法律や法廷戦略そのものを解説するわけではありません。しかし、ベンダー企業の役員という立場の人間が受注の可否を判断する際、どのような責任を負っているのかを知ることは、発注者・受注者の双方が契約の入口で何を確認し合うべきかを考える上で参考になるでしょう。
まずは事件の概要から紹介します。
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細川義洋(ホソカワヨシヒロ)
ITプロセスコンサルタント
経済産業省デジタル統括アドバイザー兼最高情報セキュリティアドバイザ
元東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員
筑波大学大学院修了(法学修士)日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステム...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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