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ものづくり老舗企業ミスミが挑む製造業DX AIによる部品見積りを自動化する「meviy」とは

ミスミグループ本社 吉田 光伸氏に訊く、日本初のものづくりプラットフォーム

 ミスミが2016年から提供を始めている機械部品調達サービス「meviy(メヴィー)」は、自社開発のAI技術によりCADデータをアップロードすると自動的に見積もりと納期を表示する「ものづくりプラットフォーム」だ。ミスミグループ本社の吉田光伸常務に話を訊いた。

日本初のものづくりプラットフォームとして世界トップを目指す

株式会社ミスミグループ本社 常務執行役員 ID企業体社長

 「自社のことながら、プロダクトの力が強いと自信を持っている。ものづくりプラットフォームとして、グローバルでナンバーワンのシェア獲得を目指す」。そう力強く話すのは、機械部品メーカー大手であるミスミグループ本社の吉田光伸常務だ。同社が2016年から提供を始めている“図面レス”な機械部品調達サービス「meviy(メヴィー)」は、2021年から本格的に海外展開を始めるという。業界の常識でもあった図面作成を省くことで、人手不足に苦しむ製造業のDXを加速させるという。

 ミスミは機械メーカー向けに部品のカタログ販売をするメーカーだ。3,300万点を超える商品を取り扱い、長さや太さのバリエーションを含めると扱う部品点数のバリエーションは800垓(垓=1兆の1億倍)にも及ぶ。機械業界では知らない人は居ない老舗企業だ。

 meviyは、ミスミが2016年から提供を始めている新サービスだ。その機能は、3D-CADの部品データをアップロードするとAI(人工知能)が自動で金額と納期を表示するというもの。ブラウザー上で完結する部品調達のクラウドサービスで、主要なCADソフトを使っていれば誰でも使える。サービス名の由来は、無限を表す企業のモチーフとも言われるメビウスの輪から来ている。800垓ものバリエーションを超える、無限の部品に対応するサービスということだ。

AIが自動で見積もりする部品調達サービス「meviy」[クリックして拡大]

 meviyの機能説明はシンプルだが、それを実現するのは簡単なことではない。CADデータはソフトによって形式が異なるし、金額や納期を見積もるにはどんな加工が必要かをデータから自動で判断しなければならないからだ。それ故に、機械部品の業界では「未だに紙の図面が主流」(吉田氏)だ。図面をFAXで複数社に送る相見積もりの文化が根強く、それが業界の課題でもあった。

 「製造業の人手不足は、総労働時間の不足に直結する。中でも、紙図面の文化が残る『調達』の工程が時間不足の3重苦になっている」と吉田氏は語る。部品情報を図面に書き直す作図の時間、見積もりの依頼を各部品ごと各社に送る時間、見積もり結果や納品までの待ち時間という、3重もの時間によって、機械製造の領域では生産性向上が難しかったという。例えば部品点数1500個の機械として概算すれば、図面1枚に30分、FAX1通送信に1分かかるとして775時間もかかる。見積もり待ちに1週間、納品に2週間かかれば、部品の調達には合計で1000時間もかかることになる。

部品調達の図面作成、見積もり、納品待ちに多大な時間がかかっていた[クリックして拡大]

軒並み断られた開発スタート、世界中のコンセプトを探り実現

 meviyの開発プロジェクトが立ち上がったのは2013年のことだ。CADデータから自動見積もりするAIを搭載したサービスのコンセプトはこの時点で決まっていた。が、「RFP(提案依頼書)を送ったが、国内の主要なIT企業には軒並み断られた」(吉田氏)という。実現が難しいと判断されたようだ。

 しかし、吉田氏は諦めなかった。「大抵のことはソフトウェアで実現できると信じていた。どこかにコンセプトを実現できる技術があると考え、とにかく世界中を訪ねて回った」という。

 各地でサービスのコンセプトを伝え、議論をし、企業や人を紹介してもらいながら必要な技術を探していったという。そうやってプロジェクト開始から3年が経った2016年、各社に開発依頼を断られたサービス「meviy」はついに提供開始に至ったのだ。

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800垓の受注生産ノウハウ

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この記事の著者

広田 望(ヒロタ ノゾム)

物書き、工学学士(応用化学)、理学博士(物理学)
日経BPに入社し、日経コンピュータ記者や日経ビジネス記者を経験。2019年6月にAIベンチャーへ転職し、深層学習を組み込んだサービス開発や人材開発に従事した。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/article/detail/14251 2021/04/20 08:00

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