最近よく耳にするIT業界用語に「ソフトウェア・デファインド・なんとか」というのがある。もちろんもっとも有名なのはSoftware Defined Network(SDN)というやつだ。えいやーでこれを説明すると、高価で高度なネットワーク機器を導入するのではなく、汎用的なネットワーク装置とソフトウェアを組み合わせ、仮想的に高度なネットワーク環境を作り上げてしまうというものだ。
ソフトウェア・デファインド・なんとか
サーバーの仮想化は、いまや当たり前になりつつある。一説によれは、80%の企業が導入しているか導入を検討中。ネットワークの仮想化もSDNで加速中。ストレージの仮想化も進みつつあると言うのが、EMC。それを加速するために、5月に行われたEMC Worldで発表したのがViPRだ。これは、Software Defined Storageを実現するソフトウェア。これを使ってストレージを仮想化することで、抽象化しプール化して、自動化で個々のストレージハードウェアの限界を気にせずに運用管理の手間も軽減化できる。

EMC 山野 修代表取締役社長
EMCでは、これまでも高性能なストレージシステムに、ストレージ仮想化の機能を持たせていた。その高性能ストレージに階層的に自社ストレージやサードパーティーのストレージを接続し、あたかもアプリケーションからは高性能なストレージが1つあるだけに見えるようにするというもの。データは、その重要性に応じて自動的に各ストレージ配置される。この場合は、あくまでも主役は高性能なストレージ、Software Definedではない。
今回発表されたViPRは、完全にソフトウェアだけで提供されるストレージの仮想化ソリューションだ。利用できるストレージは、EMCのVMAX、VNX、Isilonといった製品群はもちろん、サードパーティー製品、さらにはデバイスドライバーなどを用意すれば普通のディスクドライブも可能。構成としては、ViPRが動くサーバーが用意され、そこで各ストレージのプロファイルなどのメタデータが管理される。アプリケーションは、一旦この管理サーバーにアクセスするが、実際のデータのやりとりはストレージとアプリケーションが直接行うので、パフォーマンス劣化の心配などはない。この仕組みを実現するために、アプリケーションサーバー側にはなんらかエージェントのような仕組みは入ってくることになる。
今回のポイントは、ソフトウェアだけでストレージの仮想化を実現するというところ。これにより、既存のリソース投資も保護されることに。そしてEMCが強調するのが、オープンであること。自社の製品で垂直統合するのではなく選択肢を提供する。このViPRは、今年の後半に製品化の予定。EMCとしては、今回だいぶ力が入っているようなので、ちょっと期待という感じだ。
ところで、この「ソフトウェア・デファインド・なんとか」については、IBMも黙っていない。先日、Software Defined Environment(SDE)というコンセプトの発表を行った。このSDEを構成するのが、サーバーリソースを仮想化するSoftware Defined Compute、ストレージのSoftware Defined Storage、そしてSDNの3つ。IBMの特長は、世の中のアプリケーションのワークロードに注目し、ワークロードをデータベーストランザクション、アナリティクス、ビジネスアプリケーション、Webコラボレーションにわけ、それぞれをSoftware Definedで最適化するというところ。
IBMも、このSoftware Definedで主張するのが「オープン」だ。これにより、クラウドベンダーのロックインから解放するのだと言う。そのためにもオープンソースのコミュニティーには、積極的に関与し貢献していくとのことだ。クラウドやビッグデータほど流行ることはないだろうけれど、ここしばらく「ソフトウェア・デファインド・なんとか」は、新顔も含めよくよく目にすることになりそうな予感がする。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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