Oracleは米国時間2026年9月29日、業務アプリケーション群「Oracle Fusion Cloud Applications」上で動くエージェント型アプリケーション「Fusion Agentic Applications」向けに、新たな実行基盤「Oracle Fusion Claw」を発表した。計画はフロンティアモデルのLLMが担い、実行は決定論的な計算処理で行う。大量のデータや多くの制約条件をともなう複雑な業務を、ガバナンスの枠内で自律的に完遂させるとしている。同日から、Fusion Clawを搭載した25のエージェント型アプリケーションを提供している。
発表に合わせて、Fusion AI製品管理担当グループ・バイスプレジデントのカウシャル・クラパティ氏がオンラインで製品の位置付けとデモを紹介した。クラパティ氏はFusion Clawを「エンタープライズアプリケーションの次の時代を開くもの」と表現した。
Oracleはこれまで、単体のAIエージェントから、監督役のエージェントが指揮するエージェントチーム、決定論的な実行を担うワークフローエージェントへと段階的に機能を広げてきた。2026年初めには、特定のビジネス成果の達成を目的に複数のエージェントチームを調整する「Agentic Applications」を発表している。今回のFusion Clawは、このAgentic Applicationsに組み込む実行レイヤーという位置付けとなる。
クラパティ氏は背景として、仕事の進め方そのものの変化を挙げた。従来のエンタープライズアプリケーションでは、人が画面から画面へ、ワークフローからワークフローへと移りながら作業を進め、システムは指示されたことだけを実行してきた。同氏は「LLMによって推論できるようになったシステムが仕事の大部分を担い、人は引き続き責任と説明責任を負う。そうした形に仕事が再定義されつつある」と語る。
その際も、記録システム(System of Record)がなくなるわけではないという。同氏は、企業データや業務の状態、ポリシー、権限、承認、トランザクションの信頼できる基盤として記録システムの重要性はむしろ高まると説明したうえで、「記録システムを置き換えるのではなく、成果創出システム(System of Outcomes)へと“拡張”する。この言葉が重要だ」と強調した。
Agentic Applicationsでは、人が業務目標と達成すべき成果、ポリシーや権限、意思決定のポイントを定める。アプリケーション側は業務上のシグナルを観察し、分析・計画・実行・測定を行い、成果が出るまでこのループを繰り返す。ただ、このループのなかでも、膨大なデータを扱い、多くの業務上の制約やルールを守る必要がある高付加価値の業務については、自律的に処理するための新たなレイヤーが必要だったという。
クラパティ氏によれば、Fusion Clawは新しいアプリケーションではなく、Agentic Applicationsと密に連携して動くレイヤーだという。対象として想定するのは、長時間にわたる多段階のプロセスで、計算負荷が高く状況が動的に変わる業務だという。調査、シナリオのモデル化、シミュレーション、制約条件下での最適化、目標未達時の再計画などを組み合わせて問題を解く。
動作モードは2つある。ディープ・リサーチのモードでは、目的を理解したうえでシナリオをモデル化し、制約を考慮して複数の選択肢を提示する。どの選択肢を採るかは人が判断する。一方、十分な権限を与えれば、ポリシーと権限の範囲内で最適な計画を選んで実行する完全自動実行(Full Auto)のモードで動作する。権限が与えられていない場合は、ユーザーの判断を待って次の意思決定に移る。
セキュリティ面では、Fusion Clawはエージェント型アプリケーションのコンテキストの中でしか動作しない設計をとる。ジョブやタスクが起動するたびに分離されたプライベートなランタイムコンテナを立ち上げ、Codexのようなオーケストレーションエージェントが計画を立てる。コンテナは外部へのアクセス手段を持たず、Agentic Application内のエージェントを通じてのみ作業を実行する。クラパティ氏は「設計の段階から安全性と封じ込めを確保している」と述べた。
統制の仕組みとして、組織の目標、標準業務手順、ポリシー、権限、リスクしきい値、承認要件、エスカレーションの境界などを含む「Enterprise Operating Envelope」を適用する。これを「Outcome Trust Harness」を通じて、アイデンティティ、機能、データ、アクションの単位で実行ごとに適用する。完了後には、適用された権限や使用したエビデンス、意思決定、実行したトランザクション、結果を記録した監査可能な「Outcome Receipt」が発行される。
経済性については、計画と実行の役割を切り分けている。計画には、クラパティ氏が例として挙げた「GPT-5.5」や「Gemini 3.5 Flash」などのモデルを使い、目的の理解と計画の策定を行うことも可能。一方、計画に沿った大規模な計算処理は決定論的に実行し、この段階ではLLMを呼び出さない。さらに実行のたびに結果を蓄積し、どの手順がうまくいき、どれが失敗したかを学習する。同氏は「似た問題が再び発生したときに効率よく計画でき、LLMの実行コストも抑えられる」と説明した。
2026年初めに注目を集めたオープンソースのAIエージェント「OpenClaw」との名称の類似について、クラパティ氏は、OpenClawの考え方から着想を得たことは認めつつ、そのコードは利用もフォークもしていないと説明した。「OpenClawは何でも実行できてしまう危険性があった。Fusion Clawは、タスクごとに個別のコンテナが立ち上がり、問題を解いて消える。インターネットにはアクセスできず、ロールベースアクセス制御(RBAC)で統制されたエージェント型アプリケーションの中でのみ動く」と述べた。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZine/AIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...
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