PwCビジネスアシュアランスは、PwC Japan監査法人の専門家が企業の新リース会計基準適用支援で蓄積した知見をもとに構築した「新リース基準スピード導入キット」の提供を3月31日より開始すると発表した。
新リース会計基準の強制適用を1年後に控え、依然として対応に苦慮する企業が多い中、同キットは「システム導入不要」「最短1年以内での対応完了」を掲げて開発されたもの。同日に開催されたメディア向けセミナーでは、PwCビジネスアシュアランスおよびPwC Japan監査法人の担当者が詳細を説明した。
冒頭に登壇したPwCビジネスアシュアランス/PwC Japan監査法人の服部雄介氏は、新基準への対応状況について「期限まで残り1年となった現在でも、支援の相談をいただく件数は非常に多い」と述べ、準備が遅れている企業の存在を示唆する。その背景にある課題として、同氏は「量」と「判断」の2点を挙げる。
1つ目の「量」に関しては、従来のリース契約だけでなく、賃貸借契約など異なる名称の契約に含まれるリース要素を識別する必要があり、検討対象が膨大になる点が指摘された。「判断」については、リース期間の見直しや条件変更など、会計基準が求める細かな処理に際して、実務上の判断をともなう箇所が多いことが企業の不安要素になっているという。これに対し、多くの企業がシステム検討を進めているが、導入コストやランニングコスト、さらにはベンダーのキャパシティ不足といった「リースシステム難民」とも呼べる課題に直面しているのが実情であると同氏は説明する。
同キットは、PwC Japan監査法人の専門家が新リース基準適用支援を通して蓄積した成果物や知見を標準化し、従来のアドバイザリーサービスに比べてコストを抑えた形で、一式のキットとして提供するもの。このキットを活用することで、3月決算の会社においても、以下のとおり1年以内で対応準備が可能になるとしている。
- 新リース基準を理解しよう:キックオフ資料
- 形式リース取引を把握しよう:リース管理台帳
- 実質リース取引を洗い出そう:実質リース検討ツール
- 少額リース・短期リースを特定しよう:リース管理台帳
- リース期間を検討しよう:リース期間検討ツール(ここまで6ヵ月以内)
- 割引率を検討しよう:割引率検討ツール
- 影響額を試算しよう:リース管理台帳
- その他論点を検討しよう:新旧基準差異リスト/論点別FAQ/会計方針・経過措置サマリー(ここまで9ヵ月以内)
- 開示案を作成しよう:注記スケルトン/表示・開示チェックリスト
- 業務プロセスを構築しよう:リース仕訳作成ツール/業務記述書・フローチャート
- 適用準備完了(ここまで12ヵ月以内)
同キットの大きな特長は、高額な専用システムを導入せず、Excelなどの使い慣れた表計算ソフトをベースにしたツールで新基準対応を完遂できる点だという。PwC Japan監査法人の吉澤太朗氏は、開発した「リース管理台帳」のデモンストレーションを行いながら、その優位性を強調した。
「システムを導入すると通常半年以上の期間を要するが、この台帳を用いることでその期間を大幅に短縮できる」と同氏。この台帳は情報入力から仕訳、注記作成まで自動連携する設計となっており、適用後のリース料改定や中途解約、さらには「減損」といった契約変更のイベントにも対応できるよう作り込まれているという。内部取引の消去フラグによる連結修正仕訳の自動作成機能や、外貨取引の換算機能も備えており、システム対応が難しい領域もカバーしているとした。150件程度の契約件数であればパフォーマンスを維持したまま運用が可能であり、IT部門の負担を抑えられる点も特徴だという。
加えて、新基準対応における「判断」の迷いを解消するため、キットには全体像を網羅した「キックオフ資料」や、詳細な「論点別FAQ」が含まれているという。PwC Japan監査法人の鈴木彩乃氏は、「新基準では契約名称に関わらずリースを認識する必要があるが、すべての契約を個別に精査するのは現実的ではない。このキットでは、試算表から実質リースが含まれる可能性がある科目を選定する『取引の抽出ガイダンス』や、具体的なチェックリストを整備しており、関係部門が共通認識をもってプロジェクトを進められるよう配慮している」と述べる。
また、同法人の山本晋氏は、実務で特に迷いやすい論点への対応について「同キットでは、たとえば少額リースの判定をパソコン1台単位で行えるかといった具体的な疑問に対し、現行の公開草案に基づく根拠を示しながら回答している。キットに含まれる『新旧基準差異リスト』は、想定される検討結果をあらかじめデフォルトで記載しており、担当者はパターンを選択し必要な補足をするだけで、監査に耐えうる証跡を残すことが可能だ」と述べた。
同キットがターゲットとするのは、主に中規模程度の契約件数を持つ企業や、リソースに制約のある子会社、そして「残り1年」という期限の課題を抱える企業だという。従来のシステム導入とアドバイザリーを組み合わせた支援では、最低でも5000万円程度の予算が必要とされるケースが多かったが、服部氏は同キットを「数百万円程度の価格帯で提供する」と述べる。「このキットは単なるツールの提供にとどまらず、企業が自走して基準適用を完遂するための道筋を示すもの。社会全体での円滑な会計基準変更に貢献していきたい」として、セミナーを締めくくった。
この記事は参考になりましたか?
- 関連リンク
- この記事の著者
-
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
