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      IT部門から“組織変革”を~気鋭のトップランナーを訪ねる~

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『EnterpriseZine Press』

2025年夏号(EnterpriseZine Press 2025 Summer)特集「“老舗”の中小企業がDX推進できたワケ──有識者・実践者から学ぶトップリーダーの覚悟」

IT部門から“組織変革”を~気鋭のトップランナーを訪ねる~

村田製作所が挑む「自律分散型DX」の現在地──80年の歴史に新たな基盤を築くDXリーダーの覚悟

大規模フルスクラッチ基幹システムを大転換へ、人材育成と基盤整備の両輪で進める変革


開発に17年かけた基幹システムを刷新した理由とは

 DXを進めるための土台作りとして、同社はIT基盤の整備も進めている。「まさに今、グローバル統一基幹システムの刷新プロジェクトが進行しています」と須知氏。同社は2005年から2022年までの17年をかけて、サプライチェーンシステムをフルスクラッチで開発し、グローバル100社近い関係会社に展開してきた。2010年頃までに国内システムを安定化させ、2011年から2012年にかけて海外展開を本格化した大規模プロジェクトの完了と同時に、その先を見据えた次世代システムの企画が始動していたという。

 同氏は、システム刷新の背景について「生産販売管理システムのグローバル統合は実現できていましたが、調達・生産・販売と業務部門が分かれている中でビジネス環境変化に随時対応してきた結果、システムが肥大化・複雑化していました。今後、全社規模でのDXやデータ活用を視野に入れたときに、やっぱりつなげるものはつなげていきたい。そのためには“全社最適”でシステムを考えて設計していく必要があると考えました」と話す。

 従来システムの課題は、業務部門主導でシステム選択が行われてきた歴史的経緯にある。「同社では代々、業務部門が主体となってその時に最適だと判断した基盤を導入してきましたが、今後全社規模でのDXやデータ活用を視野に入れたときに、やっぱりつなげるものはつなげていきたい。そのためには全社最適でシステムを考えて設計していく必要があると考えました」と経緯を述べる。

 こうして構築された新たなシステムアーキテクチャの一部は、同社が目指す「自律分散型経営」を技術的に支える設計思想に基づいている。須知氏は「自律性・全体性・進歩性」という3つのキーワードでこの設計思想を説明した。「自律性の観点から見たとき、“現場が使いやすいデータ基盤”が一つのキーワードになります。各所のデータを必要なときにすぐ使えるデータ間連携が非常に重要です」と述べる。

 全体性に関しては、基幹システムのフレキシビリティと持続可能性が重要なカギとなる。進歩性については、AIなどの新しいテクノロジーを継続的に導入できる基盤作りを目指しているという。

 須知氏は「実は、組織運営の考え方とITとしてのアーキテクチャの考え方は一緒です」と強調する。個人が自律して動く組織に変わるためには、各部門が連携しやすい体制が望まれる。したがって、システム面でも柔軟な連携が求められるというわけだ。これらを実現するための技術面に関しては、疎結合化による機能分解有機的な連携により、フレキシビリティと全体効率性の向上を図る方針だという。

 現在、システム刷新は機能別に分けられ段階的に進められており、事業現場で比較的価値を出しやすい生産計画やサプライチェーン管理などを担う計画系システムは、現在の中期経営計画期間内での完成を目指している。一方、海外関係会社を含む本格的な基幹システム刷新は2030年のビジョン達成時期を一つの着地点としている。

株式会社村田製作所 執行役員 コーポレート本部 情報システム統括部 統括部長 須知史行氏
(肩書は取材時点のもの。現在は経営DX本部長を担う)

7,000人超が挙手参加──全社規模のDX人材育成の成果

 システム基盤の整備と並行して、村田製作所が注力するのがDX人材の育成だ。その目的について須知氏は「DX人材の育成は、村田製作所が持続的な競争優位を確立し、価値を創出し続けるための最重要テーマの一つ。全社規模でデジタル技術やデータを活用し、自律的に業務やビジネスを変革できる人材が不可欠です」と話す。

 また「DXを進めるためには、ITを使える人と業務をデザインできる人の両面が必要」と指摘。そのため、“自律性・全体性・進歩性”をキーワードに、部門や職種、拠点を問わず、誰もがデジタル技術を武器に課題解決にチャレンジできる組織風土を目指した教育プログラムを展開している。プログラムはベースライン、ミドルライン、ハイラインの3段階に分かれ、ミドルレベルの修了者は既に200~300人に達していると話す。

 こうしたDX研修はIT部門が主体となって実施している。その一つが、生成AIを日々の業務で活用する基礎的なスキルを習得するための「AIレディネス研修」だ。パートナーであるライフイズテックと協力して2024年度下期から本格展開を行い、既に社内で7,000人以上が自主的に受講しているという。須知氏が「間接部門の従業員の3分の1程度が参加済みです」と話すように、現場レベルでも変革への意欲が高いことがうかがえる。加えて、業務改善からデジタルツールについて従業員一人ひとりの成長意欲に応えるための教育プラットフォーム「MDX道場」も、IT部門主導で社員に展開している。

 その他にも、「Udemy」などの外部eラーニングプラットフォームと自社企画コンテンツを組み合わせて独自のプログラムを展開。特にドメイン特化型の教育プログラムでは、実際の組織課題解決を組み込んだPBL(Project Based Learning)形式を採用していると須知氏。「ドメイン特化型プログラムの場合は、実際に自分が所属する組織で本当に課題になっていることを解決できるような立て付けを作らないと、結局単発の研修で終わってしまいます」と実践的アプローチの重要性を強調する。

 このような教育プログラムを通して、将来的には製造業の伝統的な人材育成制度との連携も視野に入れているという。

 「当社はものづくりの現場を重視しているので、『現場改善士』といった社内資格を設けています。今後は、そこにデータやデジタルの要素が今以上に入ってくるので、同じような形で現場でもデジタル変革できる人を作っていきたいです」(須知氏)

次のページ
「製造業にこそ日本の勝ち筋がある」国全体の生産性向上に使命感

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

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