これまでは、財務会計の考え方を中心に、新規事業の計数計画をどう関連付けるのかを考えてきました。今回からは、会計のもう1つの分野である管理会計の考え方を使って、計数計画にどう活用するのかを掘り下げていきたいと思います。管理会計の入り口にあるのが、損益分岐点分析です。ビジネス・モデル・キャンバスとも密接な関係があります。事業計画に必要な基本データを手に入れるために重要です。わかりやすい説明を心がけますので、初めての人も安心して読んでください。
損益分岐点分析を行う3つの目的とは?
損益分岐点分析は、利益がゼロとなる売上高(損益分岐点の売上高)を把握し、利益を生み出すにはどうしたらいいのか考える「管理会計」の代表的な手法です。損益計算書の分析の範囲に入るため、財務分析の体系では、収益性分析に分類されます。利益がゼロになる売上高や販売数量を損益分岐点と呼んでいます。
損益分岐点分析を行う目的を整理すると3つに分類することができます(新しい用語が頻出しますが、初めての人は、読み流して、全体像をつかんでください)。
1つ目は、部門や会社の「収益体質」を知ること
収益体質とは、利益を生み出す売上高(経営安全額)とその出方(限界利益率)のことです。過去データ分析でも事業計画でも、この2つのキーワード情報を得ることで、利益を生むための方向性が見えてきます。経営安全額や限界利益率は、会社単位はもちろんですが、部単位、プロジェク単位など利益管理を必要とする単位でとらえれば、計画も具体的に浮かび上がります(具体的には別な回で説明します)。
2つ目は、迅速な対応と意思決定のために活用される
たとえば、販売数量の増減が、利益の増減にどのくらい影響するか事前にシミュレーションできる(これを感度分析という)ため、利益などの着地点を推測することができます。売上高だけを見て、利益がどのくらい出るかも判断できるのです。売上高の管理が中心の営業現場で活用すれば役に立ちますよ。
たとえば実績売上高が150になっているとします。損益分岐点の売上高が100で、限界利益率40%であるなら、利益は、(150-100)×40%で20と推計できます。なぜこのように算出できるかは、この後の事例で説明します。推計利益20と目標利益を比較し、不足していれば、その差を埋める対策を検討して、早い対応が可能です。
3つ目は、利益計画(損益計画)のための基礎データを得ることができる
目標売上高、目標総人件費、重点商品・サービスの決定など、短期(次期)の利益計画に必要な基礎データを得ることができます。これらのデータを組み合わせて、次期の予算策定や、新規事業計画まで、幅広く利用できます。
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千賀 秀信(センガ ヒデノブ)
公認会計士、税理士専門の情報処理サービス業・株式会社TKC(東証1部)で、財務会計、経営管理などのシステム開発、営業、広報、教育などを担当。18年間勤務後、1997年にマネジメント能力開発研究所を設立し、企業経営と計数を結びつけた独自のマネジメント能力開発プログラムを構築。「わかりやすさと具体性」という点で、多くの企業担当者や受講生からよい評価を受けている。研修、コンサルティング、執筆などで活躍中。日本能率協...
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