サイバーセキュリティ専門家資格の非営利会員制組織であるISC2は、サイバーセキュリティ業界で働く女性に焦点を当てた調査レポート「Women in Cybersecurity」を発表した。
同調査は、ISC2のグローバルサイバーセキュリティ人材調査「ISC2 Cybersecurity Workforce Study」の2023年度版に参加した、女性のサイバーセキュリティ実務者2,400名(全調査対象者14,865名のうち約17%)から回答を集めたものだという。
調査では、サイバーセキュリティチームに占める女性の割合は平均23%となっており、世界全体で400万人にのぼるサイバーセキュリティ人材の需給ギャップを解消するためには、より多様な人材を惹きつけ、人材確保することが不可欠だとしている。
サイバーセキュリティの専門職において、「30歳未満」の回答者のうち26%が女性だった一方で、「65歳以上」の回答者のうち女性はわずか13%と、若手人材における多様性の増加が見て取れたという。
サイバーセキュリティ専門の調査会社Cybersecurity Venturesによる調査では、2025年までに世界のサイバーセキュリティ人材の30%を女性が占めるようになり、2031年までに35%に増加すると予測している。
ISC2実施の調査によると、セキュリティチームにおける多様性の重要性を認識している女性の割合(76%)は、男性(63%)よりも高く、78%の女性が、チームの成功にはインクルーシブな環境が不可欠だと感じていることが明らかに。しかし、サイバーセキュリティ業界の労働力に関する調査の回答者のうち11%は、自身のセキュリティチームに女性がいないと回答しているという。また、男性回答者の21%が自身のセキュリティチームに占める女性の割合を把握していなかったのに対し、同様の回答をした女性は13%であったとしている。
調査結果の詳細
サイバーセキュリティ業界における女性進出の進展が見られる一方で、同調査によってジェンダーリプリゼンテーションの支援、DEI活動の提唱、会社内差別や賃金の不平等の解消など、まだ達成すべき課題があることが浮き彫りになったとISC2は述べている。その他の調査結果は、以下のとおり。
- クラウドサービス、自動車、建設業界ではセキュリティチームに占める女性の割合が最も高く(28%)、軍事と公益事業は最も低い(20%)業界だった
- 女性の平均給与は10万9,609ドルであるのに対し、男性は11万5,003ドルと、およそ5,400ドルの差がある
- 米国でのサイバーセキュリティ専門家の平均給与は高いが、以下の格差が存在する
- 36%の女性の回答者が、職場では自分らしくいられないと感じているのに対し、男性は29%だった
- 職場でありのままの自分でいられないと感じると回答した女性は南アジア系(48%)で最も多く、時点は黒人・アフリカ系(43%)、ヒスパニック系・ラテン系(42%)だった
- 29%の女性が職場で差別を感じていると答えたのに対し、男性は19%だった
- カナダ/英国/アイルランドの黒人またはアフリカ系の女性は最も差別を認識しており、53%が不公平な扱いを受けていると感じている
- 女性回答者の69%が、今後5年間、DEIがセキュリティチームにとってより重要になると回答した(男性回答者は55%)
- 66%の女性が、多様性がセキュリティチームの成功に貢献していると答え、78%の女性が、包括的な環境がチームの成功に不可欠であると考えている
- 自組織では他部署からの人材を調達し、ジョブローテーションの実施、サイバー経験のない人材を採用していると回答した割合は女性の方が高く、そうした取り組みが功を奏し、自組織でサイバーセキュリティ人材が不足していると回答した女性の割合は男性よりも低かった(62%対68%)
- 最初にサイバーセキュリティ職を目指したきっかけについて学校を挙げた女性の割合(14%)は、男性(10%)よりも高かった
- 進化し続ける分野で働きたい(21%)、人々や社会の役に立てる分野で働きたい(16%)と回答した女性の割合は男性(それぞれ18%、14%)よりも高かった
調査方法
ISC2がForrester Researchと共同で2023年4月から5月にかけて実施し、北米、ヨーロッパ、アジア、ラテンアメリカ、中東、アフリカに居住している14,865人のサイバーセキュリティ実務者から収集したオンライン調査のデータを基にしており、そのうち2,400名の女性の回答者が含まれる。
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