富士ソフトは2026年9月29日、同社が推進する成長戦略「富士ソフト Gen.2」の一環として、製造業の課題解決を目指す「スマート工場オファリング」の体系化および本格展開に関する事業戦略説明会を開催した。
説明会では、日本の製造業を取り巻く4つの構造変化と、それに対応する同社グループ全体の取り組みが提示された。代表取締役社長執行役員兼CEOの室岡光浩氏は、製造業の就業者数が2002年の1202万人から2025年には1033万人へと約14.1%(約172万人)減少する実態や、設備の老朽化、サプライチェーン全体でデータ連携ができている企業が5%未満にとどまる現状を指摘。そのうえで「採用や残業で補う従来モデルは限界を迎えており、工場単体の改善では対応しきれない経営課題だ。人、設備、データ、サプライチェーンをつなぐ全体最適が不可欠である」と指摘した。
そこで同社は、CAEやPLM分野で4,500社以上の実績を持つグループ会社のサイバネットシステムとの連携により、製品開発から現場運用までのプロセスをシームレスに支援する体制を構築。
分断されたシステムを「デジタルスレッド」で垂直・水平に連結し、AIの役割を「つなぐ」「活かす」「動かす」の3つに整理した上で、①設計・生産準備のデジタル化、②製造実行・現場管理の高度化、③設備・製造工程の自動化(レトロフィット対応含む)、④データ統合・活用という4つのオファリングを展開する。
オファリングの詳細を解説した常務執行役員で組込/制御ビジネスユニット長兼インダストリー事業本部長の大石崇人氏は、フィジカルAIの社会実装に向け、産業用ロボット国内販売最大手のダイドーとの協業による「フィジカルAIスタートパッケージ」を2026年10月13日に提供開始することや、主要半導体ベンダーとの連携によるマルチベンダー対応のエッジAI基盤開発を推進することを明らかにした。デモ環境の構成やアーキテクチャを担当した常務執行役員でエリア事業本部長の南川勝氏は、CADやPLMから製造実行システム(MES)へデータが一貫して流れる構造や、現場で蓄積されたデータを設計に還流させるPDCAサイクルの重要性を説いた。
今回の発表において注目すべき点は、稼働中の既存工場の設備を活かして実装することと、サイバネットシステムとのシナジーだ。
常務執行役員 Group Management 担当 兼 サイバネットシステム 代表取締役 社長執行役員の白石善治氏は、基幹システムから現場へのデータ連携やデータ前処理における課題について、「従来のSIerは基幹システムから入るアプローチが多かったが、設計領域や製造領域との間に壁が存在していた。設計の強みを持つサイバネットシステムと、現場のシステム構築力や製造技術、運用力を持つ富士ソフトが組み合わさることで、サイロ化されたデータをAIで活用可能な共通言語へ整理整頓し、インテグレーションして工場へ持ち込むことができる。紙情報や図面などのアナログ情報をデジタルへ起こすサービスも含め、お客様のコンディションに合わせて最適な型を提供していく」と自社の果たす役割と強みを語った。
また室岡氏は、製造業向け事業の現状と展望について「当社の製造業向けビジネスは全体売上の約3割を占めており、2030年に2兆円規模へ拡大すると見込まれる工場デジタル化市場において、10%以上の確実な成長を目指す」と意気込んだ。導入期間やコストの課題に対しては大石氏は、成功パターンを型化したオファリングを適用することで従来よりも期間短縮が可能になると説明した。
最後に室岡氏は、データのサイロ化やITとOTの分断という課題に対し「CXOなどの経営層にデジタルスレッド構築のメリットを正しく理解してもらい、既存工場を止めることなく進化させることが我々の使命だ。PoCで終わらせず、成果が生まれ使い続けられる実装パートナーとして伴走していく」と述べ、日本のものづくりの持続的な競争力向上に貢献する姿勢を示して締めくくった。
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小山 奨太(編集部)(コヤマ ショウタ)
EnterpriseZine編集部所属。製造小売業の情報システム部門で運用保守、DX推進などを経験。
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