2019年2月12日、昨年までは米国ラスベガスで開催していたIBMの年次カンファレンス「IBM Think 2019」が、リニューアルした米国サンフランシスコ モスコーン・コンベンションセンターで開幕した。今回のイベントでは、マルチクラウド、ハイブリッドクラウドが大きな話題だ。またAIを本格的にエンタープライズビジネスの中で活用することにも、フォーカスが当たっている。
クラウドの第二章が始まった

「企業が競争優位性を得るためにはデータが鍵になります」と語るのは、基調講演に登壇したIBM Chairman PresidentでCEOのジニー・ロメッティ氏だ。またクラウドについては第二章が始まり、マルチクラウド、ハイブリッドクラウド時代の始まりに立っている状況だと主張する。この新しいクラウドの時代に必要となるのが信頼性だ。信頼性の高いクラウド環境をIBMでは責任を持って提供していく。
既存の基幹系システムで動いているようなアプリケーションは、このクラウドの第二章の中でクラウド化していくことになる。それらはミッションクリティカルなアプリケーションであり、結果的には全てをパブリッククラウドに移行するのではなく多くの企業はハイブリッドクラウドの形で運用するようになる。
「そういったアプリケーションの40%はプライベートクラウドに置き、残り60%はパブリッククラウドに置くことになるでしょう。つまり第二章のクラウドは、ハイブリッドクラウドでありその上でマルチクラウドになるのです」とロメッティ氏。実際、欧州などでは多くの銀行がIBMのプライベートクラウドをミッションクリティカルなシステムのために使うようになっているという。
さらにクラウドについては、ハイブリッドであることだけでなくオープンであることも重要となる。このことが、IBMがRed Hatの買収を決めた理由でもある。Red HatのCEO ジム・ホワイトハースト氏によれば、ユーザーが主導する形でイノベーションが起きている。Googleなどの超大型のデータセンターでデータ処理していたところから、副産物としてさまざまなオープンソース・ソフトウェアが生まれている。それをRed Hatではエンタープライズ向けにして提供している。Kubernetesもそんな副産物の1つだ。

Kubernetesは、オープンソースになってからも素晴らしい開発が続いている。かつてはステートフルなアプリケーションは載せられなかったが、今はそれも可能となっている。とはいえ、現状では全てのアプリケーションがKubernetesに載るわけではなく、10%位のものはまだ載っていない。これに対して一貫した形のセキュリティ対策を行うことで、IBMとしては残りの載せられない10%のギャップを埋めていくとロメッティ氏。ホワイトハースト氏も、今後はミッションクリティカルのものをコンテナやKubernetesでどう利用していくかが鍵となると語る。これを実現する将来の部分を、IBMとRed Hatでは一緒に行っていく。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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